1 エレン・イェーガー

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ごめんなさい。謝る事しか、出来無くて。貴方の顔を見れば、オレはまた屹度。

"特別"は、変わらない。
貴方の事は、怖くない。
オレが、怖い。
慣れて行くのも、怖い。
本音を言うのも、怖い。

もっと傍に、もっと、もっと。
何時か聞いた"ただいま"。凄く嬉しかったんです。
ごめんなさい、これだけずっと隠してました。貴方への、たった一つの隠し事。
オレは多分、寂しかったんです。貴方の声で目覚めて、貴方の声の中で眠りたかった。…そんな事、出来無いのは分かってる。オレだって、現実を知らない子供じゃない。
…貴方の低い声も、鋭い眼差しも、優しい腕も。全部、全部欲しかった。四六時中、存在を感じていたかった。

そんなガキみてえな事、貴方に言えなかった。拒絶されるのも、負担になるのも、何もかもが怖くて。…本音を言える程の強いオレなら、屹度何かは変わってた。貴方の所為じゃない。
…オレには泣く権利も無いから、泣きません。

ごめんなさい。最後迄傷付けてばかりだった。
2 リヴァイ
…何度考えても、思い当たる事ばかりでな。お前さんが、俺のお前であると思えてならない。
…全くの見当違いだったら、深く謝罪する。

鍵は、大きなものは共通してる。
『特別は変わらない』

他には、
・眠れない俺
・視界と呼吸
・数字列

…切りが無ぇから、これくらいにしておく。

宿も数字も、あの場所も、何一つ変わってない。ずっと想ってる。
お前に、帰って来て欲しい。

全ての望みを賭けて。
3 エレン・イェーガー
…貴方なら、何時かは気付いてくれるだろうとは思ってましたけど。こんなに早く気付かれてるとは、思ってませんでした。

鍵なんて、要らないでしょう。
一応、"眠る為の秘訣"…コレだけ。

結局オレは、貴方に直接本音を言えなかった。貴方が何時か言っていた、凡庸に成り下がる事を恐れて。…思えば最初に貴方に褒められたのは、オレが"聡いガキ"だ、と。そこが切っ掛けだったと、そう思ってます。…そのオレが凡庸に成り下がれば、如何なるのかも分からない。
それが享受されたとしても、屹度貴方の負担になる。…自己完結ばかりで、申し訳無くは思ってます、本当に。

貴方の声を聞くと、決めた筈の事も揺らぐんです。…あの場所も、貴方の声に溢れ過ぎていて。予想通りに、泣いてばっかですよ、オレ。
どうしたら良いのか、もう分かんないです。…オレ、もう自分の事すら決められなくなっちゃいそうです。どうすれば、何が、正解なんでしょうか。
4 リヴァイ
…ずっと探していたからな…せめて、お前の欠片や痕跡だけでも見付けられねぇかと…本人を見付けた時は…そりゃ、冷静で居られる訳も無ぇよ、涙腺は崩壊しっ放しだ。だが、嬉しい。こうしてお前が生きてる事が、言葉を交わせてる事が…まず、嬉しい。有難う。

…エレン、俺達は似てるな。本音を言うのを怖がる所も、自己完結しちまう所もだ。
俺の言葉が、色々とお前を縛り付けちまってた様だな…すまなかった。お前は、自由でいいんだぞ。お前はお前だ。それでいい。どんなお前でも好きだと、前にも言った筈だ。それも変わってない。何も心配は要らねぇよ。
俺は、お前の特別を手に入れたら、今度はその特別から外れちまうのが怖くて堪らなくなった。…だが、俺はただ、お前を信じりゃ良かったんだな。手前ぇの価値観なんぞ置いといて、只ひたすら目の前のお前を見詰めてりゃ良かったんだ。俺の一番欲しいものは、昔も今も変わらず、お前だけなんだから。
そのお前が欲しがるものを、俺は渡したい。前と違うのは、これだけだ。気付くのが遅くなって、本当にすまなかったな。今度は思うだけで終わらせたりしない。お前の言う、朝に目覚めて、夜に眠りに落ちても共に在る…四六時中、傍に…それを願ってたのは、他でも無い俺自身だ。本音を言えなかったのは、俺も一緒なんだよ。凡庸だろうが有り触れて様が、何でもいい。例えどうなろうが、その時に、二人で考えりゃいいさ。正解も不正解も無い。それでいいんだと、俺は思う。

俺はもう、決めてるぞ。ずっと前から答えは出てる。何が起きるかなんて先の事は俺にも分からねぇ。けど、望む未来は描ける。望むのは一つだけだ。
お前と、一緒に居たい。出来るだけ長い時間、ずっと、ずっと一緒に居たい。お前を感じて生きて行きたい。もう、悲しませたりしない。その為に必要な事は、負担とは言わねぇんだ。お前を幸せにしたい。それは俺の幸せにも繋がってる。俺達の想いは、一方通行なんかじゃ無い。いつだって一緒だ。なのに、離れたくなんかない。
どうか、俺の一番近くに居てくれ。


宿は、あの場所に置いてある。ほんの一言でいい、決心が付いたら…いや、気が向いたらでもいい…顔を見せてくれたら嬉しい…お願い、だ。俺から出向く事が可能なら、そうしてぇんだが……歯痒いな…
…何度離れても、俺達は惹き合う。どうしても、そう思えてならねぇんだよ。