はあ、ただいま
こんなに酔ったのいつぶりかな

ひどく酔うとなんだか色々なことがどうでもよく思えて
甘えたくなったり身を任せたくなったりするのは病的なことなのかしら
それでも自制出来るようになったのは歳のせいかしら

髪を撫でられたり肌に触れられたり触れたり、
普段は全然そういう気持ちにならないのに
酔うと預けたくなって
だけどその後にある後悔を知ってるからしないけれど
だけどこんな夜は寂しい
だからといって誰でも良いわけじゃないし
それにもう帰って来たし
そのうち一人で眠りに就くのだろうけれど
ああだこうだと考えず会いに行けたらどんなに良いだろう
酔うと駄目だな
欲求が強くなってしまう

本当はたくさん話したい
でもその時間を奪ってしまうことは申し訳ない
出来ることなら触りたい
抱きしめたい
抱きしめて欲しい
そばにいたい
一緒に眠りたい
こんな感情に駆られるのは何年ぶりだろう
声を聴きたい、触りたい
認められず赦されない、承認されないというのは苦しい
どうして私は私を肯定しないのだろう
私に優しくしてくれる私がいたら良いのに
この、正しい理想像になりたいと思うのは自分で
その理想像を要求してきてそれになれない事を責めるのも自分で
それを客観視している自分もいて
どうして自分がこんなにいるのだろうと思う
どれも私で、どの私も葛藤に苦しむ私を赦さない
私はいつも私を認めない
自分の在り方が解らないというのは、とてつもなく苦しいと気付いた時があった
もう一体、何をどうしたら良いのか、自分はどう在れば良いのか、
何を基準にどんな事をして、何を以て自分をよしとすれば良いのか、
自分の感情は、感覚は、思考は正しいのか、どうあれば赦されるのか、
ひたすら自問自答を続けて、そのうち自己否定や自己批判ばかりを繰り返すようになって
そんなにも自身が曖昧だというのに、それなのにそんな曖昧な自分をただひたすらに徹底的に責め続けるもう1人の自分がいて
その責め続けてくる自分はいつも完璧な『正しさ』を要求してくる
私はそれが自分の在るべき姿なのだと、それに沿うよう努力をする
けれどその正しさには到底追い付けなくて、そうするとまたその自分が責めてくる
私は正しい自分という理想像になることが出来ず、そんな自分に失望して自分を許せないと思う
自分はなんて駄目な人間で愚かなのだろうと思う
私がその自分から認められて赦される為には、私は完璧に正しくなければならなくて、でもそれが出来なくて
たとえば何かをがんばってやれたとしても、その他がちゃんと出来ていなければ責められてしまう
出来た事は出来ない事にかき消される
これが出来たから良いんじゃないかというのは甘い考えで、出来ない事ばかりを責め続ける
私はこんな歳になっても未だに自分という私になれないし、赦してもらえない
結局のところ、ひとことで言ってしまえば
自我が確立されていない、ということなのだろう
自分が曖昧だから他人との線引きも曖昧になる
他人に自分を投影して、その他人を通して欲求を満たそうとしたり
支配される事で自分の与えられた立場や役割を認識してそこにアイデンティティとかいうものを見出したり

立場や役割というものがあればそれに合わせるようにして生きればいい
相手が望む、求める私というのは、私に与えられた私の在り方でもある
その在り方に沿って生きていく
こうしてあらためて考えると脆いものだ
私の在り方を与えられなければ、私はどう在れば良いのか解らないのだから
私が求めているのは共有ではなく融合なのかもしれない
自身に他人が踏み入る事は侵されるということでありそれは悪い事のように本には書いてある
それによって引き起こされる様々な事態についても書いてある
きっとその通りなのだろうと思う
でも知識としてそれを知っていても、私は感じ方や感覚を自分の意思で変えられないしどうしたら良いのか解らない
理性というものはあるし、それらしく振る舞う事は一応なんとか出来るけれど
それだと私はずっと満たされないままで、虚しさばかりが募ってしまう
自分は自分であり相手は相手であって
二人は互いに違う存在であり他人
個人と個人はそれぞれ別の人間でそれぞれに人格がある

それぞれが一個人として確立されていて
互いにあるものを差し出したり分け合ったりしてそれを共有する、というのが健全な関係性なのかなと思ったりする

でも私はそれでは多分満たされない
はじめのうちは良くてもそのうち寂しさのようなものを感じるようになる
一個人としての枠組みがあって、それはきっとずっと維持していく、維持されるべきものなのだろうけれど
私はそういった当たり前の事を、まるで線引きされているかのように感じてしまう
なんて言えば良いのかな、なんとなく疎外感のようなものを感じる

輪郭がぼやけて曖昧になって流れ出して混ざり始める事で満たされていく
そうなってはじめて共有出来ている感覚になれる
テーブルの上に互いの何かを出し合ってそこで並べたり眺めたり混ぜたりしても、私はきっとどこか寂しいままだと思う