1 ジャン・キルシュタイン

やっぱ

姫立金花にすりゃあよかった。

…お前に会える幸せを噛み締めて今生きてる。
2 エレン・イェーガー
オレ達にはティッシュの花で十分だろ。お前と過ごしてると何気ないものが全部輝いてみえる。たくさんキスした後にまた作ってやるから、オレもお前に会うのが待ち遠しい。
3 ジャン・キルシュタイン
…なんなんだお前本当に…

朝お前が言ってた意味がやっと分かった。
今日、覚えてろ。ほんとに。
4 エレン・イェーガー
「覚えてろ」が、「早く会いたい」って聞こえるのは空耳か?お前の甘ったるい声が聞きたくなる、今すぐ会いに行くからな。
5 ジャン・キルシュタイン
お前の言葉がいちいち王子様で恥ずい。

…今日も覚えてろ。
6 エレン・イェーガー
オレが何か言う前に、わがことのように泣いたり笑ったりしてるって知ってるか?オレが姿を隠そうとしても、お前の深呼吸ひとつでバレてる。お前が自分の魅力に気づかねえなら、オレだけが知っておく。王子様かどうかは…夜、その目で確認しろ!
7 ジャン・キルシュタイン
期待を裏切らず王子だったよ。

セイレーンだろうがなんだろうがそのたくましい想像力で俺と幸せになるように前向きに善処しろ変態王子。
8 エレン・イェーガー
そっか?

違ぇよ、お前とは天に駆け上がりたいときもあれば海の底に溺れたいときもあるんだ。なあ、恋を超越したら何になるんだ…教えてくれジャン…オレのこと好きだろ?人魚姫のくだりはマジで恥ずかしいからヒミツだろ…。
9 ジャン・キルシュタイン
童話のお姫様に例えられた俺に比べたら屁でもねぇだろ。

…俺は、恋も愛もそう変わらないと思ってる。恋をしてても不安で愛してても不安だ。恋をしているときはお前が誰を好きなのか不安で、愛している今はお前が何かで悩んでいないか、それを俺に悟らせまいとしてないか不安だ。
俺は、お前にとって無価値になりたくない。
お前はセイレーンだとか美貌の魔女だとか人魚姫だとかいうが「お前の眼球、いや脳味噌大丈夫か」と正直俺はいつも恥ずかしさに悶えてる。
それと同時に…お前の中の脳内麻薬物質が沈静化したら俺はお前からどう映るんだろうっていう不安を覚える。

俺は恋愛が生み出す脳内麻薬物質も恋に浮かれた女が口走る妄言も好きじゃない。
それらは自己満足のためのものであってお前と長い時間を過ごすために必要なものとは思えない。判断を乱すだけだ。
それで浮かれていて…お前の感情の機微に気づけなかったら、嫌だ。

だから、「エレンで最後だ」なんて絶対言わないつもりだった。
嘘になるのが怖かったんだ。
過去形は正しくないな。現在進行形だ。今も怖い。
お前を失うのは、お前に何かがあった時に気づけないのは、お前に誰かが何かを思っているのに気づけないのは俺は怖いし不安だ。
生涯抱えて生きていくだろう。
でも、生きる上でそれが支障を来たすとは思えねぇんだ。

童話に出てくる王子様とお姫様ってのは一人ずつで、ワンセットが基本だろ?
愛してる、エレン。また海を見に行こう。
スターフルーツ、食わせてくれよ。
10 エレン・イェーガー
おい!オレの恥が晒されちゃってるじゃねーか!!おとぎ話大好きな女々しいやつだと思われる!…お前の心の中だけに留めておいてくれよな。

だけど、そんなところが好きなんだ。オレはお前の肌を通り越してひとつになって溶けちまいてえなんて夢見てるのに、お前は存在の価値をオレに教えた。お前はどんな状況でも誇りを持って生きていく強い人間だった。

オレは不安がほとんどねえ。オレが一度お前から逃げて、ふらっとまた戻ってきた時にお前はあたたかく迎え入れてくれた。謙虚で気さくなお前が秘めてた深さに魅入られたらひとたまりもなかった。

オレが砂浜にでっけーハートを描いたのは、お前と居ると世界のすべてが素晴らしく見えて、特別な意味を持つからだ。名前をつけるなら愛なんだろ。

脳内麻薬物質なんて一瞬のトキメキじゃねえよ、オレたちが生き生きしていられるかは夢見る力にかかってる。

友達になった、そして恋人になった、…恋の形が理解されないと悲しみに暮れていたお前が、同じく人に理解されない…いや、わざと理解を避けていたオレと出会ったすごい奇跡なんだ。お前の心の中にずっと住まわせてほしい、オレはいつでも寝そべってどうやってお前を驚かせて楽しませようか考えてる。

