1 エルヴィン・スミス

恋文

君に宛てる恋文を

送る、と約束していたからな。
直接送っては君が返事に気を遣うから、此処で。
見て貰えるかどうかは判らないが、他の誰かと間違えられても困る。
鍵は判りやすく「ストーカー」と「アイアンクロー」にしておこうか。


私のリヴァイへ

何から話せば良いだろう。
私のお粗末な語彙力では、想いの丈を綴った愛の言葉も極めて気障で陳腐な文字の羅列へと成り下がる。だから、敢えて飾らない。想うままを綴りたい。


君の好きな所。
淡々として無表情で仏頂面を貫き通している割に、素直で真っ直ぐで思い遣りがあって人一倍気が利いて優しくて妙に打たれ強くて、意外に紳士な所。
…君の名誉の為に、特殊な性癖について此処で言及するのは避けようか。そういう所も好きなのだが。

何時も言っている事だ。
私は君の事が可愛くて可愛くて仕方が無い。
君の紡ぐ言葉のひとつひとつが愛おしく。
君の見せる仕草のひとつひとつに心を奪われる。

元々、長続きしない縁だと思っていた。
全く経験の無い抱かれる側への立候補は無謀とも思えたが、どうせ直ぐに打ち切られるだろうと高を括っていたからこそ。

私を此処まで導いてくれたのは他ならぬ君だ。不慣れで覚束無い私を支え、優しく包んでくれた。相手が君でなければとっくにこの関係は終わっている。

君に出逢えて良かった。君を想って過ごす時間が、毎日が、とても幸せだ。
誰よりも可愛い私のリヴァイ。
「好きだ」と「愛してる」、そして此処には書ききれない…この世に現存するありとあらゆる愛の言葉総てを君に捧げよう。

職権濫用だと罵られても構わない。
これは命令だ。

決して私の傍を離れるな


エルヴィン・スミス
2 リヴァイ
お前と会えない時間を潰そうと思って寄ってみれば、こんな所に手紙残しやがって。
しかも分かりやすい鍵だ、俺達ぐらいしか当てはまねぇから勘違いもなくて済みそうだな。

お前に恋文とやらを貰って、そのまま見逃す訳ねぇだろう。気を使ってるつもりはねぇよ、まぁ以前にも言ったが、上手いことは書けねぇから先に言っとくぞ。


エルヴィン、

お前は俺を買い被り過ぎだ。
そう見えてんなら、お前が余程優しいんだろう。

お前はいつも少し(強調)行きすぎる俺の愛情表現を受け止めてくれたり、時には厳しくコブラツイストで諌めてくれる。…お前と話すのは本当に楽しくて仕方ない。
好きな所を…、羅列するとまたお前に手刀をくらいそうだから控えるが、次の機会に改めて言う。

「かわいい」っつう、俺にはおおよそ似合わねぇ言葉をよく使うよな。最初は言われ慣れねぇで抵抗もあっが、今ではお前にそう言われんのも悪くねぇと思ってる。その分、俺も可愛がらせては貰うが。
こんな気持ちになんのはお前が初めてだ。
テメェはこの縁を長くないと思っていたらしいが、俺は初見からお前を深く知りたいと思っていた。第一印象から決めてましたって奴だ。
俺の少ない語彙力じゃあ到底現し切れねぇが、お前には心臓を捧げる前に、心を奪われた。

責任取れよ、団長。
その命令、撤回は許さねぇからな。
3 エルヴィン・スミス
やあリヴァイ、可愛らしい返事を有り難う。
君に教えて貰えるまで気付かなかったのが悔しいよ。数日無駄にしてしまったな。
何を言っても気障だと言われてしまうから、今回の返事は気障にならないよう気を付けたつもりだ。
どうかな。


私は優しくないし君を買い被っているつもりも無い。
君は私が今まで恋人に求めても得られなかったもの全てを最初から持っていたのだ。好きになるのも当然だろう。
それに君と居ればプロレス技のレパートリーが増える。感謝しなければな。

