1 ミケ・ザカリアス

親愛なる我が君へ宛てる。

 
君と知り合って、言葉を交わすようになって一ヶ月が経った。
当初の目的とは少々異なった間柄になってしまったが、俺としてはとても心地の良い日々を過ごしている。
日記帳を設けるまで出逢った日を気にもしていなかったんだが、せっかく思い出したんだ。何か記念に残しておきたくて……そんなものは女子供のすることと今までは気に留めたことなど無かったんだが。君が可愛過ぎるのがいけない、とは――一体何度口にしただろうな。

さて、せっかく手紙を認めることにしたんだ、普段言えない告白でも綴っておくとしよう。
俺が君に興味を抱いたのはあの日よりも半月以上前のことだ。俺と君の組み合わせ、そして何より君の文章に惹かれた。
そして意を決したのが、一ヶ月前のあの日。
告知文が下げられていないのはうっかりしているだけかとも思ったが、一縷の望みを託して手紙を送った。
――…君はやはり君らしい。当日中に俺のもとを訪ねて来てくれた。
要項を書き漏らしていた俺の方がなかなかにうっかりしている。君もそう思うだろう?
それにも拘わらず君は優しい笑みと温かな手を差し伸べてくれた。

――恋に落ちるのはほんの一瞬だった。

それから君に嫌われないよう常に不安に付き纏われる日々が始まった。
俺は君に気に入ってもらえているのか。君はとても魅力的だからきっとその気になれば他にいい男をたくさんつかまえられるだろう。不安で不安で仕方が無かった。
今でこそ君からもたくさん言葉をもらえ、安心しきっているが……最初の頃はいつ捨てられてしまうのかと心配で堪らなかった。…今のところ杞憂で済んでいるのが幸いだが。

余り綴り過ぎたら便箋もインクも足りなくなってしまうな。
貴重な品を私事に使ったことを君は咎めるだろうか。それとも、仕方の無いやつだと笑うだろうか。

…しかし、親愛なる我が君。こんな改まった呼び方はなかなかに羞恥を煽るものだと知った。
手紙を綴るのならばと改まってみたはいいが……やはりお前の名はちゃんと呼びたい。

――エルヴィン。
とても愛らしい笑みを浮かべ、包容力があり俺の我儘も笑って受け入れ、抱き締めると優しく抱き締め返してくれるお前がとても愛おしい。

出逢ってくれて有難う。
お前と出逢ってから、それまで灰色だった日々が色づき、とても鮮やかになった。
誰かと共に在ることがこんなにも幸せだとは、お前と出逢うまではついぞ知らなかった。
無骨者のくせに稚拙で、甘えたい盛りの俺だが……これからも宜しく頼む。


そして、最後に一言だけ。


――愛している、エルヴィン。


親愛なる我が君――
愛する我がエルヴィン・スミスへ

お前を最も愛す者と自負する
ミケ・ザカリアスより。

November 15, 2013
First month Anniversary.