1 リヴァイ

迷子

昔からそうだった。
時折、解らなくなる。
俺の中から俺が消える。

別に病んでる訳じゃねえよ、迷子になるってだけの事だ。
愛されているのかどうか。
……愛してるのかどうかさえも。
いや、後者の方が強いな。一秒前まで愛おしかったのに、次の瞬間には他人と接してる様な気分になる事が多々ある。元に戻るまでは抜け殻も同然、情けねえ。
俺は感情が薄いのか?決してそんな筈は無いんだが。余所見をしたいなんて願望もない。自分なりの愛情も持ち合わせてる。
全て消え失せるこの瞬間だけ、取り残されたような気分になるんだ。虚しい。

繰り返し陥るこの泥濘から、いつか足が抜けなくなっちまいそうで。
全て壊してしまいそうなのが、怖い。


俺は俺であり、仮の姿でもある。
2 ハンジ・ゾエ
やあ、リヴァイ。何だか私に似てる気がしたから、書き込ませて貰ったよ。大切な一室に邪魔な存在だったらごめん、一言くれたらその時は直ぐに消すよ。

私もね、どんなに大好きで大切な相手がいてもふとした瞬間に…何だろう、我に返るって言うのかな。ほんと一気に冷静になっちゃう時があるんだ。
何でこの人といるんだっけ、何でこの人と恋愛をしてるんだっけ。ってね。今まで直ぐ隣にいた相手が、身体も心も酷く遠く感じる。
誰か特定の相手だけにじゃなく、今までの恋人に対しては全員そんな瞬間があったよ。

それが自分でも原因や理由が解らなくてね。だから今回リヴァイの呟きを見て、もしかしたら同じ悩みを抱えて足掻き頑張ってる人が居るのかと、正直驚きと、あと不謹慎だけど少し安心したんだ。ゴメン。
同志がいたからって、各々の心境が制御出来る訳じゃないけどね。

でもお互い、賢者になっちゃった時以外の好きだって気持ちを大切にしてさ。冷静になってしまう自分も、初心を思い出すための切っ掛けだと思って、焦らず自分に正直にやってこうよ。
因みに私はそんな時、余所様の惚気や日記を見たり相手との過去の会話を見返して、気持ちや思い出の整理をしてる。そしたら私はこの人のこんな所が好きだなって再確認出来たりするんだ。

リヴァイがいつか今を笑える様に応援してるよ。
3 リヴァイ
こんな纏まりのねえ独り言にまさか言葉を貰うとは思わなかった。思わなかっただけにやけに嬉しい。気に留めて声を残してくれた事に心から礼を言おう…ハンジ。
消すなよ。

…そうか、お前も同じなんだな。
全く不思議な話だ。冷静になって見渡せば何もかもが遠いような、あの感覚。今は普通なんだが。
例外無く全員に感じるって処までお前と同じらしい。

俺も似たような感覚を知る奴が他に居ると思いもしなくてな、奇妙な安心感を抱いた。それだけでも心強い。
俺自身こんな感覚を抱く原因は、……いつか覚める夢なんだろうと、終わっちまうんだと知って居て諦めてるような節が有るからかも知れねえ。まあ、正解なんてものは解らんが。入れ込み過ぎねえよう自分自身にブレーキを掛けて居るとも思える。

初心を思い出す切っ掛けか、そいつは悪くねえ考えだ。寧ろ発想の転換が出来た。
俺もお前を見習って今後はそうしてみよう。嫌いになる訳じゃ無いからこそ思い出すのは大事だな。いつも冷静になった時に築いたものを壊そうとしちまうから、相手の為にもそうならねえよう改める。

本当に良い言葉を沢山貰っちまった。
感謝してる。
お前にも今より更に良き日々が待って居るよう、強く願う。