然し初見から見初めてくれていたとは驚きだ。そもそも私は属性詐欺に近い訳だし……、ああ、属性詐欺で思い出したが、私は君と過ごす時にしばしば自分が抱かれる側だという事を忘れる。
今回、君が私の誕生日祝いに言う事を聞くと言ってくれただろう。あの時も私が何時間もかけて考えていたのは、完全に自分が抱く側視点での願い事だった。
申し訳なくて流石に言えなかったが……デートを提案したのは、考え抜いた願い事が全て使えない事に気付いたからだよ。返す返すも申し訳ない。
…が、デートにして良かったと思っている。君とプライベートを過ごす楽しさを知った。
プレゼントも有り難う。一緒に取りに行くのが楽しみだな。
誕生日は現在進行形だが、共に過ごす事が出来て本当に幸せだ。君と共に過ごせる時間が何よりのプレゼントだと実感してるよ。
君の誕生日には私が言う事を聞くから、何をして欲しいか考えておいてくれ。


君の声に毎日癒やされている。とても幸せで充実した毎日だ。……が、話しても話しても物足りない。もっと君と過ごす時間が欲しい。もっと君と触れ合って、力一杯抱き締めて、数え切れない程のキスを贈りたい。

命令の撤回など誰がするものか。今の地位は時に疎ましくもあるが…この立場で君を繋ぎ止めておけるなら、それだけで充分過ぎる程の価値がある。
無論、責任は取る。
君はただ私だけを見ていればいい。


…何だか取り留めの無い内容になってしまったな。だが、君への言葉を綴る時間もまた幸せだ。

私の可愛いリヴァイ、今日も愛してるよ。
4 リヴァイ
…随分間を開けちまった。

返事を可愛らしくしたつもりはないが……どうやら団長様の目はイカれちまったらしい。
プロレス技のレパートリーは増やさんでいい。度重なる上司からの暴力で人類最強が巨人も全滅させず逝っちまったら笑えねぇだろうが。まさか2回も目潰し来るとは思わなかったぞ。その後のフォローで完全に蘇ったが。…テメェは本当に飴と鞭の使い方が上手い。

お前が求めてたものを持ってたっつうのは初耳だ。そりゃあ完全に偶然だが、俺は運が良かったな。
属性は最初まるで気付かなかったが。…まぁ好きになればそんなもん関係ねぇんだと、お前に気付かされたな。そんな小せぇ事でお前を手放す気は更々ねぇ。
しかしそうまでお前が俺を抱かれる側として見てたとはな。お前の趣味は相当変わっているらしい。自覚はあるか。
デートに関してはいい選択だった。お前と任務以外で外を出歩くのも悪くねぇ。まぁ次は外で飯を食ってみてぇとこだが。

……そういえば、お前とは出会ってもうすぐ2ヶ月だな。もっと多く話している気がしたんだが。それだけお前との時間が濃かったのかもしれねぇ。
半年記念には俺のウィットに富んだジョークを披露してやる。

…冗談だ。


お前と会える時間が毎日待ち遠しい。

あいし…っつう言葉は二人の時にする。待ってろ。
5 エルヴィン・スミス
私も随分久し振りになってしまったな。
こういう場所に綴る時は、普段話しているのとはまた違った内容をと思うのだが…結局の所、何処へ綴ろうが君への想いは変わらない。似たり寄ったりの内容になってしまう事を始めに詫びておこう。


自分で気付いていないだけで、君は何時も可愛らしいよ。
可愛いと口にするのを禁止された時、私がどれだけ辛い思いをしたか…。今は解禁されたから好きなだけ言わせて貰っているが、あの時の事を思い出すと、可愛いと口に出来る有り難さを身に沁みて感じてしまう。可愛いと言わせてくれて有り難う。
…ああ、誤解の無いように言っておかなければならないが、無論君は可愛らしいだけの男ではない。それは私が一番よく知っている。
君は可愛らしいかと思えば不意のタイミングで格好良くなる。あれは本当に狡い。かと思えば私に仕置きをされるような事も平気でやらかすからな。君の見せる色んな側面に振り回されっ放しの毎日だ。…まぁ、それがまた楽しいんだが。

私の理想に関しては先日話した通りだよ。君はただ君のままで居てくれれば、それがそのまま私の理想なんだ。
好きになれば属性など関係ないと、私も本当にそう思う。こんな風に思える程、好きになれる相手と出会えた幸運に感謝したい。

