1 ユミル

無題

別に今なお悲しみに明け暮れてる訳じゃねぇよ。知ってるだろ?私はそういう女じゃない。
ただその、なんだ。最後に、お前に何も言ってやれなかったのが今でも心残り、なもんでね。お前は私からの言葉なんていらなかっただろうけど。はは、これが自業自得ってやつ?

優しいお前に辛い思いをさせちまって悪かった。
またどこかでうじうじ悩んだりしてないか?お前は文句無しに良い奴だ、良い男だ。だから自信持て。胸を張れ。戦士らしく堂々としろ。

私にとって、お前と過ごした日はそりゃあもう最高だった。勝負に負けたのだって、単なる芋の皮剥きだって綺麗な思い出だ。
お前も同じように思ってくれてりゃ……なーんて言える立場じゃねぇか。

んじゃ、達者でな。
ちなみに私は代理だよ。あーあ、貧乏クジ引いちまった。
2 クリスタ・レンズ
…ユミルの馬鹿。…あなたの声を聞いたら戻ってきてしまうって…言ったじゃない。

ねえ、ユミル。あなたが謝ることなんてないよ。
…突き離す様なことをしてごめんなさい。どうしてあんな馬鹿なことしたのかなって、何度も悔んだ。
私がもっと辛抱強かったら、今頃あなたと二人で歩けていたのかなって。…ごめんね、またうじうじ悩んでる。

あなたと過ごした時間は今でも鮮明に覚えてるよ。
お風呂場で水を掛け合ったことだって、部屋で雑誌を広げて話をしたことだって。私が足を滑らせて転んだときは大笑いしたっけ。
あれもそれも…あれからずっと頭の奥に仕舞い込んでたの。思い出したら、弱い私はまたあなたの姿を探してしまうから。

…あなたから言葉が返ってくるなんて思ってもなかった。身勝手な私のことなんか嫌いになってると思ってた。
ありがとう。嬉しいはずなのにな、…あなたのいない世界で笑うにはまだ時間が掛かるみたい。
いい加減未練がましいぞって、あなたは笑ってくれるかな。

貧乏クジも、あなたと一緒なら悪くないって思うの。
…大好きだよ、ユミル。…今だけ、あなたとの思い出に縋ることを許して。