1 エレン・イェーガー

猛省。

この場所をオレが使うのは場違いだと思うが、一枚お借りします。

本当はこうした場所はオレみたいに迷惑を掛けた側じゃなく、意味も訳も分からず待たされたアイツみたいに優しい奴が使うべきなんだろう。
って、もし待たれてなかったら流石に泣けるんだけど。…いや、お前なら。何時までかは分かんねーけど、きっと待っててくれたんだと思う。

そう確信に近く信じられるだけの存在に対して、迷惑を掛けて信用を裏切っちまった。
大事な宿舎の鍵まで預かったってのに、鳩を住まわせていた場所ごと壊れて失った。
ごめんな、ジャン。本当に悪い。
事情はまだ届くか分からないあの場所から飛ばした。あの場所以外にオレから向かえる道はねぇ。

お前がもう繋がらない場所に居るなら、オレはこのまま壁の外へ出ようと思う。お前と出逢ったこの場所から離れるよ。
大事にしたかった奴に迷惑を掛けたオレなりのけじめとして。
あ、でもお前は気にすんなよ、頼むから。オレが自分で嫌なだけで。結局はお前から布団を奪った時と同じ我が儘ってだけだ。

門を出る時は反省とお前との思い出を抱いてさ。未練は…うん、お前との最後を曖昧なモンにしちまった事と、お前の存在、奪い損ねたベッドスペースだけかな。

その覚悟で飛ばした手紙は、お前の元へ届いたのか。

自覚あんのか知らねーが、お前はいい奴でいい男だよ。だからいい人と並んで幸せになってくれ。
なんて、単なる寝具強奪者だっただけのオレが言うのも可笑しいな。言われなくてもお前は自然と素敵な出逢いを掴むんだろうしよ。クソ、羨ましい。誰がって決まってんだろ、そのお相手さんだよ。

でも、もしもう隣にその人が居るんなら心から祝福する。
やっぱ大切な奴には幸せになって欲しいもんな。

あー纏まらねえ。
交わした色んな言葉が過って来て止まんねーよ。クソ。

友達になれたのかも分かんねぇジャン。
お前ともう一度話したい。
でもそれをお前が望まないなら、せめて謝罪だけは此処に残させて欲しい。

バカやって悪態吐いて、お前の包容力に惹かれんのが悔しくてまたバカをやって、もうな、何発でこぴんやらの攻撃を食らってやり返したかも覚えてねーよ。でもそれが楽しかった。
戦場ではどうするだのと真面目な話をして互いの話に頷いたりさ。全部オレには良い思い出だ。

本当にありがとうな、ジャン。

あークソ、色々思い出したら涙腺がやべぇ。せめてお前は今笑ってますよーに。
2 ジャン・キルシュタイン
これはもう俺の知ってるお前だよな?

俺にはお前を咎める理由はねぇんだ。
もういいじゃねぇか、エレン。あれは不慮の事故だったワケだしよ。
お前の気持ちは充分伝わったし、何より俺の元にこうして帰ってきてくれた事に俺は心底満足してんだ。それで良いだろ。
それにだ、こうして首部を垂れて湿気た面してるお前も充分優しくていい奴じゃねぇか。
そこもひっくるめて俺はお前と共にする方を選んだんだ、文句は言わせねぇぞ。
布団半分だろうが場競り合いだろうが上等じゃねえか。
俺は心配はしたが怒っちゃいねぇんだよ、だからこれ以上自分を責めるのは辞めてくれ。頼む。

今現在が俺の総ての答えだ。

これに気付いたなら今回の事はこれで終いにしようぜ。…解ったな?

湿気た面してんじゃねぇよ、お前らしくねえだろ。

お前一人を壁の外へ行かせたりはしねぇ。
今までの事も綺麗終わらせるつもりもねぇ。
こっからまた新しく思い出を作って行けばいいじゃねえか。

…気にかけてくれてありがとよ、エレン。
3 エレン・イェーガー
ひっそりと畳むつもりで来て、今気付いた。お前だよ、見間違えたりしねぇ。
って事はだ、オレはお前がここに書いた返事にもバレてた事にすら気付かないまま鳩を送ってた訳か。

……何だこの羞恥プレイ。

でも此処に書いてくれた内容を直接言われなかったのは、お前なりの優しさなんだろうな。そう思っとく。
ありがとよ、ジャン。お前のお陰で似合わない湿気っ面は晴れ間を迎えられそうだ。