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8-2狩り獲られた蕾の薔薇

”誰かを誘ってるんだ・・・?”
「ちがっ!ぅんっ・・・!ちがぁ・・・」
”海の時だってそうだった。覗きがいるって解ってて「見てぇ?いっぱい見てぇ・・・?」って言ってた・・・”
「ちがうぅぅ・・・っ!」
  リョウ君の声は、僕のカラダに語りかける。
  カラダは思い出す。あの海の日のことを。知らない人の前でリョウ君と愛し合ったことを。
  このもどかしさに逆らい始めてるんだ。おしりが甘えだす。今は電波の届くことのないバイブレーターに。”ぶら”の上から、腕が胸をさすってる。革にラッピングされた胸元にただようピンクのモヤモヤ。
  僕のカラダは”キモチイイ”には足りなすぎるくすぐったさをかき集めてる。
「りょ・・・くん・・・リョウくッ、んんッ、」
  だいすきな人の名前、つぶやく。
  だいすきな人のためだけに、こんな事してる。だいすきな人のせいでカラダがドキドキしてて、ほてってる。だいすきな人だけを、求めてる。
  さっきから目かくしの裏では、公園の外灯の下、女王様なカッコでいやらしくおどりくねる僕の姿があった。それはリョウ君の言う通り、誰か知らない人をさそってる、いますぐ僕をおそってほしいって、せがんでる、そんな風にしか思えないもので。
「はぁっ、はぁぁ・・・りょおくぅ・・・ん・・・」
  だから、そうじゃないんだ、ってわかってほしくって・・・
「おッ、お、んッ、おねがいっ・・・」
”ん・・・?”
「おねがい、帰ってきてぇ・・・」
  こんなのも、えっちって呼べるのかな・・・
  スニーカーはもう、つま先立ちになってる。カラダはゲンカイ近くまで高まっていた。
  リョウ君はそこにいないのに。リョウ君と触れ合ってもいないのに。
「外でも、いいから・・・僕、ガマンするからぁ・・・」
  えっち、っていう言葉の意味を都合のいいように広げて、曲げてカイシャクしようとする僕のカラダ。
「だから、帰ってきて・・・?僕にさわって・・・?僕のなかにぃ・・・きてぇ・・・」
  さっきはじけそびれたせーし達がもうすぐそこまで来て僕をせかしてる。きっと、カラダのどこかに触れられただけで僕、イっちゃう・・・!
「りょおくぅんん・・・ッ」
  せめて、肌で感じていたい。息づかいを。熱を。だれかに見つけられる前に。だれかにうばわれてしまう前に・・・
”・・・マサキ、”
「くぅ・・・んッ・・・?」
”お前の涙声聞いてたらさ・・・”
「え・・・?」
”すっげ・・・オレのチンポ、めちゃくちゃボッキしてるよ・・・”
  「オレのチンポ」・・・「ボッキ」・・・
  びくんッ!
「ふあッ・・・?あ、や・・・ッ?」
  その瞬間、小さなロシュツキョウの映像がすみへと追われる。
  代わりに現れたのは、リョウくんの、バットみたいな・・・
2
「あ、あ、あれッ、ぃやぁッ・・・!」
  最初にあふれ出たのは涙だった。
  熱くって、たくましいおちんちんが、黒の世界をぬりつぶした。僕の意識の中にボッキが入ってくる。うめつくす。ごりごり。まぶたのうらで僕は、ヘンタイなカッコした僕は、犯される・・・っ!
「あ、こんなっ、はッ、はッ、うそぉっ・・・!」
”ん、どした?マサキ?”
