1 リヴァイ

―…だと思え。初めてお前に遣る餌だ。見付けられるか自体、鈍いお前相手じゃあ解らねえが…鼻が利く様なら評価出来る。餌に有り付くも、腐らせるもお前次第としか言い様がねえ。九分九厘、腐らせるだろうがな。
…まあ良い。偶の気紛れだ。賢い犬でも餌を遣らねえ限りは初めの内、芸を覚えもしねえと聞く。マテの一つ二つ、覚えて貰わねえと困るんだよ…お前の鼻は、役に立ったか?

…此の歳になってからお前の様な青二才に熱を出したなんざ、笑い話にもならねえ。餓鬼だと思ってりゃあ急に調子付いて、咬み付かれた様な気分にさえなった。
侮ってられねえ様だな…知らねえ内に耳も肥え、勝手な好奇心を付けて行く挙げ句…身体もデカくなって来やがる。…全く笑えん。……笑えねえが、…熱が下がる気配も俺には無い。此れが何より、笑えねえ話だ。
一回り以上も違う小僧を相手にこんな文を認める辺り、俺の頭も腐り始めたんだろうよ…餓鬼が初恋だ何だと騒ぐなら未だ可愛いが、…情けねえ。

…で、…お前は俺が他所に行きやしねえかと話したな。今一度聞く。何処をどう見て俺が他所に行く様に見える。お前の目は飾りか?俺の面は拝めても、俺の言葉が解らねえなら耳を疑うべきか、頭を疑うべきか、…何にせよ馬鹿な杞憂は止せ。
阿呆に馬鹿を掛けた上から鈍さを足したすっからかんの脳味噌でも理解出来るだろう。
馬鹿正直さが取り柄なら素直に受け止めると良い。余計な心配は要らねえ、お前の身体は俺が守ると話した言葉の意味を理解しろ…お前を一人にして何を守る。
悪いが、俺は遠目に見守る生温い遣り方が性に合わねえ…お前に関しては特に、だ。…俺を横に置く、最高に利く害虫避けだとは思わねえか。なあ、エレン。

…おら、存分にデレて遣ったぞ。まあ俺個人から言わせりゃあ普段もデレとやらを発揮してる積もりだがな。如何せんテメェの鈍さじゃあ解らねえだろう…―最後に、お前は俺が娶る、とは言ったが…学と経験、理性を積んだ暁にはテメェの口から同じ台詞を聞けると期待して居るとだけ添えてお前を床に転がした後、寝る。俺が死ぬ迄には大人になれよ、クソガキ。

…なっげえな、おい(引き気味)
2 エレン・イェーガー
…この記事を見付けた時のオレの感情の推移を逐一兵長にお見せしたかったです。文字を見ただけで視界が滲むって言うことが本当にこの世にあるんだなという事を教えて貰いました。
兵長は本当に……俺に色んな事を教えて下さいます。
ただ兵長が引く程一瞬でこの記事を見付けてしまって、兵長の犬として鼻が利く事は証明出来たかと思うんですが、記事を見付ける迄の甘い戯れ…といった事が全く出来ずそれは本当に申し訳無かったと思います。ただ…兵長はマテを覚えろと言われますが、必死にマテをしようとするオレの鼻先に美味しそうな餌を押し付けるのは…いつも…兵長ですよね…。腹を空かせているオレにはアレは拷問にも等しいんですが…。

…、それはさて置き。あまりに短期間にオレの思い描いていた事が全て実ってしまって、やっぱり今も…凄く…怖いです。後は落ちていく一方なんじゃないのかとか、此処で運を使い果たしちまったんじゃないのかとか、もしかしてこれは夢なんじゃないのかとか。本当に…考え出したらキリが無いです。こんな事を言っていたらまたガキだと笑われてしまいますよね。

