1

電気按摩

事の発端は、俊が付き合っていた彼女と別れたことだった。
彼女とはノリで付き合い始めて数回セックスした後、結局気が合わなくて別れたのだ。
痩せ型で背が高く整った顔立ちの俊は、その後すぐに同じ高校の彼女ができた。
だが、そのことが別れた彼女の怒りを買うことになった。
彼女は同級生の上川に自分がやるだけやって捨てられたのだと訴え、仕返しを頼み込んだ。
たまたま卒業生の大木と一緒にいた上川は、メンツもあってそれを引き受けたのだ。


「いてぇって!離せ!」
俊は逃げようと必死に手足を突っぱねたが、自分より身長も体重も一回り以上違う大木の
手にかかっては、どうしようもなかった。
大木は後ろから俊を羽交い絞めにし、肩の骨が軋むほど締め上げる。
「痛!痛い!痛い!」
特別教室のある棟とは言え、まだ授業中の廊下で大きな声を出されては困ると、上川が俊
の口を押える。
「うっせぇよ!」
膝蹴りが胃の辺りを数回襲い、俊はこみ上げてきた酸に喉を焼かれて咳き込んだ。
上川がやっとおとなしくなった獲物の髪を掴み、乱暴に揺すりながら脅す。
「お前のしたことのオトシマエ、つけるからな」
上川の後ろにはさらに彼の遊び仲間が三人ほどいて、こちらを取り囲んでいる。
彼らの顔を見れば目的が敵討ちなどではなく、暴力を振るうことそのものであることは明
白だった。同じ市内でリンチ死した中学生のニュースが、ふと頭をよぎる。
とても逃げられそうにない状況に、俊は絶望した。
「ハメ捨てしたんだって?どんなチンポか、見せてみろよ」
上川の手がベルトにかかり、あっという間に外して引き抜く。
ズボンとトランクスが一緒に引き下ろされ、俊は五人の前で萎えた性器を晒された。
恐怖と惨めさに、俊の頭に血が昇る。
「結構デカいね。玉も立派じゃん」
上川の言葉に、俊の真後ろで大木が笑う。
「電気按摩、効きそうだな」
大木はそう言うと、俊の膝裏を蹴ってバランスを崩させ、床に座らせる。
俊の腰を両足で挟むと両膝に足首を絡ませ、徐々に開脚させてゆく。
やがて俊は上川たちに向けて大股を広げ、無防備な股間の肉を曝け出す格好にされた。
「んじゃ、いくよ。どこまで我慢できるかな?」
上川が毒のある笑みを湛え、片足を上げた。


「んぅぐぅうううっ!!」
睾丸を潰れんばかりに踏まれるのは、生き地獄としか思えない激痛だった。
下半身を切り裂かれるような鋭い痛みが骨の髄まで染み渡り、俊は顔を真っ赤にして痙攣
する。
絶叫しなかったのは、こんな無様な姿を誰かに見られたくないという、プライドのせいだっ
ただろう。
「へぇ・・・頑張るね」
踏んでおきながら、上川がさも感心したように目を丸くした。
当の俊は潤んだ目を赤く腫らし、肩で呼吸している。
すっかり弱った表情の顔が、上川たちを見上げた。
2
「すみませんでした・・・勘弁してください・・・ホントに、すみませんでした・・・」
消え入りそうな声で繰言のように謝罪を繰り返す俊を、残酷な視線が嘲笑う。
「まだ元気あるじゃん。これじゃ終わりにはできないな」
やめてください、と言おうとした口から出たのは、またあの押し殺した悲鳴だった。
上川が再び睾丸を踏んだのだ。
「んぎぃいぃいいひぃいいいいいっ!!」
睾丸が平べったくひしゃげるくらいの圧力をかけながら、爪先をスライドさせて靴底全部
を使うほどに睾丸を転がす。
男の一番弱い部分に雷が落されたような、そんな痛みだった。
俊が口角に泡を溜め、目を見開いて痙攣する。
それでもまだどこかに残っていたプライドが、彼の絶叫を思い止まらせた。
「すっげ、ヘンな声」
俊を取り囲む連中が、この残酷な光景をさも面白いショーを眺めるように笑う。
「靴はいてても、生暖かいのがコロコロしてんのが分かるよ。ほら」
「い!ぃ!ぃ!ぎぃいい!!」
歯を食いしばり、脳天から足の先まで突き通す痛みに耐える俊を、上川は爪先の動き一つ
でコントロールする。
このリンチはいつ終わるのだろう。
早く終わってくれ。
俊の頭の中は、そのことだけで一杯だった。
「疲れたー」
やがて上川が足を離し、俊の硬直していた俊の体が弛緩する。
だが、俊の心は一時たりとも安心することはできなかった。
「どうする?マジで潰しちゃう?」
ギャラリーたちのこんな恐ろしい相談内容を聞いて、安穏としていられる人間などいはし
ないだろう。
しかし、激痛につぐ激痛で痛めつけられた体には、もう逃げる力など残っていなかった。
体を起こすのも困難なほど疲弊した俊は、羽交い絞めにしている大木に体重を預けてぐっ
たりと審判を待っている。
色白の肌が紅に色付くほど熱くなった体から立ち上る、汗混じりのシャンプーの匂いが大
木の鼻腔をくすぐった。