「やっ、あ、のっ、聞かないでっ・・・うッ、く・・・!」
”・・・あー(解)・・・ふふっ・・・”
「いやぁ、っ、声っ、やめてぇ、ッ・・・」
  くる。きちゃう。わかる。止められない。イメージと、リョウくんの声。僕のおちんちんくすぐってる。もうそこまできてる。上がってきちゃうぅぅ・・・ッ
「ばかっ・・・!あんッ・・・!リョウくんばかぁッ・・・!」」
  じゅわり。
「んっ・・・!ん、く、くぅぅ・・・!もぉ・・・もう間に合わないよぉ・・・ッ!」
  びくっ、びくっ、タマタマの奥で、脈打つ感覚。セーエキ、カラダの外へ押し出そうとするうごめき。
  僕は必死になってそれを押さえこむ。奥歯、くちびる、思いっきりかみしめて、全身の力をカラダの真ん中に集めて、
”・・・イけよ。”
「やッ?」
  ・・・許しの言葉が、僕のカラダのパスワードを解いた。
  あんなに必死に加えてたはずの、力。いまはもう、カラダのどこにも残ってないのに気づいた。せき止めるものの無くなったおちんちんは、せーしたちのなすがままに・・・
  びゅ!!
「やんッ!!」
  びゅ!びゅくっ!びゅる・びゅる・びゅる!
「アン、あはッん!や、ウソ、ウソ、ウソ、」
  たんっ、ぱたんっ、スニーカーがベンチの上で飛びはねた。チャリんッ、チャリんッ、くさりがベンチを打ち鳴らしてた。
  びゅるくんっ・・・!
  すごいっ、すごく、すごく、キモチイイっ・・・
  たくさんのせーしが、ものすごいスピードで、おちんちんの内側をくすぐって、ナメて、コスりあげていた。
  なすがまま。そしてそれは、僕の理性まで・・・
「あぁ!はあっ!はうッ、ん、あ、はぁぁ・・・っ!」
  ぴゅっ。びる。びる。じわり・・・じわり・・・
”マサキ・・・?マサキー?”
「はぁ・・・はぁ・・・あッは、は、ぁっ・・・」
”おーい、マサキー・・・”
  くるしい・・・呼吸がいつまでも落ち着かない。それにケーレンもおさまらない。リョウ君の声は聞こえてる。でも、答えられない・・・
”しょーがないなー・・・”――――ブツッ。
「はー・・・はー・・・りょっ、くんっ、りょ・・・はーっ・・・は・・・ぁ・・・」
  がくんッ、がくんッ、エプロンをはね上げながら、腰があばれていた。もっともっと、せーしを出して遠くへ飛ばしたがってるみたいに。
  でもそのうち両ヒザが笑い始めて、どさっ・・・僕は再び、ベンチにおしりをつけてしまう。
  電話、切れた・・・リョウくんどうしたの・・・?僕どうなるの・・・?帰ってきて・・・はやく帰ってきて・・・
  色んなことが頭をよぎった。でもゆるやかに平静を取りもどしていくカラダに連れられて、意識もだんだん、あわく、なっていく・・・
「・・・サキ・・・」
  声、だ・・・聞こえる・・・電話じゃなく、耳もとでじゃなく、生の声、が・・・
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「マサキ・・・?」
「ん、ふぇ・・・」
「寝てたか・・・?ふふ、起こして悪かったかな・・・」
「あ、あぅ、リョウくん?リョウ君なの・・・?そこにいるの・・・?」
「いい子にしてたみたいだな・・・」
  低く落ち着いた声。リョウ君だ・・・帰ってきてくれたんだ・・・
  あいかわらずのカッコのままベンチに座ってた僕。エプロンの上でぎゅっとにぎりしめてた両手から、大きな手がケータイを持っていった。
  チャリッ。僕の両手が、にぎりしめたくってその大きな手を追う。
  ちゅっ、
