1 エレン・イェーガー

アルストロメリアを貴方へ

今日は嘘を吐いても許される日…らしいですね。でもそれが有効なのは午前中までだって、オレより物知りな貴方ならとっくに気がついてると思うけど。だからオレは敢えて、それは嘘なのか本当なのかと迷わないように正午を過ぎた今、こうやって言葉を綴ることにしました。

さて、任務で多忙を極める貴方が一体いつ、これに気がつくのか楽しみです。


親愛なるリヴァイ兵長へ。
貴方だけの、エレン・イェーガーより。

敢えてオレ達にとって何でもない日にこうやって言葉を綴ったのは、単に貴方を驚かせたかったからと、朝方に帰宅して早々オレの純情無垢な心を弄んだことへの仕返しと…それと一番は、ここに言葉を残されたときの喜びを、貴方にも感じて欲しかったからです。この、愛があふれる場所に、貴方への気持ちを残したかったからです。

オレ達が出会って、最初の春が来ますね。
オレ達が出会ってもうすぐで、半年の月日が経とうとしてますね。
途切れそうになった縁も、離れそうになった手も、ちゃんと繋がってオレ達はここにいます。変わらず貴方と言葉を交わし、温もりを感じることができていることに感謝を。流した涙と同じだけ貴方を好きになって、貴方のことを知れたと思う。

これからもきっと、何度でも、離れ離れになる危機を迎えることがあるかもしれない。通じ合わないと涙を流す時があるかもしれない。それでも貴方がそうであるように、オレも貴方を思う気持ちは決して色褪せることなく、薄れることもなく。何度だって、貴方の手を掴んでみせるから。

いつか、兵長が恐れずオレの隣で永遠を信じられるように。
恐怖も抱かず自然と、寄りかかることができるように。
オレはあの時の言葉通り、いい男になってみせるから。これからもとなりで、その成長を見守っててくださいね。兵長。

貴方がいれば、オレの世界は鮮やかに色付く。
どうか貴方も、そうでありますように。
2 リヴァイ
…さて、俺が密やかに返事を認めている事にお前は何時気付くだろうか。
ふとした瞬間此れに気付き、その可愛いツラに笑みを浮かべてくれりゃ上々。気付かねぇなら、少し間を置いた後で其れをネタにからかってやろう。

手紙を読みつつ、とあるイカレた帽子屋が歌っていた唄を思い出した。何でもない日万歳、と、日々の幸福を声高らかに叫ぶ歌だ。
記念日も特別な日も、大切だと思う。
だが、俺達にとっちゃ日常こそが最も大切で掛け替えのねぇモンなんだろう…お前と言葉を交わせる事、触れ合える事、他愛無い会話やじゃれ合いの中に詰まった幸福感を大事にしてぇ。

しかし…いい男になるのは良いが、要らん虫がてめぇに集るんじゃねぇかと、其れが如何にも心配だ。
杞憂だと笑うだろうが、うちのクソガキはクソ可愛いからな…心配にもなる。

誰よりも愛しい、俺だけの可愛いエレン。
幸福な日々を、願わくば…俺も、お前に。