今度は違う景色の海が見えるかもしれない。スターフルーツもただのスターフルーツじゃない。

愛してる、ジャン。
こんな巡り会わせは二度となさそうだ。
だから最後な。

0時に帰らないオレのお姫様へ。
11 ジャン・キルシュタイン
昼寝のせいかはわかんねぇけど、全く眠気が来てくんねぇからお前に置き手紙を。
最悪明日…いや今日は見送れなさそうだからな。
おはよう、それからいってらっしゃい…朝ここ見てなきゃアウトだな。かと言って見ろって言う度胸もねぇ。

俺は簡単に不安になる。
お前が今俺を思っていてくれているのも脳内麻薬物質のおかげで、それが落ち着いたらお前は冷静になって自分に相応しい人を探しにいくと思ってる。
その癖、お前が最後がいい。最後であって欲しいと願ってる。
人間には、超能力なんて素敵なオプションはついちゃいない。察しろ、なんて言われたら俺はお前への理解が出来なくなってしまう。わずかな文面から相手の気持ちを察するなんて不可能だ。だから、俺はお前に嘘を言わねぇ…たまには言うけどな。うん、たまには。

お前が言ってくれる言葉で泣きそうになること、泣くことがままある。
はりせんぼんも、ティッシュの花も…女子高生も、どんどん思い出が増えていく。

何がいいたかったのか分かんなくなってきたな…まぁ、いいか。思い出したら、直接言うから。でもな、お前とだったらどんな形であれ…永遠を信じられる。

愛してる、エレン。
12 エレン・イェーガー
一緒に昼寝したからな、オレも早くに目が覚めた。お前が不安がってることに勘が働いたのかもしれない。

オレは不安を減らすため、小出しにしながら、これからの現実的なプランをお前に伝えてるはずだ。それから今度は婉曲せずに言うな?オレ達は、友達であり、恋人であり、お互いを理解しあえるパートナーであること。漠然とした不安には理由がねえ。お前の不安は理由がある、それは恐怖というんだ。不安な時は傍に寄りそって理由を探そう、恐怖は話し合いで解決しよう。恐怖で心を閉ざしてオレの声が聞こえなくなる前に。

オレがふわっとした言葉で包んでも、それが真意の見えない怪文書なら、意味ねえからな。それから、想像力は夢になったり不安になったりする。不安になった時は、説明したとおりだ、オレにすぐ相談な。不安げなお前はすげー可愛い。お前は気づかないところで超能力を使ってて、超能力がオレ達のやりとりを彩るんだ。どんどん使っていこうぜ、超能力。

想い出がお前を引き留める鉛になれ、なんて言わない。今は純粋に笑顔がみたい。ただ、オレが居なくなったらオレを責めて泣き暮らすのは賛成。オレはひどいやつだから、幸せに、なんて言ってやらねえし、ずっとオレを想っておけよ。生憎、オレはお前を幸せにするから、この話はオレが興奮するおとぎ話以外の何ものでもねえや。

愛してる、オレを信じろ。

それはいいけど、
ジャン!ちゃんと寝ろよ!
おはよう、あ〜行きたくねえっ。
お前といちゃいちゃしてえ。
13 ジャン・キルシュタイン
ここ数日で恋愛脳になりつつある自覚がある。
いい傾向なのか、悪い傾向なのか俺にはわから無い。

お前に与えられる砂糖漬けに更に蜂蜜をぶっかけた様な愛情に満足して踏ん反り返ってやしないか、不安だ。
俺が不安がってピーピーひよこみてぇに五月蝿く喚いて、お前がそれに答えを用意してくれて、俺はそれを当たり前の様に享受する…これで本当にいいのか。
だったら言葉を飲み込んじまえばいいだけの話だが、お前はきっとそれを良しとしない。
不安をぶつける側より不安に応える側の方が消耗す…今、ふと思ったんだが俺のこの不安って馬鹿な女がよく言う「幸せ過ぎて怖いの」って奴だよな。

………。
ナシだ。はい、この話は終了。キルシュタインさん家のジャン君は何も悩んでません。っ…とんだ恋愛脳じゃねぇか俺!ちくしょう、いっそ誰か俺を殴れ!