大木は自分の腕の中にある俊をしげしげと眺めていた。
いかにも生意気そうだった顔からは自信が消えうせ、怯えた哀れな表情だけがある。
薔薇色に染まった頬にかかる柔らかい茶髪とそこに続く細いうなじは、自分と同じ男には
まったく思えない。
唯一剥き出しにされている股間の肉が男の証明とも言えたが、色の薄い、先端がピンク色
をしている男根は、それすらも官能的な女陰の一部に見えた。
「女みてぇなツラしやがって・・・」
大木がそう呟き、俊の股間に手を伸ばす。
初めは上川たちと同じように、睾丸や陰茎をいたぶるつもりだった。
だが、すっかり萎れて縮こまった性器を手の中に握りこんだ瞬間、俊がぴくんと震えたこ
とが、大木の動きを止めさせた。
腕の中の獲物は、手で触られたことに緊張している。
大木は音を立てないように唾を飲み込むと、親指と人差し指で茎をしごきながら、残りの
三本の指でそっと睾丸を転がす。
散々リンチされて痛めつけられたそこは、いつも以上に敏感になって、俊に男の指に触れ
られるザワつく感触を伝える。
薬指の先が陰嚢の裏側の付け根を押した時、ツーンと甘い感覚が俊の下半身に生まれた。
「・・・ん・・・っ」
俊が小さく鼻を鳴らし、大木の手の中の肉が少しばかり硬さを持ち始める。
こいつは、俺の愛撫に感じている。
そう考えた瞬間、大木の頭に血が逆流した。
まだごちゃごちゃ何か言っている上川たちをよそに、今度は少し被っている皮を剥いてふっ
くらとしたカリをくすぐる。
「・・・・・・っ」
3
俊は声こそ出さなかったが、大木の股間に当たっている尻の肉をぴくぴくっと開閉させた。
陰茎はますます硬さを増し、腫れた睾丸がきゅうっと縮み上がる。
大木はすっかりその行為に夢中になり、普段自分がしているように、皮を使ってカリ首を
刺激する。
「ぅく・・・・ん・・・っ」
硬い靴底に擦られて傷だらけの肉は、僅かな刺激すらも皮膚全体を覆うような激しい感覚
に変換する。
むず痒いようなとろけそうなほど甘美な衝動が、弄られている肉の先端から袋の付け根ま
で、何度も走り抜ける。
自分の胸に密着した背中の早まる鼓動を感じ、大木は自分の股間までもが昂ぶるのを抑え
られなかった。