今は兵長に守られる駄犬でしかないオレですがいずれは必ず、兵長が安心して背中を預けられる男になります。その時には兵長が何処かへ行ってしまうのではないかと不安を口にするような子供のオレではなく、兵長は何処へも行かせないと、自信を持って宣言出来るようになりますので。どうか…待っていて下さい。そしてその時にはオレから結婚しようと、言いたいと思います…。いや…あの時は兵長の求婚が余りに唐突でなんと言えば良いか分からなかっただけで、本当に兵長に娶られようと心に決めた訳ではないので……。キチンと折を見てオレから言います。

それでは初めの内はオレを寝台の床に転がしていた兵長が、今ではオレを進んで隣に迎えてくれる幸せを噛み締めながら今日も眠りにつきます。
これからもこの幸せが続くように、星に願って。
3 リヴァイ
犬の忠誠心の高さは身に染みて解って居る積もりだ、お前の悋気に関して言えば彼処迄の物は見た事がねえ。
今迄の奴等が淡白だったのかも解らないが、其れにしても嫉妬心、…と言うなら独占欲が近ェか。其れがこうも強い野郎を俺は知らねえな。
其の癖、何か堪える様にして大丈夫だと言う理由が解らなかった。大丈夫と言う割りに鼻水垂れてんぞ、とまあ雑巾を投げる訳だ。
生来、独占欲が強かったとしても…其れなら何故尾っぽを巻いて遠慮がちに構える。独占欲は有っても独占はしねえ、意味が解らん。全く理解出来ねえ。単に馬鹿か?…とも考えたが。
…どうやら理由は違ったらしいな。

口約束なんざ足しにならねえ。
お前だけだ、此奴程信用ならん常套句もねえだろう。
とは言え現状、お前を安心させる術と言えば信用ならねえ常套句と俺の口以外には無い。
お前が望むなら体でも何でも好きなものをくれて遣るが、お前の場合は其れもさして効力を持たねえ様だ。如何せん。
他に俺が出来る事と言えばお前が寝る迄子守りをする事位の物だろう。
睦言が欲しいなら遣らねえでも無いが、お前の性格だと言わせた物よりも俺から自発的に出る物を欲しがりそうな物だ…然し、まあなんだ…俺は其所を迄流暢に砂糖が口から出る訳でもねえ。

…他、俺が思い付く事はお前の傍らに出来る限り居る。言葉も必要ねえ、手練れた真似も床も何も要らん。其れでも何より確かな時間だとは思わねえか。

だが、今夜は特別…久しく餌を遣ろう。利口に一ヶ月過ごせた褒美だ。俺はお前を、………いや、…止めだな。残りはお前の耳朶引きながら済ます。そのまま待て。良いか、マテ、だ。
4 削除済
5 エレン・イェーガー
餌、…有難うございます。すごく、嬉しいです。

毎日顔を合わせられて幸せです。最近はオレの自己主張が始まった為に時々不穏な空気が流れますが、それも楽しいです、よ、…ね?
いつも兵長は擦れ違いが起きた翌日、あれは喧嘩では無い。俺は怒っていないと言い張りますが、オレはあれは喧嘩だと思います。というより喧嘩だと思いたいです。
だって喧嘩というのはお互いが同じに所に立っているからこそ出来る事じゃないですか。オレは兵長と二人きりの時はどんな時でも兵長の隣に立っていたいんです。

周りと比較して見れば俺達は出会って未だまだ日が浅いですが、初めの頃と比べて少しは成長出来たでしょうか。
兵長が安心して身体を預けられる男に近付けているでしょうか。

この記事を見た後、しつこく強請るオレに贈って下さった餌には感動しました。しかし兵長は気付かれているのか分かりませんが、
あの餌、……言葉、はそれより以前にもくれて居たんですよ。
珍しく兵長が先に寝てしまった時に、意識を落とす直前に、何度も繰り返し言ってくれました。
あの瞬間はオレだけの宝物です。改めて何があってもこの人を守ろうと思えた瞬間でした。

最近は喜んで隣に迎えるどころか、喧嘩した時はオレをベッドに寝かせて自分は椅子に寝ようとする兵長に宛てて。
貴方を何時までも大切にすると誓います。