1 エルヴィン・スミス

君のくれる幸せ

間もなく君と出会って半年になろうとしている。

振り返ればよくもまぁこんなに日々を重ねてこれたものだと色々と感慨深い。
それだけの事があった、お互いに何もしなければきっとこの縁は容易く切れていただろう。何もせずに居られなかったのは恐らく自分で思う以上に君を好いていたからだ、私の卑怯とも言える手段にも応えてくれたことに、決断してくれた勇気に今でも感謝している。

日々、君がいる幸せを噛み締める。
頻繁に会えずとも、触れられずとも、君と繋がっていることが嬉しい。
君が恋しくなる夜も、自分はまだこんな気持ちが持てるのだと思えば安心してしまう。

私が未だに人らしい温かみを持っていられるのは君のおかげだ。
君がいなければきっと、今頃何もかも冷えてこの世界からも消えていただろう。
何故、今このタイミングでこんな言葉を残したかと問われればどう答えるのが妥当だろうか。

……、そうだな。
少し頼もしくなった君に惚れ直した記念、とでもしておこう。
今後も大いに期待している、今は子犬でもきっと将来は素晴らしく魅力的な男になるであろう君を今暫く見守らせて欲しい。
愛しているよ、私の可愛い子犬。
愛しい、君へ。
2 エルヴィン・スミス
一生懸命な姿が、好きだ。
たとえそれが少し私にとっての不利益に繋がるとしても。
彼に言ったら怒られてしまうか、それとも拗ねてしまうか…。不安にさせるつもりはない、執着が無いと言うわけでもない。
ただ、私がそういう奇異な人間なんだ。
彼の魅力は何事にも真っ直ぐで一生懸命になる所だと思う、私はそう感じている。
呼び名一つに悩む姿、盲目的なまでの一途さ、最近は献身的にもなって来たようだ。
少しずつ変わっていく彼を見ていると、父親のような心境になる事も少なくない。…と言ったら怒られてしまうか。

こうして変化を感じ取れる程の時間を共に過ごして、愛していると自覚するようにもなった。
愛した人が幸せであればそれ以上のことはない。
彼が幸せだと笑顔で居るならその時私が傍にいるかいないか等、瑣末なことだ。
3 エルヴィン・スミス
季節が一つ二つ進み、寒さが身に染みる時季になってきた。
時間を見付けて手紙を読み返すと自分がどれだけ余裕もなく必死でいたか、取り繕っているつもりだけで気付きもせずに醜態を晒して彼に甘えてばかりいたか、それはもう目を覆いたくなる程で過去の自分を殴りに行きたくて仕方ない。

よく、付き合ってくれていたと思う。
甘えていいのだと言う彼の想いも上部しか見えずにいた、自分がして来た事を省みてみればもう少し素直に彼の言葉を、想いを受け止めていられたのかもしれない。
以前から、不安にさせないように、と何度も言っていた彼は頻繁に愛情を口にしてくれる。
そんな言葉よりも行動で表されたものの方が響く、と返した事もあった。貰った言葉は確かに染み込んで心に安寧を与えてくれていたのに。


…私からすれば、彼の方が余程愛情深く、繊細で、誠実な…誰より魅力的な男に見える。
末永く、傍にいて貰えるように最善を尽くさねば。


今日も、君を愛している。
4 エルヴィン・スミス
少し早い、クリスマスプレゼントとやらを貰った気分だ。

君にしか貰えないもの。
君だけが与えてくれるもの。
君で無ければ価値の無いもの。

そんな贈り物。

対して私が贈れるものは少ない。
気の利かない男故に、多くに無関心故に。
差し出せるとすれば、私個人のココロとこの先のプライベートな時間くらいなものだ。
だがそれではあまりにお手軽過ぎる。

君がくれたものに釣り合う位のものを何か。


君がくれた歓びと幸せを同じだけ、君にも。
5 エルヴィン・スミス
一年以上の付き合いになるのに未だに新しい発見が多く、その度に感情が揺さぶられる。

気が強く生意気とも言える程に威勢が良い反面、優しく少し怖がりで庇護欲を掻き立てられる。若いと言えど男である彼にそんな気持ちを持つのは失礼かもしれないが、そこはこの大きく開いた年齢差のせいと甘んじて貰えないだろうか。

強気でやんちゃな彼も、優しく怖がりな彼も等しく愛している。
6 エレン・イェーガー
今日がなんの日か、覚えていますか?

一年前の今日まで此処にあったオレの「赤いの」はもう無いので、……ってのは建前で、偶には貴方を驚かせてみてぇから今日は此処にお邪魔します。

さて、話は戻りますが、団長は今日がなんの日か覚えていますか?
一年前の今日まであった、…なんて言ったら日付にあまり頓着のない貴方でも思い出してくれるでしょうか。

一年前の今日は、オレにとって良い日ではありませんでした。
元気出す術が分からずに、どうすれば良いのか分からなくなって…貴方を、傷つけてしまった。

傷ついたこと、
傷つけたこと、
これから必要なこと、
繰り返してはいけないこと…

一年前の今日という日があったから、オレはいろんなことを知れたと思います。

相変わらずオレの勘は外れてばかりですが、貴方の代わりは何処にも居ないと感じたことだけはちゃんと合ってました。
失ってもきっとまた次がある、そんな風に思えないのは貴方だけです。

これからも一緒に、ゆっくり歩いてください。
手ぇ繋いで、ふたりでゆっくり。

愛してます、オレの愛しくてかわいい団長。
7 エルヴィン・スミス
彼の思惑通り驚かされてしまったことが少しばかり悔しいが嬉しくもある、案外サプライズ上手で心臓が痛い。


それにしても君は本当に色々とよく覚えていてくれる。
あんな日のことまで。
楽しいことばかりでは無く、真逆であろうことも振り返ることが出来る君は本当に強い子なのだと思うよ。
そこもまた、尊敬するところの一つだ。

一年前は互いに対してあまりにも無知だった。
そしてそのまま進んでしまう事に私が臆病過ぎた。
一年の時を重ねた今、もう同じ事はしないだろうが今度は慣れが課題になって来るのでは無いかと思っている。既に思い当たる節がいくつか……。
何事も一歩が遅い自分の尻を蹴飛ばしていかなければ。寂しくさせるより鬱陶しいと思われた方がまだマシだろう。
いい年をして嫌われる事に怯えるなんて無様にも程がある。

まだまだ頼りない男ではあるが、手を離すつもりは無いのでどうかこれからも共に歩んでいって欲しい。
誰より愛しく可愛い、私の子犬。もとい伴侶として。
8 エルヴィン・スミス
どんなに執務や任務で休息も睡眠も削ろうと、彼の声が聞こえるだけで、手紙を読み返すだけで気力が湧いてくるのだから私も相当単純な男だ。こんなにも感情で様々なものが左右されるものかと恥じた事もあったが今ではすっかり日常で。

支えられていると、日々感じる。

彼はきっと無意識なのだろう。
そんな所も愛しくて、時々衝動に任せて動いてしまいたくもなるのだが暫くは控えなければ。
衝動のままに食らいつくのはゆっくりと出来る日をつくってからにしよう。
…楽しみだ。


いつも有り難う。
9 エルヴィン・スミス
深く重く想ってしまうが故に。


最早これが愛情か執着か自分でも判断つかないものになっている。


後悔はしない。
愛しい愛しい私のかわいい仔犬へ祝福を。