1 エルヴィン・スミス

すまなかった、ありがとう。

本来の私の姿ではなく、愛するお前の姿で綴ることを許してくれ。

今でも、愛しているよ。
恥も外聞も、世間体すら捨てられるほどに。
けれど、きっとお前の気持ちはそうではないだろうと、気付いてしまった。
お前の優しい嘘の中で揺蕩っていてやろうかとも思ったが、
それはなんと悲しい時間なのだろうかと思い直してね。
この胸が潰える前に、情けなく筆を置く私を許せ。
私の枯れたはずの涙は止めどなく溢れ、きっと私を温かく溺れさせる。
それは決して不幸ではないんだ。

パンドラの箱の底には、希望が残ったという。
どれだけの辛いことがあっても、苦しいことがあっても、お前の言葉を思い出して、私はまだ足を踏み出せる。

愛している、愛しているよ、私のお前。

これを伝えたらお前もきっと泣いてしまうだろうね。
そして私にどんな言葉をくれるのだろう。
二人で頬を真っ赤にして、気が済むまで泣いてしまおう。
そして、あくる朝に別々の道へ一歩を踏みだそう。
傷ついたことなど無いような、ばら色の頬をして、ね。

ありがとう、私に心を与えてくれてありがとう。
逃げたりなんてしない。向き合って話をしよう。
2 エルヴィン・スミス
そうそう、最後にいい忘れてしまった。
お前が大切に読んでくれていたノートは、燃やしてくれと依頼したんだ。
何一つ、私はお前に残すつもりはない。

ノートに埃が積もって、忘れ去られていくのがきっと怖かったからかもしれないな。
だから早く忘れていい。
そして、誰よりも幸せにおなり。