1 リヴァイ

俺の翡翠に宛てる。

手記を持つ程マメじゃねぇ。
かと言って当の本人に語る程饒舌な口も持ち合わせてはいねぇ。
…故に、この場を借りる。
冴えねぇオッサンの独り言を綴らせて貰おう。

彼奴と出逢ったのは三月と少し前。
俺の望んだ侭の姿が突然目の前に現れて驚いたのを覚えている。
他の奴に掻っ攫われるのを危惧して慌てて返書を送ったと知ればお前はどう思うだろうか。
必死過ぎると笑うか、呆れるか。

どうも俺は甘えるってぇのが不得手だ。好きだ、と…この一言すら素直に言えねぇ。
考えてもみろ、一回り近く歳の離れたガキに骨抜きにされてるなんざ誰が言える。周りに知れたら照れ隠しに其奴の背骨を圧し折っちまうかもしれねぇな。それは何とか避けてぇところだ。

稀に…そう、稀に。彼奴を眩しく思う。喜怒哀楽を隠す事をせず、好意も謝罪も躊躇わない姿を好ましく思う反面、酷く眩しい。
俺もそう在れたらと、時折思いはするも…いざあの翡翠玉を目の前にすると言葉が溶ける。
…だから、少しだけ。
この愛おしい日に、少しだけ。

柔らかく俺の名を呼ぶ声が好きだ。
やけに慎重に触れる指が好きだ。
だらしなく緩む頬も、ギラついた眼差しも、熱を孕んだ吐息も。
垣間見える独占欲に背筋が震える。従順な犬の皮を被り鋭い牙を隠した獣を傍に置く優越感。高揚。俺のモノだと感じる度に生まれる至福と安堵。
恐らくきっと、全て明け渡しちまうんだろう。
なんせ俺はあの眼に弱い。
我ながら笑えたもんだ。年甲斐もなく惚れ込んでいるらしい。

願わくは末永く。隣に在れたらと。
自分勝手な願いと共にお前の生まれたこの日を祝おう。
おめでとう、エレン。俺の可愛い翡翠。