そしてこんなにも愛し、こんなにも充実した毎日を過ごしているのに、まだたったの2ヶ月少々しか経っていない事に驚いた。確かに君との毎日は濃厚過ぎる程に濃厚だ。
真面目な話もふざけた話も…睦言も。君はどんな事にでも対応してくれるから、話題が尽きない。
君は許容範囲がとても広いだろう。私もかなり広い方だと自負しているが、私の場合プライドが邪魔して出来ないような事でも、君は容易く乗り越える。そういう君の男らしさが、我々の会話の幅を広げてくれるんだ。
本当に有り難う。


半年記念のウィットに富んだジョークは、私にこっそり耳打ちしてくれ。間違っても余所で披露したりしないようにな。いや、別に君が滑ると思っている訳ではないが…君のジョークは私が一人占めしたいんだ。くどいようだが、君のジョークが滑るなどとは微塵も思ってないよ。いい子だからジョークは二人きりの時に。な?


何だかんだでまた長くなってしまったな。私の悪い癖だ。
それではまた。
今日も変わらず愛してるよ。
6 リヴァイ
本当は流れちまう板の方に書いておこうかと思った事をここに。それぐらいに情けねぇ話だ。
長くなっちまうから、返事として書く事にした。
直接も言いづらいんでな。

お前はいつか、俺には必死さが見られない、と言っていた。あの時も弁解はしたと思うが、そんな事はない。表に出ねぇだけだ。
プライドが邪魔して出来ない事がお前にはあるらしいが、そんな物俺にだってある。
お前にとって恥らしい事は、俺にとっては容易いんだ。お前を俺のとこに留めておく為の手段だからな。

ただ俺は自分の執着心をお前に見せることが出来ない。できる限り格好つけたいと思っちまう(格好つけられてるかどうかは別だ)。それを見せてお前が引くのが怖いからだ。

本当のところ、俺のお前に対する執着と依存は酷いもんだ。お前を繋ぎ止めておく為に寛容な振りだってする。
愛だの恋だのじゃねぇ。お前を手放せない。
いつかきっと、俺の方が先に飽きられるかもしれない。その時にお前を想ってさっぱりと別れる事は理想だが、それも難しいだろう。

…語彙が少ないせいで表現できねぇ。これ程悔しいことはねぇな。
俺はお前の声が聞けないだけで何も手につかねぇんだ。
気色悪ぃだろう。
自分でもそう思う。
これじゃただの変態ストーカーの方がまだマシだ。

見るからに纏まりのねぇ駄文だが、これがお前への「恋文」だ。
一切ふざけてねぇ、な。

無理なようなら消してくれ。
パスワードは俺たちが始まった日だ。
7 エルヴィン・スミス
やあ、リヴァイ。

流れてしまう板に書くのは余り勧められないな。数多の言葉、同じ顔の人間が溢れている場で君を見付けるのは困難だし、流れてしまえば君の言葉に触れられないままだ。
私は誤解を受けると困るという理由で、そういう板に君への想いを綴る事はしていない。君への想いは直接告げるか此処に綴るかしている。
だからと言って君に同じ事を強要するのは端から見れば横暴かもしれないが……そもそも君は私のものだろう?
君の私への言葉は総て私に捧げられるべきであり、君にはその義務がある。反論は認めん。言い辛かろうが関係ない。


…さて。
先日色々と話をしたが、君の気持ちは私にとって幸せなものばかりだ。私はどうも感情表現が乏しいから、それをもっと判りやすくして行くのが今後の課題だな。君は何も変えなくていいと言ってくれるが、矢張り必要に応じて変えられる部分は変えて行くべきだ。…プライドだけはどうしようもないかもしれないが。

…それからひとつ誤解があるようだから補足を。
私にとって「倦怠期」=「別れる」ではない。
飽きる事は別れる理由にはならない、飽きるのも通過儀礼として意識した上で、有事の際はそれを乗り越えて行く、というつもりで居る。
私にとって許せないのは前にも言った、あれだけだ。

