1

ペットボトル

2
「確かに綺麗な身体、してるね。木村のヤツ、いい趣味してる」
俺は見知らぬ男の部屋で全裸になり、今日初めて会った相手に体を値踏みされていた。
男の名前は「大西」だと聞いている。下の名前は知らない。
三十代半ばの、精悍な顔つきの男だ。
Tシャツにジーンズというラフないでたちだが、立派なマンションに住んでいることから
相応の地位にいる人間だということだけは分かる。
革張りの立派なソファに腰掛ける姿も、若いのに隆とした迫力があった。
俺は「ご主人様」の命令で、彼の言うことを聞くように指示されている。
「武士だったな、名前。お前、木村なんかのどこがいいんだ?」
大西の質問に、俺はどう答えたらいいのか迷った。
どう答えれば失礼にならないのか、咄嗟に思い浮かばなかったから。
大西は俺の戸惑いをすぐに察知したようで、軽く肩をすくめて言った。
「まだまだ駆け出しってとこか。早くこういう関係に慣れないと、木村に捨てられるぞ」
最後の一言が、俺の心臓を串刺しにする。
強い鼓動が胸を打ち、本当に痛みすら感じた。
「ま、俺には関係ないけどな。こっち来て、俺の膝の上に座れよ」
大西は小さなやり取りの中で俺を試している、と思った。
わざと不安にさせ、俺の反応や受け答えを試しているのではないか。

大西の指示で、彼に背を向けて膝に乗る。
正面には鏡張りになったクロゼットの扉が並んでおり、大股を広げて男の膝に乗った卑猥
な自分の姿がよく見えた。
「半勃ちになってる。もう興奮してるんだ?いやらしいやつだな」
耳元で大西に囁かれ、吐息が耳から首筋を伝い、腰骨に至るまでがザワザワと粟立つ。
「綺麗なピンク色をしてるね」
背面から伸びてきた手が、まだ少し柔らかい陰茎を掴んで皮を剥く。
剥き出しになった亀頭を鈴口に沿って指先で撫でられ、ツーンと甘い衝動が恥骨の内側で
弾けた。
「ずいぶん感じやすいんだな。俺の手の中でピクピクしてる」
中指の腹が袋との付け根から雁首まで、猫の喉を撫で上げるみたいに動く。
じんわりとむず痒いような快感が生まれ、男の手に包まれている肉がじわじわと熱を帯び
て硬さを増す。
やがて指は袋をも包み込み、中の睾丸をこりこりと転がし始める。
「ぁく・・・・っ」
揉まれた陰嚢からピリっと電気が走り、堪えきれない声が出てしまった。
連続して俺を襲う痺れるような感覚に、下腹や背中の筋肉が細かく震える。
「ん?どうした?そんなに尻をパクパクさせて。感じてるのか?」
腿に乗っている俺の尻肉が緊張で開閉することを揶揄され、改めて自分の格好を自覚した。
すべてを彼に見られているという自覚が、俺の内側の火種に油を注ぐ。
「じゃ、これはどうだ?」
「ぁああああっ!!」
睾丸をぐいと揉まれて、袋に雷が落ちたような衝撃が走った。
「大声を出して、はしたないな。我慢しろ」
3
「ぅうぐっ・・・うぅ・・っ・・・んぅぐぅうううううっ!」
睾丸を揉み込む手の力を一切緩めないまま命令され、俺は両手で自分の口を覆った。
性器に落とされた雷が、波紋になって全身を覆う。
陰嚢どころか陰茎も乳首も、爪先から指先に至るまでの皮膚が痙攣している。
痛みとくすぐったさがごちゃまぜになった、激しい快感。
俺の全身は落雷に痺れて敏感に反応しながら、同時に外界から切り離される。
周囲が見えない。耳もよく聞こえない。
性器を乱暴に嬲られる自分だけが、ここにある。
そして電撃が走り回る表皮の内側、腰骨の中心奥深くにある性感帯がぐうっとせり上がる
感覚が来て、あまりの切なさに身をよじる。
「これだけ強くタマを揉まれて、よく我慢するね」
やっと開放された時にはもう、全身が冷や汗でしっとりと湿っていた。
全身の痺れはすぐに収まったが、逆に尻の中の性感帯は前にも増して疼いている。
「乱暴に扱われることに慣れてるんだ?」
今度は左の乳首を強くつねられた。
乳首から針を通されたような衝撃が貫き、俺は息を詰まらせる。
だがいつも通り痛みは一瞬にして去り、その後には暖かい甘い感覚がそこから広がった。
「あ・・・ぁ・・・っ」
ぷっくりと膨れた乳首を、指先で転がされる。
同時に陰茎をやわやわとしごかれると、さっきの強烈な睾丸いじめで敏感になった皮膚に
ゾクゾクする快感が這いまわる。
全身が熱くて、腰の内側から溶岩が溶け出てきそうだった。
俺の尻の中にある、いやらしい性感帯が、早く突いて欲しいと訴えているのだ。
やがて陰茎をしごく手が徐々に下へと移動し、会陰を撫で、その後ろの小さな窄まりに到
達した。
俺が貫いて欲しいと待ち望んでいる場所。
ご主人様に開発されたそこはいつも少しへこんでおり、軽く叩かれた震動だけでその先に
ある快感の源がジワリと疼く。
「かなり太いモノでも入るんだって?今まで、何を入れた?」
熱く湿った入り口を指の腹でさすられながらの質問に、ぶるりと背筋が震える。
「バイブが二本・・・はっ・・いります・・・っ」
「二本差しもOKなのか。それは楽しみだ」
「んぅあ・・・っ!」
濡れていない指が突き立てられ、入り口の皮膚を巻き込みながら侵入してくる異物の感覚
に、思わず悲鳴を上げてしまった。
必死に声を殺しながらも、指で乱暴に掻き回される感覚を悦ぶ俺がいた。


