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8-3狩り獲られた蕾の薔薇

 けして強くはない外灯の明かり。
  でも目の前の人がリョウ君じゃないって知るにはじゅうぶんだった。
  だってこの人、背広姿だ・・・
「初めまして。マサキ君」
「んっ・・・ん・・・」
「ごめんね。驚かせちゃって」
  いやだっ・・・さわらないで・・・顔、上に向けないで・・・見ないで・・・っ
「でも憶えてるかな。”初めまして”じゃないこと・・・」
「ふっ・・・ふ、く、っ、」
「お散歩中のマサキ君、」
「・・・っ・・・!」
「リョウと同じ意見だった。顔も、鳴き声も、すごく可愛かった・・・」
  ちゃりっ・・・ちゃりっ・・・がく、がくがくっ、がくがくがくっ・・・!
  さむい・・・っ・・・手足がふるえる、こわれてくっ・・・さむい、せなかさむいっ、おなかも冷たいっ・・・!
「あっごめん、泣かせちゃったね・・・でも泣き顔のマサキ君も可愛いね・・・」
「うっぐ、く、うぅー・・・!」
  何も見えない。ただ涙がこぼれだして、それを知らない人の指がすくいとってくのはわかって。やめて。さわらないで、
「あったかいよ?」
「んんぐっ・・・!」
  動く。のどを裂き広げるように奥の方で上下。ぴくん。ぴくん。ぴくん。あやまったくせに。さっきごめんと言ってたくせに。
「口の中小さくて・・・でもッ、」
「ぐ!・・・くぅ、く、ぉぐぅっ・・・!」
「あったかくて柔らかいッ・・・マサキッ・・・」
「ふ、ぐぅぅ・・・!」
  いる。リョウ君じゃない人の、ちんちん、いる・・・!
「マサキ・・・はぁッ、マサキは、偉い子だね・・・」
  髪、なでないで・・・名前呼ばないで・・・
「ちゃんと吐き出さずにいてくれて・・・リョウの言いつけを守れる偉い子だよ・・・」
  ちがう。吐き出したい。でもなんか、体動かない。ショックで、なんか、どうしていいかわかんない・・・
「それとも、僕のコレも気に入ってくれたのかな?」
「うっ、うーうぅぅぅ・・・」
「マサキ。何固まってんだ?いつもみたいにしてくれって言っただろ?」
「うっ、う、うーくーぅ、っ、」
  リョウくんっ、リョウ君もいる。となりに。
  でもどうして助けてくれないの?
  手を伸ばしても押さえつけられる。声は変わらずやさしいのに。肩を抱いてくれるけど、それは僕を逃がさないため。体はますます固まってしまう。
  僕、目の前で知らない人のをしゃぶらされてるんだよ・・・?いいの・・・?リョウ君は、それで・・・
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「せっかく上手になってきたんだから、佐野さんにもマサキの頑張り、教えてあげて・・・?」
「まぁまぁリョウ、無理にとは言わないよ。本気で泣きべそだしさ。」
「でもここまで深く咥えこんだんだから、わかるよな?途中で止めちゃダメだろ?ん?マサキ?」
  ときおり、ほっぺに浮かぶちんちんのカゲ。リョウ君の指先がもてあそんでいた。
  僕の頭の上で交わされる、僕をどうするかの相談・・・
「じゃあこれなら少しは気分でるかな?」
  カチ・・・
  うゆん、
「んッ!?」
  うゆん、うゆん、うゆん、うゆん、
「こっちのモードの方が好きだったんだよね?」
「うンッ!んん、んん、んん、んぅンッ・・・!?」
  なんで?だってリョウ君の両手は僕に触れてるのにっ・・・
「やっぱり気付いてなかったんだね・・・おもちゃのリモコンはずっと僕が持ってたんだ・・・」
「んく、んふぇ、ふくぇ・・・っ?」
「歩道ですれ違った時もたまらなかった。自分の操作と、キミの全身の表情がはっきりとシンクロしていたから・・・」
  う・・・うそだ・・・
「パンツの中でこんな風にはちきれそうだった。バイブが感じてるキミの温もり、キミの締め付けが伝わってくるみたいだった・・・」
  うそだ・・・うそだ・・・っ
「あの時、キミのお尻を犯したのは僕だった。」
  うゆん、うゆん、うゆん、うゆん・・・
「んッ・・・ん・ん・ん・ん、」
「僕たちが二人で感じ合うのは、これが二度目だね・・・」
  うそだ・・・っ!
