1 リヴァイ

関係とは

俺とお前の関係ってのはなんなんだろうな。
夫婦?恋人?…それともただのダチ?あるいは惰性の延長上にあるだけの関係?

日に日にわからなくなっていく。お前といるのは楽しい。毎日帰りを待つし言葉も交わすし返事がなけりゃ落ち込むし不安だ。でもそれは俺だけなんだろうか、そう思って更に不安になる。
お前は優しいから無理して俺の恋愛ごっこに付き合ってくれてるんじゃねぇか、と思う。
本命のあの人に罪悪感を抱いても俺をまだ見捨てないのは優しさなのか、哀れみなのか、単純に愛情からなのかはわからない。

聞くのは怖い。
関係が壊れちまうのは嫌だ。
だから聞く素振りを見せても忘れてくれとか有耶無耶にしちまう。本当は尋ねたいことが山とある。あの人に触れるとき、俺に触れるときに感じる同じ罪悪感を感じるのかとか。きっと、答えはノーだろう。憶測でしかないが何となく分かる、何となく伝わってくる。
俺への罪悪感がないのはきっと俺があの人以下の存在であの人以上に成り得ないことの証明だ。それを直接聞きたくなくて、ずっと聞けないまま不安になって泣いたり愚図ったりでお前を困らせる。

同じ事を何回も繰り返しているな、最近。このままじゃダメだと思ってる、正直。
あの頃よりはお前も寂しくなくなったのだろう。最初は一時の寂しさを紛らわす関係だった。俺の役目はとうに終わったのかもしれねぇな。

頭では理解してるがいざ離れるなんて想像も出来ねぇ。
なぁ、どうしたらいいんだろうな。
2 リヴァイ
愛情、それはどういう意味のだろう。
きっと俺がお前に抱いているものとは違うのだろう。そうだな、言うなれば…家族や友人に抱くようなそれ。恋人への愛情ではない気がしていた。いや、確信に変わったんだ。

確信に変わった時、思った以上に傷付いた自分に気が付いた。指先が震えて、目の奥が熱くなって、頭が痛くなった。
目の前が滲んで霞んで呼吸がしにくくなった。

…泣いてばかりと、お前は悲しい顔をする。だからもう、泣かない。泣くときはお前の前では泣かない。ひとりで泣く。
3 リヴァイ
呆気なく終わる。
俺はお前のなんだったんだろう。

夫婦を捨てて友達になる。
俺の苦渋の決断だったんだ。
孤独になるぐらいなら…なんて半ばやけっぱちのように思われたのかもしれないな。でも、独りは嫌なんだ。
お前は俺がそういう人間だとよく知っている。
だから友達でいることを了承してくれたんだと俺は思ってる。


なぁ、友達ってのはどういう会話をするもんなんだ。
明日からなにをお前に話せばいいんだろう。
4 リヴァイ
俺が望んだ関係だったが、ギクシャクなんてもんじゃねぇ。
俺自身きっと友達でもうまくやれると思っていた。だがあいつは違うみたいだ。
自分からフったやつと友達になって普通に会話なんて出来っこないのか…。俺は今で通り普通に振る舞ってる。言いたいことを何も言わずに。なぜ言わないか、なんてそんなの言ったら完全にサヨナラだからだ。

今までだってそうだ。
言いたいことを我慢してきた。して欲しいことをねだることも出来なかった。ねだっても叶わないものだったからだ。言ってもなにも変わらないからだ。
5 リヴァイ
距離感がわからない。
トモダチ、ってのはどんな距離感で付き合えばいいのか。
あいつはダチとは一週間に一回やらそういう頻度だと言っていた。毎日話をして好きだと抱き締めて、それをなくして今はどうだろう。素っ気ない挨拶、取るに足らない言葉の掛け合い。触れ合いなんてものはほぼない。トモダチとはそういうもんなんだろうか。

日に日に悲しみは薄れ、頭でいろいろ考えていけば行くほど虚しさと憎さがこみ上げる。一番悪い精神状態だと思う。
俺は不幸になったのに、不幸とは言わずとも幸せではなくなったのに、どうしてお前はあの人と幸せなままなんだろうかと。
何も知らずにいるあの人にだけ愛情を注いで、愛情を受けて…どうしてお前たちだけがずっと幸せなのだと。ずるくないか?今まで散々我慢して叶わない願いを抱いてそれでも振り向いて欲しくて頑張って来たのに、結果俺なんていなくても良かったような結末じゃないか。

復讐でもしたいのか、とある人に問われた。復讐、それもいいかもしれない。
なんて、復讐なんてそもそも誰にすればいいんだ。お前に?お前の大事なあの人に?
方法もないがしたところでむなしいだけだ

今までお前ばかりだった俺が、今多くの時間を持て余す。持て余した時間は俺に良くないことを考えさせる。

なあ、あまり俺を無碍にしないでくれ。今までのことと積もり積もって…悪い感情ばかりが湧いて来ちまう。そんな自分は嫌だ…。こんな汚い人間とわかればもうトモダチですらいてくれないだろう。

だから今日も俺はいつも通り。
いつも通りの俺でお前と話をする。


一番怖いのは、孤独。
我慢で孤独を回避できるなら俺は何にでも耐えてみせる。