正面に天井が、上を向けばさっきの鏡が見える。
俺はソファの背もたれに尻をもたれさせ、まんぐり返しの格好にされた。
大西はソファの背面側に立っていて、俺の肛門や袋の裏、顔までが一列に並んだ様を視姦
している。
何もかもが彼の目の前に曝け出されていた。
「中、調べるよ」
大西の整った顔が静かに微笑んでいる。
オイルに浸された右手の指が徐々に近づき、開きっぱなしの谷間に触れる。
丸く輪を書くような指の動き。浸潤してくるオイルに、皺の一本一本が柔らかく緩む。
左手は片尻を掴み、親指で谷間を開いている。
薄目を開けた俺と大西の視線が合った瞬間、一度に二本の指が入ってきた。
「・・・・んぅ・・・・っ」
この程度の太さならどうと言うことはないが、腸内を探るような指の動きに背中の腰骨の
辺りがむずむずと疼く。
指先が探し物を探り当てた。
4
前立腺の辺りで指をくの字に曲げ、前方に向かってめくり上げるように突く。
陰茎をしごいてもらうよりも激しい悦びが、突かれている場所から勢い良く噴き出した。
ダイレクトに性感帯をいじめられ、尻も陰茎も、陰部ごと爆発しそうな快感が吹き荒れる。
「あぁんぅんんっ!んぅ!うっんぅううう!!」
「尻でイけるというのは、本当みたいだな。さっきよりも硬く勃起している」
きゅうっと切なさが湧いて、俺は指を締め付けた。
直腸が指を咥えて、締めた分だけはっきりと指の曲げ具合や動きを前立腺に伝える。
「ぁ・・・ああぁ・・ぁ・・・っ!」
三本、四本と指が増やされ、拳の辺りまで入り込んだそれで、激しく中を掻き混ぜられた。
一突きごとに先走りがどっと溢れ出し、腹を伝って脇腹まで零れ落ちる。
「はぁぁ・・・ひぃっ・・あぅん・・・っ」
手首が回転し、関節がゴリゴリと前立腺を叩く。
かと思うと拳そのものを叩き込む勢いでのピストンが、前立腺を痛いくらいに連打する。
「ああぁああーーーっ!!」
「どうだ?こんなに激しくされたんじゃ、かえってイけないだろう」
ご主人様とよく似た視線が、俺をさらに燃え立たせる。
他人の片腕一つで性的に蹂躙される惨めさは、俺の心の深い部分にある悦びをより大きく
膨らませていた。
もっと、もっと、めちゃめちゃにして欲しい・・・!

「こんなものじゃ、物足りないだろう」
唐突に指が引き抜かれ、まだ閉まり切らない穴に風が吹き込む。
「ほら、こんなに穴をパクパクさせて。本当にいやらしい身体だな、お前は」
煽るだけ煽られて焦れた体は、大西の言葉通り疼きを隠そうともせずに肛門をひくつかせ
て男を誘う。
紅い肉の果てにある性感帯が、早く突き上げて欲しいとせがんでいた。
「どうして欲しい?」
優しい口調と、射抜くような視線。
「俺のいやらしいケツマンに・・・ぶちこんでください・・・っ」
「いいよ。これをあげよう」
極上の微笑みと共に見せられたのは、空の500mlペットボトルだった。
すでにオイルに濡れた底面が、レンズのように光っている。
直径7cm近くもある筒に、俺は本気で恐怖した。
本当に、壊される!
「そんな、無理です・・・っ・・・お願いです、やめてください!」
「お前に意見する権利があると思うな」
冷ややかな、しかし奥底にギラギラとした欲望を湛えた瞳が、俺から抵抗する意思を奪う。
そうだ。俺はご主人様の所有物でしかない。
言う通りに受け入れる以外に、すべきことなど無いのだ。

かなり開発されているとは言え、これほどの塊を一度に飲み込むのは初めてで、俺は努め
て括約筋の力を抜きながら挿入を待つ。
ぺたりと押し当てられたペットボトルの底は冷たくて、指の時とは違って嫌でも緊張して
しまう。
挿入角度を見ながら真剣な表情の彼を見て、少し安心した。
この人は乱暴に見える行動を取りながら、実際は俺の体をちゃんと考えていてくれる。
目を瞑って軽く深呼吸し、彼が入れやすいように自分で両足を抱えて大きく開いた。
俺を、あなたの好きなようにしてください。
5
「んんぅぅぁあああぁあぁあああああああーーーっ!!」
それは挿入などと言う生易しい感覚ではなく、丸太で体を串刺しにされるような激しさだっ
た。
ほんの数ミリ進んだだけで、俺のすべてが壊されるような。
メリメリと肉を広げて押し進むぬるりとしたプラスチックの塊は、やがて前立腺の周囲に
まで到達し・・・・
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
俺は大きく息を吸い込みながら吼えた。
目の前が真っ白になり、じくじくと疼いていた性感帯がものすごい圧力で圧迫されて汁を
噴き出す。
俺はだらだらと零すように射精していた。
「おや、イったのか。こちらからは中身が丸見えだよ」
ペットボトルの口から内壁の動きを覗き込まれ、さらにはペットボトルを揺すられる。
「ぁあああぁああーーーーーーーーーーーーーっ!!」
もう、何も考えられない。
俺は性感帯だけの肉塊になって、拡張される悦びの海に自分を沈めた。