「・・・いや、それも正しくはないか・・・僕待ちきれなかったんだ。だから、キミが恥ずかしい格好でベンチに座ってる間僕はずっと、キミの目の前で自分自身を慰めていたんだ・・・」
「ふ、ぐ、ぅっ・・・?」
「あと少しで触れそうなくらい近くで僕はしてたのに、キミはリョウとのやり取りに夢中だったね・・・何度も危ない場面があったよ。照れたり、ふくれたり、甘えたり・・・挙句、腰を振って僕を挑発までしてきて・・・だから最後は跪いて、キミの可憐な射精を見つめながら、僕も同時に・・・」
「ん・・・んん・・・」
  ぶるっ、ぶるる・・・っ
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  ちがう、そんなのウソだっ、そんなのいやだ・・・僕は・・・リョウ君のものなんだ・・・リョウ君だけのものなんだ・・・っ!
  うゆんっ。うゆうゆうゆゆんっ。
「んッ、んぉンッ!むぁぅんッ!」
「あぁ・・・!キミの鳴き声が、当たる・・・ッ!マサキ・・・マ、サキッ・・・!」
  いやっ、これダメッ!カラダが動いちゃう。クネクネ、しちゃう・・・!
「その気になってきたの?アタマ、動き始めたよ?マ・サ・キ?」
  リョウ君ちがうのっ、ばいぶがキモチイイの、いやだけど感じちゃうの、だからなの・・・ぉッ!
「お尻イイの?マサキ?僕もキモチイイよ?嬉しいよッ?マサキと一緒に感じてるッ・・・!」
  うゆゆんっ、うゆうゆうゆんっ!
「ぷぁ、ぷむ、む、むぁぁンッ!」
  ダメ、オシリがダメ、オシリ、とける・・・!カラダとける・・・!
  ぐびゅり。
「くッ!もぅ・・・ッ!」
  舌の根に生じた、知らない味。知らないニオイ・・・
「ぐう!かはぁっ!」
  胃がそれを拒否した。必死で首をふった。リョウ君の腕も夢中でふりほどいた。目の前の誰かを突き飛ばした。
  飲みたくないっ、ぜったい飲みたくない・・・ッ!
「ほら、キチンと受け止めなきゃ、」
「やだっ、いやっなんでっ、やだやだっ、」
  顔色も変えずリョウくんがあばれる僕を押さえつける。
「はぁッ、逃げちゃダメだよ、顔にかけるよ?マサキの顔に、僕のザーメンっ、かけるからねッ?」
  上から伸びてきたのも合わせて四つの手が、僕の体を、頭を押さえつける。グッと上を向かされる。
  もがいた。もがいたんだけど、僕の力じゃもう、どうしようもなかった・・・
「ザーメン顔に、ざッ、ああ!!」
  びゅる!!
「やぷ・・・!」
「あ!あ!あ!」
  びゅくん!びゅくん!びゅくん!
「や!ぷゃ!やッいやっ、やめ、やだ、ぷぁ、いやぁぁ・・・っ」
  下くちびるに当てられた、さきっぽ。そのさきっぽから打ち出されていた。生ぬるいのが。
  そのたびに僕が声をあげるのじゃましながら、断続的に飛び出してくる。
「おッ、かけてるっ、おぅッ、かけてるよ?キミのッ!綺麗な顔にッ!ザーメンかけてるよッ・・・!」
  顔の上にラインができてくのが、わかった。
  ひとつは右のほおをこえてまぶたをふさいで。
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 ひとつは鼻のすぐ左をぬけておでこまで。
「マサキッ!」
  僕がもがいた瞬間には耳の穴まで。高くジャンプして前髪に降りかかるものまで。
「ああマサキッ・・・!マサキぃ・・・ッ!」
  入りこんでくるイカみたいなニオイ。おしっこのニオイ。そしておちんちんの内側の温度を知らせる、熱。
「はぁっ!はッ、ごめんね?ごめんね、たっぷり・・・!たっぷり、キミのッ、感じてる時のお顔っ、汚しちゃったよ・・・ッ、」
「・・・うッ・・・う、ぅッ・・・ウんッ・・・」
  ・・・もう僕は、抵抗しなかった。
  ただただ、ボウゼンとしていて・・・この受け付けないニオイと汗にまみれながら・・・それでも、オシリの中でバイブはまだうねりまわってて・・・甘ったるいため息をもらしてしまう自分が、情けなくって・・・
「あー・・・あ、ちゃんと飲んであげなきゃ・・・いつも俺にはそうしてくれてるだろ・・・?」
「はー、はー、はは・・・まだ出てきてるよ・・・」
  もうリョウ君の声も、背広の人の声も、聞こえない・・・
「最後の最後まで・・・」
  飛び切れずおちんちんにまとわりついたせーしを、僕のほおに、あごに、なすりつけていた。
「ほらマサキ・・・キレイにしてね・・・」
  ため息の止まらない僕のくちびるに、ねじこんでいた。腰をゆっくりと動かして、舌でそのぬめりをふき取っていた。
「ん、ぅんッ・・・ぅぅんッ・・・」
  ちゅぷ・・・ちゅぽ・・・くちゅる・・・
  しばらくの間、僕は僕に戻れないでいた。ただの”女王サマ人形”と、化していた・・・