「りょ、ふ、む・・・」
  でもその前に、くらやみから現れたくちびるがそっと触れる。僕のくちびるは自然とそのとびらを開ける。舌を、呼びこむ。舌に、じゃれつく。
  ジャリッ、ガチャ。抱きつきたい。けどなんでだろ、うでを広げることできない。あ、手錠かけられてるんだっけ・・・
  あたふたしてる僕の気持ちを見すかしたように、長い両腕が僕をつつみこんでくれる。ひとつの手はずっとむきだしの肩をかかえる。もうひとつは僕の髪をなでて、ゆびをからめて。
  くちゅ、くちゅっ。こぷ。こ、ちゅ・・・
  リョウ君だ・・・リョウくんがすぐとなりにいる・・・
  くらやみにむかって首を伸ばして、身を乗り出して、おねだり。もっとでぃーぷにキスしたい。リョウ君と触れあってたい・・・
  ちゅ、ぱっ・・・
「あン・・・」
「で・・・?想像しただけでイッたの・・・?」
  いじわるなくちびるは、まだ甘えたがるくちびるをふりきって、耳もとへ。
  エプロン、めくられるのわかる。おちんちんはずっと真上を向いてたから、エプロンの裏側にはベッタリと・・・
「ははっ、すごい量じゃん。ロケット花火乱れ打ちした見たくなってる」
「くぅ・・・うん・・・」
「誰か来てたの・・・?」
「えっ、」
「こんな普通じゃないもん、誰かにしごいてもらってたんじゃない?」
「ちっ、ちがうっ。ちがうよぉ・・・」
  耳でくちびるの動きを感じる。声が、ケータイのときよりもカラダに深くしみこんでくる。細胞のひとつひとつを震わせる。
「まー嬉しいんだか、呆れちまうって言うか・・・」
「あ、」
  両手をつかまれて、おしつけられてる・・・これって・・・
「これ・・・思い浮かべただけで・・・イったんだ・・・?」
「あ、あぁ・・・こ、れぇ・・・」
  ちゃんとさわって、なでてあげたい。そう思わずにはいられないくらい、手の甲や指にグリグリこすりつけられてるカンショクは・・・
「すご、ぉ・・・」
「頭の中で、こうなってた・・・?」
「う・ん・・・」
「マサキの頭の中、ボッキチンポでいっぱいだったんだ・・・?」
「うぅ・・・もぉぉぉ・・・」
  まだ、いじわるつづけるの・・・?もう、ゲンカイだよぉ・・・たまんないよぉ・・・
「これ・・・しゃぶって、あげる・・・」
「んー?」
「ふぇら・・・ふぇっ、ふぇらっ、してあげる・・・」
  リョウ君はこれを待ってるんだ。
  いま、僕から進んでえっちするのを望むこと。
  そうしないかぎり、何時間でもじらすつもりなんだ。きっと。
「・・・ここで?」
「・・・うん。こっ、ここで、してあげる・・・僕の口で、いっぱいキモチヨクしてあげる。リョウ君もシャセイ、たっぷりさせてあげる。」
  勇気をふりしぼって言葉をつなぐ。ユウワク、する。
  自分だけはずかしくて、自分だけイヤラシイの、不公平だから。
「しゃぶりたいの。いいでしょ、ぉ・・・?・・・しゃぶらせてぇ・・・?」
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「ふーん・・・じゃあ、してもらおうかな・・・」
「うんっ」
「”あーん”して、待ってて。」
「うん・・・あー・・・」
  言われるまま、僕は口を大きく開けた。無意識にあごが前を向く。リョウ君はベンチから立ち上がったみたいだ。
「・・・ぁぁあぁぁ・・・」
  じぃぃぃ・・・ジッパーが下ろされてる。
  ごそ。ごそ・・・いま、取り出してる、の・・・?どこ・・・?コチコチにカタイの、もう出てるの?
