1 マルコ・ボット

懐かしい夢を見た。

あの頃のように、任務が長引いて少し帰りが遅くなった僕を、お前が「おかえり」って出迎えてくれる夢だ。そんなお前を抱き締めようと手を伸ばしたところで目が覚めて、もう腕の中にはいない現実を突き付けられたことが悲しかったと言ったら…お前は笑うかい?優し過ぎるお前のことだから、オレもだって言いながら手を差し伸べてくれるだろうか。…後者は僕の都合のいい妄想だな。
勝手に感傷的になることが馬鹿みたいに思える程、酷いことをしたのは僕なんだからさ。忙しさにかまけて、何も言わずにお前の前から姿を消した僕が全て悪い。

今更お前に縋り付くつもりはこれっぽっちも無いよ。
…なのに、何でこんなところに言葉を残してるのかは自分でもよく分からない。精一杯だった状況から解放されて、少し思い出を振り返る余裕が出来たからかな。自分で文字を書きながら、僕はなんて女々しくて未練がましい男なんだろうかって嘲笑いたくなる程だ。
だけどこれだけは言わせてくれ。
僕はお前のことが好きだった。本当に大好きだったよ。時折愛を怖がって悲しげな言葉を残すお前を、僕が誰よりも幸せにしてあげたかった気持ちに嘘は無い。
初めて会った日のこと、初めて好きだと言ってくれた日のこと、初めてお前を抱いた日のこと、今でも鮮明に覚えてる。お前を抱き締めた温もりが未だに僕の腕に残ってる。照れ屋なくせに案外甘えたで、強がるくせにやけに素直で。お前とくだらない言葉を交わしながら一緒に眠るのが楽しかった。

お前には本当にすまないことをしたと思う。謝ったところで何が変わるわけじゃないけど、どうか今は幸せであってほしいと願うことだけは僕にもさせてくれ。
これからも元気で。そして、誰よりも幸せになってほしい。
僕はお前の笑顔が大好きだから。
2 ジャン・キルシュタイン
…一ヶ月近く前の記事なんだが、妙に惹かれるもんがあってよ。きっと俺の事ではねえと思いながら、もしかしてとも思う俺がいる。半信半疑で申し訳ねえんだが、それを確かめる為に、一枚頁を貰うぜ。

鍵を挙げるとすれば…そうだな。俺は日記を付けてて、お前は何度か乱入してくれた。チャットでは最初俺が寝落ちてばっかで、謝ってばかりだった。組み合わせはお前と俺で、チャットで出会った。
お前がアイツなら此れで解る、はず。…寝落ちが一番印象的なんじゃねえかな。


多分違うんだろうな、って気がしてるけど。合ってるなら、伝えたい事がある。気付くかどうか解んねえけど…良かったら返事を貰えると嬉しい。
3 マルコ・ボット
…お前だよ、ジャン。
反応なんて期待してなかった、というよりもお前はもう僕の事なんて忘れてると思ってたから…本当に驚いた。
気付くのが遅くなってごめんな。

お前からの言葉なら何でも聞くよ。
例え良くない言葉だとしてもそれがジャンの気持ちなら受け止める。お前のその伝えたい事っていうのを聞かせてくれないかい?
4 ジャン・キルシュタイン
…はは…マジかよ。…半信半疑って言いながら、期待なんか殆どしてなかったんだぜ。お前から返事が来る事だってそうだ。俺こそ、反応遅れちまって悪い。

本当にお前だと思わなくて、伝えたい事って言っても大したもんじゃねえんだ。
俺、ずっとお前に嫌われたんだと思ってて。寝落ちなり何なり、思い当たる点があまりに多すぎてよ。自分から会いに行く勇気が無かった。…今思えば会いに行ったら会いに行ったで、忙しいお前の負担になっちまってたのかな。それなら俺の考えは間違いで、でも正しかったと言えるのか。
謝る必要はねえよ。ただ、ああ、なんだ。…お前の言葉を見付けられて良かった。嬉しかった。ちゃんと愛されてたんだなって、実感出来た。凄く、安心した。

…手を差し伸べたらお前は俺の手を取ってくれるか?なんて、お前と別れて暫くこの世界から離れてたから、お前が好きでだった俺でいられるかはちょっと解らねえんだが。別にやり直したいって訳でもねえ、ただもう一度、お前と話してみたいと思っただけだ。
勿論無理強いはしねえよ、丁寧な言葉を沢山貰ったからな。それだけでも充分だ。まだ忙しくしてんのか、何にせよあまり無理はすんなよ。お前の幸せを、俺も願ってる。


有り難うな、マルコ。やっぱりお前は優しい奴だった。