…いや、「飽きる」等と堂々と言っては余計に誤解を受けそうだが…残念ながら私は若くないしロマンチストでもない。君に甘い夢を囁いてやる事は出来ない。
重要なのは君と長く共に居るにはどうすればいいか…それだけだ。
長く付き合って居れば飽きが来る事もある。無論そうならない為の努力は惜しまないが、飽きへの覚悟はしておく。そうすれば、今のように毎日会えなくなっても「倦怠期だから仕方がない」と割り切る事が出来るだろう。

私はね、リヴァイ。本当はとても臆病なんだ。傷付くのを恐れて、幾重にも策を弄してしまう。
情けないだろう?
こんな話をすれば君に軽蔑されるかもしれないが、余裕に見えても私は私で必死なのだという事も覚えておいてくれ。


…また長くなってしまったな。
今回はこの辺にしておこう。

今日も愛してるよ、私のリヴァイ。
8 エルヴィン・スミス
何もかも消してしまえばお前を忘れられるだろうかと日記を消した。
この古い記事も消そうとしたが…お前の言葉が残っているのを思い出した。
読み返してみれば何もかも酷く懐かしく、愛おしい。

本当に色々あったな。
お前と過ごした幸福な日々に想いを馳せ、何時も其処に在った心地好い温もりと優しい香りが二度と戻らない現在に歯噛みする。

好きだった。
愛していた。

言葉にするのは簡単でも、易々と過去のものに出来る程、この想いは小さくない。

まだ好きだ。
まだ愛している。

あの時選択を間違えなければ、まだお前はこの腕の中に居たのだろう。
お前を失い、襲い来る虚無感の中で自らの罪を悔い、お前の立場に立って考える事が出来なかった自分に心底腹が立った。
ああすれば良かった、こうすれば良かった。
どんな時も、正しい選択に気付くのは……そう、大事なものを失ってからだ。
お前は何時も俺に挽回のチャンスをくれていたのにな。もうやり直す事さえ出来ない。そして其処までお前を追い詰めたのは誰でもない、この俺だ。


苦しめて本当にすまなかった。
そして厚かましい願いだが…もう少し……お前を好きでいる事を許して欲しい。

愛してるよ、リヴァイ。
もう手の届かないお前に宛てて。
9 エルヴィン・スミス
お前と別れて幾らか時が流れたが、未だに俺はお前への想いを抱えたままだ。

時折、お前がひょっこり会いに来てくれるんじゃないかと思ったりするんだ。そして何事も無かったかのように、あの日常が戻って来るんじゃないかと……。
…そんな事は有り得ないのにな。
優しいお前に「疲れた」と言わせてしまったのは俺自身で、それが変えようもない現実なんだ。

お前はもう、他に誰か素敵な相手を見付けて幸せに暮らしている事だろう。
だがお前の幸せを祈る反面、お前を幸せに出来る誰かを羨ましく思う。そして未だにお前への愛情を捨て切れない自分を自覚するんだ。

お前を幸せにするのは俺でありたかった。
自分の犯した罪を謝罪して、やり直せるものならやり直したい。
…叶わないと解っていても、願わずには居られないよ。


好きだ、リヴァイ。愛している。
迷惑は掛けないから、もう少しだけ想う事を許してくれ。
10 エルヴィン・スミス
報告を有り難う、
リヴァイ。
元気そうで安心したが…まずはおめでとう。
良かった、本当に良かった。
色んな事に耐えて頑張って来た甲斐があったな。俺としても一番心配していた事だったから、良い報告を聞けて本当に嬉しいよ。

そして久し振りに声を聞かせてくれて有り難う。
もしも、だが…お前がここを見る事があったら、ひとつ頼みたい事がある。
謝罪も含めて、一度直接話させて貰えないだろうか。ここでくどくどと綴るよりは早いから……というのは単なる建前で、必死でお前に会う口実を作っているだけだ。
無論、お前が話したくないと言うならこのまま見ない振りをしてくれればいい。相手にされるかどうか以前に、お前がここを見る保証はないのだから元より博打のつもりだ。
連絡先は変わってないよ。

勝手な事ばかりですまない。
寒い日が続くが、風邪などひかないようにな。