1 リヴァイ

時々うっかり者な恋人へ

お前は気付かねぇだろうと思うが、こんなのも偶には悪くねぇだろうと思ってペンを取ってみた。

出逢って半年だ。知っていたか?
お前と過ごすようになって、半年、だ。
もう、と思ったりもするが、未だ、とも思う。…不思議だな。
互いの時間はゆっくり進んでると言っても良いんだろうが、それも心地良いんだ、俺は。

時々ガキみてぇに一つの事に夢中になっちまう所も、気障ったらしいサプライズを演出しようとしてくれる所も、器用そうに見えて存外不器用な所も、強引な所も、うっかりな所も…全部、好きだ。
これからも色んなお前を知りてぇし、色んな時間をお前と過ごしてぇと思う。
お前も同じだと、…嬉しいんだが。

何だろうな、畏まって綴ろうとしたら思いの外とっ散らかった文章になっちまった。俺には向かねぇのかも知れん。
だが…これだけは伝えてぇんだ。

…半年、ありがとう。
これからも、宜しく。
2 エルヴィン・スミス
ねぇ、リヴァイ。
これはお前だね?

お前が言うようにこういう所は殆ど全く見ない私だけれど、色々な偶然が重なって、それこそ半年ぶり以上だったのではないかな?ここを覗いたんだ。
そうしたら一枚目にお前が居た。
お前に呼ばれていたのかな、と思っても仕方が無いだろう?

ここまで言って人違いだったら、それこそうっかり者を越えて馬鹿の謗りを免れないだろうが…。
でも、この日付とお前の言葉を見るときっと間違いないと思う。
違ったら笑って欲しい。


もう半年も経つんだね。
お前の言う通り、長くて短い半年だった。共に未来を見据えるのは暖かくて幸福で、そうだな、やはりあっという間だった、と言いたい所かな。
二人で平和な日常を過ごすこと、私の不得手もきめ細かにフォローしてくれること、戦場に無くてはどうも駄目らしい私も愛してくれること、いつでもお前に甘えたくて甘えて欲しくて仕方が無い私を、呆れたり笑ったりしながらも最後は受け入れてくれること。
お前の全てが愛しいよ。

その軍人らしくて凛々しい立ち居振る舞い(でも私には堪らなく可愛く見える。蹴らないように)、細やかで華やかな言葉遣い、全てが私の理想だった。
出逢えた事に感謝している。

愛しているよ。知っているだろう?
この先もお前と共に。
3 リヴァイ
七ヶ月目である今日が終わる前に、さり気なく言葉を残して行こうと思う。

まさか気付かねぇだろう、と思っていたが、先月お前に気付かれた時は本当に驚いた。だが…嬉しいもんでもあるな。
思えば七ヶ月前のあの日、お前が声を掛けてくれたあの時は、こんなにもお前に惚れる事になるとは思わなかった。気負わねぇお前の雰囲気に惹かれてはいたが、…どっぷり嵌っちまう位に惚れちまうとは…な。
エルヴィン、お前の存外心配性な所も、その図体に似合わねぇ小心者な所も…俺は好きだ。
心配する必要なんざ何処にもねぇよ、と…言い聞かせるように書き記しておこう。知ってるだろう?お前のうっかりしてる所も微妙に何かズレている所も、甘えっ子みてぇな所も俺を甘えさせようとする所も…俺は全部、好きだ。
甘えるのが下手でぎこちねぇ俺を、それでも嬉しげに甘やかそうとするお前が…本当に愛おしい。

誕生日にお前が贈ってくれた万年筆と便箋は、…大切に、此処で使おう。
俺のエルヴィンへ、…愛していると、添えて。

追伸。
桜の下の宴を、楽しみにしている。
4 リヴァイ
8ヶ月目、らしい。
気付いたら今日もそろそろ終わりそうだが、最近は少し使い慣れてきたこの万年筆を使って今夜も綴ろうと思う。
またその内不意打ちみてぇに見付けられるんだろうな。…まぁ、それも悪くねぇと思えて来た。微妙に照れ臭ぇのは変わらねぇが。

如何にも俺はお前に甘い、と思う。
多分お前が俺に甘過ぎるから俺も甘くなっちまうんじゃねぇかと思っていたんだが…それは間違ってねぇがそれだけじゃねぇ、と最近思うようになった。俺を甘やかすからつられるんじゃなく、お前だから甘くなっちまうんだろう、俺は。
本当に仕事以外の事はからっきしな癖に、曖昧な見聞だけで実践しようとするような所だとか。しかも根拠は何処にあるって位の自信満々な所だとか。あとは…存外触れ合うのが好きな所だとか。
目が離せねぇ上に心配にもなるし、妙にそんな所が可愛いだとか感じるから、俺はお前に甘いんだろう。
つまり、…お前に惚れてるから、って結論に至る訳だ。

