エルド・ジン

オレがお前の名を出す時点で反応する奴ァ一人しか居ねえと思うが…１５日の晩、色恋の価値観やら考え方を朝方まで共に語り合った主催者のミケ分隊長…─基、エルド・ジン、お前に宛てる。


あの時は本当にお疲れさんだったな。

あの後、帰還してからちゃんと熟睡出来たのかとか、水浴びで風邪引いてねえかとか考えつつ…去り際のお前の言葉が如何にも気になっちまって、悩みに悩んだ末此処に来た。

否、社交辞令でしかねえとは思うが、酒場でも姉ちゃんに煽てられりゃあ簡単に酒追加しちまうオレの頭じゃ、あの言葉も如何受け取って良いのか判んなくてよ。ガキ共に訊く訳にもいかねえし…。


まァそう云うのを抜きにしても、もう一度謝辞を伝えられりゃあそれで良い。

あん時は本当に有難うな、エルド。

お前が主催したあの集いは、オレにとって心に残るモンになった。後ろ向きだった気持ちも話聞いてて少し軽くなったし、貴重な一夜になったぜ。
お前はこれから多忙になるらしいが、頑張り過ぎて身体壊すんじゃねえぞ？


…上手く纏まらねェけど、お前への感謝と幸を願いながらオレはこれで──

これは驚いた。

恐らく俺で間違いはないでしょうね、ハンネスさん。お久し振りです。

その悩んでる間、何を考えてました？一体、誰の言葉で何を困惑したか、俺にはそれが重要です。

社交辞令だと貴方が思うなら、それはそれで構いませんし。

…なんて、怒らないで下さいよ。結構期待してたんですからこれでも。またこうして声が聞けるなんて思ってもみなかった。

ねえ、あの後はちゃんと休めました？人を気遣える貴方の事だ、酒だ煙草だと言いながら神経を磨り減らしてんじゃねえかって。礼を言うのは俺の方なのに、酷い人だ。


息災である事を願わずにはいられない、貴方へ。改めて感謝を。

まさか、こんなに早くお前から反応が来るなんてな…オレも驚いちまったぜ。

久し振りだな、エルド。

─…お前の『一晩じゃなくても大丈夫』って言葉が頭ン中で反響しながら、なんでオレなんだってずっと考えてた。否、今でも全然解んねえ。
社交辞令じゃなかったってェのはお前の反応見て解ったし、正直に嬉しく思うが…矢っ張り頭ン中は疑問符でいっぱいだ。

あの会の時、あの場に居た奴等を小マメに気遣ってたお前には負けるぜ─…と返しつつ、あの後はちゃんと飯食って休めたし、何処ぞの子鹿と違って繊細な神経は持ち合わせちゃいねェから安心しろ。
…でも、心配してくれて有難うな。


返事をくれたお前に感謝を──

年寄りは律儀…いや、冗談です。

正直に言っちまえば、俺にも良く判りません。心地良い会話と貴方の言葉に心打たれたのは紛れも無く事実なんですが…だから、どうなんて考えちゃいないんですよ。
曖昧な言葉にしたのは俺ですらの疑問なんで上手く言えなくて申し訳ないですが。

また逢いたい、なんて…子供じみた事も言えやしねえくせに希望だけは捨て切れない大人なもんで。
まあ…強いて言うなら、酒でも飲みません？俺と。 ガキの扱いに慣れた、その余裕をちっとばかり捻くれた青二才にも分けてくださいよ。


これくらいの軽口は常套句、後は貴方の判断に任せます。

褒めてんのか貶してんのかどっちだ御前は。


─…そうか、それを聞いて何だか安心したぜ。
互いに分からねえ状態って方が納得出来るっつゥかな。オレもお前との会話は楽しかったが、話し足りたかと云やァ足りてねえのが本音。…遅かったからな、オレが。

本来ならあの一夜で終わる筈だった縁を、お前の一言が繋いでくれた。ガキだろうと大人だろうとそれは変わらねえ。だから今度は二人でゆっくり話してみてるって意味でも、お前の誘いを受ける。
酒の本当の呑み方ってヤツを教えてやるよ。


オレは２０、２１、２５日〜なら空いてる。時間は２１日が２２時以降、それ以外は２１時以降になる。
エルドは如何だ？

勿論褒めてますって、やだな。

本意で呼び止めるには余りにも情報が少な過ぎる。そうでしょう？寧ろ逆の立場なら俺だって足を止めるかすら解んねえ状況だ。
今度は面倒がらずに最初っから箱を開いて…とは言いません。掛かる時間だけ貴方が頭を捻ってんだと思えば良い話の種にもなりますし、そしたらまた言うんでしょう？悪かった、って。だったら俺も言います、気にしてねえって。

まあ……貴方の好奇心に匹敵する、奮発した酒を一杯くらい奢らせてくださいよ。
二人、髭面で呑むのも悪くないくらいは言わせてみせますから。


なんで。取り急ぎ、予定を。
俺も今夜(20日)、21日は大丈夫かと。時間もその頃合なら手空きなんで部屋を用意しておきます。

気にして覗く様にはしておくつもりですから、貴方も検討して頂けると幸い。
それでは、また。

本当かァ？…まァ、そりゃいいとして。
情報が少ねえ中、或る種の勘と手前の気持ちで判断したって事だな、互いに。─…フラリと寄っただけだったが、分かんねえモンだ。こう云うのはよ。

長々待たす訳にはいかねえし、また碌に話せなかったってオチは嫌だろ？オレは嫌だ。だから今度はちゃんと箱を開く。それでも遅けりゃまた悪かったとは言っちまうだろうが…──ッて、オレの言動パターンを読むんじゃねえよ！

お、其奴ァ楽しみだ。こっちの飲んだくれ駐屯兵依り余程お前の方が酒の嗜み方を知ってる。オレもお前と呑むまで酒は我慢するぜ。


部屋、用意させちまって悪いな。
なら早速今夜話すか。２１時前から此処へ覗きに行くから、お前も都合が変わってなけりゃあ此処に連絡くれると有難ェ。

時間が無けりゃ返事蹴っても構わねえからな？

取り急ぎ、予定だけでも。

俺もそんくらいで問題無いです、また部屋が決まり次第伝えに来ますんで。
…まったく、面白可笑しい人だな。おっさんのくせして可愛い…は似合わねえか。

酒、楽しみにしてますよ。