  口を開けたまま、音がする方に少しキョロキョロしてしまう。待ちきれないよ・・・はやく食べたいよぉ・・・
「・・・?」
「・・・なーんか、すごく嬉しそうなんだけど」
「んくっ、んふふ。だってぇ、」
「目隠ししてても口開けてても、表情が笑ってるもん」
「やぁん、もう・・・はやくぅ・・・あぁー・・・ぁん・・・」
  だって、ほしいんだもん・・・ニオイ、味、今すぐ確かめたいんだもん・・・
「ぁ、」
  指がうしろ髪に触れた。静かに顔が、手前へとみちびかれる。
「ほら。もうすぐそばにあるから・・・口、近づけて・・・」
  前のめりになる上半身。それについてくようにおしりやスニーカーも位置を移し始める。
  指は髪をなでながらゆっくりと引き寄せていく。ほのかに、汗とおしっこの香りが立ちのぼるところへと。
「あー・・・」
  ダメ・・・鼻のおくがツン・・・として、僕まではちきれそう。ちっちゃいパンツの中でケーレンが止まんない。
  あと何センチ。あと、何ミリ。
  もう外とか、女王サマとか、どーでもいいや・・・口いっぱいにリョウ君を感じるんだ。リョウ君もいっしょに、キモチヨクなるんだ・・・
「ぁぁ・・・む。」
  最後は、僕からかぶりついた。
  さっきまでまぶたの裏にあったぶっとくて、たくましいの。いま、口の中をうめつくしてる・・・
  ・・・えっ・・・
「もっと。もっと奥まで咥えて」
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「ん・ん・んー・・・」
  リョウ君の命令。
  うん、わかってるよ?のどについちゃうくらいに飲みこんであげるよ?おちんちんぜんぶ、僕のヨダレであっためてあげるよ・・・?
「もっと・・・根元まで・・・」
  わかってる、わかってるけど・・・
「お、も・・・ぉこっ・・・」
  何が起こったんだろう。頭の中がパニックしてる。
  身体側がアラームを鳴らす。なみだがあふれてくる感覚。舌のつけねがつっちゃいそうな感覚。じゃらっ、じゃらっ、両手が迷ってる。ただ目の前の身体を突き放したい。でもなんでそんなことしなくちゃいけない?
  舌、動かさなきゃ・・・動かさなきゃ、
  のぢゅ。
「あ・・・ご、ッ・・・!」
「・・・ん?もう奥についちゃった?」
  ついてる・・・舌をすべらそうとした瞬間だった。最後のひとおし。もうその先は”口の中”じゃない。すきまもなくなってる。舌、うごかせない、っ。
  でもなんで、もしかして、まだぜんぶ入ってない・・・?
「ぐっ・・・ぉっ・・・む・・・?む・・・?」
「どした?ん・・・?いつもみたいにしてくれよ。吸って、舌でくすぐって、ヨダレでくちゅくちゅ、うがいするみたいに・・・」
  うん。だいじょうぶ。言われなくたって最初からそうするつもり。リョウくん言ってくれたから。夏休みに入ってから僕、どんどん上手くなってきてるよって。
「んぐ。こっ・・・!ん・・・?もっ・・・!くぅぅ・・・?」
  でもこれじゃなんにもできないよ・・・?少し引きぬいて・・・?手を、ほどいて・・・?
  なんかまだ、リョウくんが遠くいる感じがする。声はしてるのに。何より、顔にリョウ君の身体が触れてない。
  ぐ。ぐい。にぢゅ。ぐい。
「おッ!ゲむっ。こっ、おごぉ・・・ッ!」
  やッダメっ、頭動かさないでっ!髪の毛とベルトをいっしょにつかんでる。その”前うしろ”は大きくない、はげしくないけど確実に僕の口の中をえぐり、ほじくりかえす。それだけじゃない。びくん。びくん。脈打ってるんだ。それが上あごをズロズロにしてるんだ。
  ひさしぶりだ・・・初めてふぇらちおした時みたいに、口中がすっぱいよだれでいっぱいだ・・・ニオイ、味・・・わかる。見えなくたってほんとはわかってるんだ。
  いつもとちがうって・・・!
「んー・・・ふーっ、ふーっ、ふーっ・・・んんぐぅ・・・」
「・・・目隠ししてるとやり辛いか?」
  ベルトが外される感覚。
「んっ、んーん、」
  こんどは頭の中がアラームを鳴らす。やだ・・・うそだ・・・やだ・・・
「今外すから・・・」
「んー・・・っ!」
  ・・・外灯の光が飛びこんできた。
  けして強くはない明かり。でも暗やみになれた目にはしみるみたいにまぶしくて。
  パチパチ、まばたき。違和感を取りのぞこうする無意識のしぐさ。
  白いモヤモヤが晴れていく・・・その向こうにいるのは・・・
  ・・・リョウ君じゃ、ない・・・っ!