色々考えた末、行き着く結果は変わらねぇらしい。
…愛してる、エルヴィン。
5 エルヴィン・スミス
ああ…、お前のうっかり者の恋人は、たまにはお前を喜ばせたくて、昨日の日付を手帳に書いて忘れないように不意打ちしてやろうと思っていたんだよ。
…それなのに悔しいな。すまない、こういうのを祝う習慣が今まで無かったものだから、なんて言い訳にはならないね。
別に強迫観念に駆られてというわけではないんだ。ただ、お前からの手紙がいつもとても嬉しいから、私もお前に同じ気持ちになって欲しくて。
一日遅れてしまったが、いつもありがとう、リヴァイ。

どうも最近…と言うよりも、今まで任務の事しかお互い考えていなかったから見えていなかったのだろうが、日常での自分の無能さに少々愕然とする。
いい加減呆れられていないかと心配になるくらいだ。
それでも、確かにお前は甘い。二人でいる時以外に見た事の無い顔をこの8ヶ月で沢山見せて貰ったよ。
何度でも言いたくなるが、私は本当に幸せ者だね。

料理や、他の色々な事も今後必ず覚えるから、気長に教えてくれると嬉しいな。
物覚え自体は悪くないつもりなんだ。
来年辺り、お前にフルコースを御馳走するくらいの気持ちで頑張りたいと思う。

いつも、お前の声を聞いて、気配を感じるだけで幸せになるよ。
愛している、リヴァイ。
これからもお前と共に。
6 リヴァイ
9ヶ月目、の…少し遅れた祝いの言葉を。
お前から貰った便箋を使わねぇままなのが何だか落ち着かなくてな、やっぱり遅れても使おうと思ったのが奇しくもうっかり者の恋人が更にうっかりした日、ってやつだ。
勘違いするなよ?お前のそんな所も可愛くて俺は好きなんだ。

この所、益々お前が可愛くて仕方ねぇなと思う。無邪気…って言葉を良い年した男に使うのはどうかとも思うが、そう感じるんだから仕方ねぇよな。
穏やかになった世界がそうさせるのか、喜怒哀楽を隠さねぇ所なんかが好きだと思う。相も変わらず生真面目な所も、勿論だが。

陽射しの強くなる季節に、ウミ、とやらに向かうのは…楽しみで仕方ねぇ。
二人で未開の地を拓いて、新しい世界に行こう。
愛する俺のエルヴィン、お前と過ごして行くこの先が何時も楽しみで仕方ねぇよ。
今日までありがとう、これからも宜しく頼む。
7 エルヴィン・スミス
よし、今日こそ日付けを間違えてはいないな?
お前への一番乗りの手紙を先に置いておきたかった。きっと期待していないだろう、どんな顔をするかな?

とは言え、伝えたい事と言えばただ、リヴァイが愛しいという事だけだ。
お前はどうして、いつも何をしても何処に居ても、そんなに私の心臓を握り潰そうとしてくるんだい?
一挙手一投足が凛々しい。そして多分、私だけには恐ろしく可愛い。好みだ。…愛おしい。

お前が好きなんだ、リヴァイ。
どうして私の前に現れてくれたんだろうか?
この夏をお前と共に楽しみたい。時々(であるなら良いが)間の抜けた男で済まないが、お前を心から愛している。
飽きる事が出来ない。

これからもどうかずっと隣で。
海はもうすぐだよ。
8 リヴァイ
一年という、今日が終わる前に。
お前から貰った便箋に感謝を綴ろうと思う。

エルヴィン、出会ったあの日から一年だ。
月日が経つのは早い、けれどお前と過ごす時間は充実していて満たされて、そしてどんどんお前に惹かれるんだ。
思えば初めて出会った時から、お前は魅力的だったんだ、俺には。
お前と共に過ごしてみたい、一時でも。そう思って共に過ごし始めたら、これからも共に在りたいと思った。
壁の外の広い世界をお前と並んで眺めて、海を見て…新たな行先をお前と感じて行きたいと。
そしてもっと深くお前を知りてぇと思った。うっかりで、最近は妙にガキみてぇに可愛くて、甘やかしたくて仕方ねぇくらいだ。
居心地の良いお前の腕の中で、…お前に愛されてると感じられる幸せを、俺はどうお前に伝えれば良いんだろうな。

エルヴィン。
愛してる。

今日までありがとう、これからも二人で世界を歩いて行こう。