終わりの音

もう、駄目なのかもな。
何があったとか、喧嘩したでもない。これまで互いの些細なミスも許し合って毎日甘く優しい時間を過ごして来た……はずだ。

でも最近は、ふとした瞬間のお前の言動に違和感を覚えるんだよな。少し前までのお前ならそこでそんな台詞は吐かなかった、そんな行動する奴だったか、こうした場面で寝なかった、とか。
本当に小さなもんだけど、幾つか積み重なったら、信頼はしててもモヤモヤも付き纏う様になって来て苦しくなって来ちまった。
正直この世界には割りと長く居着いてるけど、こうした小さな擦れ違いや違和感が重なって開いた僅かな溝は、簡単に埋まった試しがない。

疲れてるだけ、体調が悪いの誤魔化してるだけだ。そう自分に言い聞かせて大丈夫、平気って口癖をお前に零すたび、胸が軋んですげえ痛い。

失わないために嘘を吐くのが正しいのか、失う覚悟で本音をぶつけんのが正しいか、今まで散々どっちの行動もして、その数だけ失ってきたんだ。もう、オレには何が正解かなんてわかんねえよ。

こんなに好きにならなきゃ、こんなに痛ぇ思いはしなかったんだろうな。
でもお前を好きになった事も、出逢えた事も、全部がオレの宝物で、嫌になんてなれねえ。きっと、離れたとしてもそうだ。

なあ。馬鹿なオレを、気にしすぎだって軽く笑ってくれ。そんで、これからも一緒に、隣に居て笑っててくれよ。そのためなら、オレに出来ることなら何でもする。
逆に離れるのがお前の幸せに繋がるなら、そん時は笑顔で見送らせろ。お前に泣き顔は見せねえ。好きなヤツの前で、嬉し涙以外を流す方法なんて知らねぇよ。

ああクソ、好きだ。
苦しい、痛い。
好きだ、畜生。