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過去ログ239 2016/11/11 0:47

▼無名さん
続きです。連携プレイ。
11/11(金)0:47

▼無名さん

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 そのころ、【銀の牡鹿亭】では――

 第二位階が酒場から連れ出され、我に返った聖騎士たちは、互いに顔を見合わせ驚きを口にしていた。

 「……衝撃的なモノを見てしまったな。ピエール様があのようなお召し物で給仕をされるとは……。夢に出てきてうなされそうだ」

 額に浮かんだ冷や汗を拭いつつ、聖騎士のひとりが仲間に話しかける。

 「まったくだ。いったいどうされたのだろうな、ピエール様は」

 「まさかご乱心されたのではあるまいな。最近、お忙しかったようだし、ありえぬことでもないと思うが……」

 周りの聖騎士たちの会話を聞くともなしに聞きながら、ライシュルトはテーブルの上に複雑な魔方陣を描いていく。

 グラスに付着した水滴をインク代わりに、人差し指で図形や記号を描き加える。

 何をやっているのか、とクラウドに訊かれても、ライシュルトは苦笑しただけであった。セディアから命じられたとおり、事は秘密裏に行わなければならない。

 ちょうど魔方陣ができあがったころ、セディアが酒場に姿を現した。

 「お帰りなさい、団長。ご命令の件ですが、これでよろしいでしょうか?」

 テーブルに描いた魔方陣を指差し、ライシュルトは自信がなさそうに尋ねる。

 セディアに指示された魔方陣は、難易度が高すぎた。何しろ以前、古い文献をパラパラめくっていたときに、たまたま見かけただけなのである。当然記憶は不確かで、正しく描けているのかどうか心許なかった。

 魔方陣を一瞥し、セディアはコツン、とライシュルトの額を小突いた。

 「少し足りぬな。これでは発動しない」

 セディアはそう言い、ライシュルトの魔方陣にふたつばかり記号を描き足した。

 落ち込むライシュルトの頭をくしゃりとなでて、セディアは腰の剣帯から短剣を抜き取った。

 鞘を払い、親指の腹に刃先を滑らせる。流れ出る血を注ぐと、魔方陣は歓喜に震えた。

 「ウケケケ……」という不気味な笑い声に続き、「いい男じゃのう」などと聴こえてきたが、気のせいだと思うことにする。

 みずからの血を媒介に、セディアは小さく呪文を唱える。

 『【忘却】(オブリーウィオー)!』

 魔術が発動し、魔方陣から乳白色の靄が立ちのぼった。魔法で創り出された靄は、ゆっくりと酒場全体に広がっていく。

(続く)
11/11(金)0:46

▼ぱんだまん
無名様
団長……相手が悪かったというか何と言うかwwwご愁傷様です(笑)

髭の反撃が恐ろしすぐる((((;゚Д゚)))))))まあ相手が団長だからこそあのノリなのかもしれませんね( ^ω^ )

さて団長のお手並み拝見ですね☆
11/10(木)14:02

▼無名さん
続きです。団長……
11/10(木)0:44

▼無名さん

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 「たしかにあの衣装を届けさせはしましたが……。まさか本当に着用されるとは……」

 心底あきれ返っているらしく、セディアの視線が痛い。

 「まったく、あなたという方は……」

 巷で流行しているという「猫耳ミニスカメイド」なる衣装を届けさせはしたが、セディアのもくろみでは嫌がらせはそこまでだった。フリルたっぷりのメイド服を着て、部下の前に姿を現す聖職者がどこの世界にいるのだろうと思うと、胃がきりきりと痛んだ。

 胃のあたりをさすりつつ、セディアがピエールの猫耳に手を伸ばす。

 「音に反応して動いているようですが……。これはどういう仕組みになっているのです?」

 猫耳をぐいぐいと引っ張り、セディアが興味深そうに訊ねる。

 「いたた……、セディア、痛いですってば」

 「おっと、頭に密着してますな。無理に取ろうとすれば、頭皮がはがれそうですが……。いったいどうされたのです?」

 「実はですねぇ、自在に動かせるようにしようかと思いまして、猫耳と尻尾にほんの少々魔力を注いでみたのですよ。そうしたら、なぜか頭皮にはりついて取れなくなっちゃいました。ちなみに、尻尾も取れません。魔法、失敗しちゃいましたかねぇ。困りましたねぇ」

 他人事のようにのんびりと説明するピエールに、セディアがガックリと肩を落とした。ツッコミどころが満載すぎて、どこをどう指摘したらいいのかわからない。

 「とりあえず、明日の八カ国連合評議会を切り抜けなくてはなりませんが……」

 賢明にも、差し迫った問題を口にするセディアに、ピエールは危機感のかけらもなく応じる。

 「この際、猫耳と尻尾がついた状態で出席してみてはどうでしょう? 皆さん、気持ちがなごんで、難しい案件がすんなり解決するかもしれませんよ」

 「本気でそうお考えですか? むしろ、小馬鹿にしているのか、と参加国の怒りを買って戦争が勃発しかねません。それ以前に、教会の権威が地に堕ちます」

 脱力感に座席からずり落ちそうになりながら、セディアが反論する。だいぶ前から頭痛がしていた。おまけに胃もきりきりと痛み出している。原因は考えるまでもない。

 明日までに猫耳をどうにかするように言い聞かせ、ピエールを私邸に送り届けると、セディアは酒場に戻った。第二位階がやらかしたことの後始末をしなければならなかったのである。
11/10(木)0:44

240238

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