「なーにやってんスか、大木さん」
興奮して陰茎をしごくことに没頭している大木に、呆れ顔の上川が声をかけた。
「大木さんって、そっちのシュミもあったんスか?」
「馬鹿言うな」
さすがにばつの悪い大木が、睨みの効いた顔で上川を牽制する。
「こいつが・・・お前に踏まれて勃ったから・・・」
苦し紛れの言い訳だったが、その言葉は上川の興味を引いたようだった。
「へぇ・・・マジっすか?俊ちゃん、スゴいじゃん」
俊の股間の肉は大木の愛撫によってすっかり勃起し、確かに臍めがけて起立している。
上川は片足を突き出すと、ぴんと張った裏筋に爪先を押し当てた。
「踏まれるの、好きなんだ?驚いたな」
靴の先がちょうどカリ首に乗っており、上川がそれを小刻みに上下に動かす。
先ほどの凶悪な圧迫とは違う緩やかな刺激に、勃起した肉の内側に熱いものがこみ上げる。
「あく・・・っ」
くすぐったさと興奮によるモヤモヤした感覚の入り混じった昂ぶりが、俊の腰全体を熱く
包み込む。
「ほんとだ、感じてる」
その言葉に、ギャラリーたちがゲラゲラ笑った。
「へぇー。なるほどねぇ・・・」
上川は爪先の動きを止めずに、俊の表情を見ながら何かを考えているようだった。
その間も俊の性感はますます高ぶり、ずくん、ずくんと脈打ちながら全身に染み渡る。
「ぅうん・・・んっ・・・うぅ・・ふぅ・・・っ」
切ない吐息を漏らしながら、俊が背筋を反らせる。
今やこちらも完全勃起した大木の肉棒にぴったりと添っている俊の尻肉が、爪先の愛撫に
合わせて男根を挟んだまま開閉する。
爪先の動きに押し出されて小さく透明な雫がぷくりと鈴口に浮かんだ時、川上の動きが止
まった。
「決めた。お前、このまんまイったら、許してやるよ」


靴底が陰茎全体にぺたりと押し当てられ、そのまま上下左右に茎を転がすように動かされ
る。
靴底と下腹で程よく圧迫された肉が、コリコリとした刺激に蜜を零した。
時おりクイクイと爪先でカリ首を締められると、そのたびに総毛立つような甘美な悦びが
腰の奥底から湧き上がる。
「あ・・・ぁ・・・あ!・・・んふっ・・・ぁあ!」
4
クイックイッと緩急をつけて圧迫され、腰で煮え立つ快感が細波のように皮膚を這って全
身を覆う。
あまりの屈辱に初めは快感を堪えていた俊だったが、乳首が勃つほどに責められると、や
がて「射精したら解放される」という考えに傾いていった。
それに、冷たい視線を浴びながらの勃起は、眩暈がしそうなくらいの興奮を彼に与える。
「ぁあ・・・ぁ・・・っ」
掠れ気味の喘ぎ声が漏れ出す頃には、俊は自らもぞもぞと腰を動かし始めていた。
裏筋が万遍なく揉まれるように、恥骨を突き出す格好で尻を振る。
尻の割れ目に感じていた大木の怒張は股間をずらしたことで尾てい骨辺りに当たっていた
が、皮膚が薄い分だけズボンを通して伝わるいきり立った男根の湿気まで、はっきり感じ
取ることができた。
「ケツ振ってるぜ、こいつ」
ギャラリーの誰かの揶揄も、今ではより興奮を高めるスパイスに過ぎない。
ねっとりと甘い疼きが同心円を描きながら体の隅々まで広がり、惨めさと視姦されながら
汁を零す異常な昂ぶりと相俟って、これまでにない快感を俊に与える。
「あは・・・あぁぁ・・・あぅ!・・・ぁはあん・・・っ」
甘い泣き声に誘われて、大木が耳たぶを甘噛する。
「あ!・・・あぁ・・・ん・・・」
ビクッと大木の腕の中の身体が跳ね、まるで甘えるような鼻声で悶える。
いつしか俊は泣いていた。
「泣くほどイイらしいよ」
「あーあ、チンポも泣いてるよ。汁、ダラダラ」
「靴、汚れるな・・・お前、後で舐めて綺麗にしろよ」
その時、俊の身体が大きく反り返った。