霧隠才蔵、貴方に宛てます。
・貴方は私の御守り役
・女装、城下町
・石切
以上の言葉に見憶えの有る才蔵、貴方だけ残って読んでいきなさい。…他の方は申し訳有りませんが、此処で御引き取り下さいね。
さて。
此れが確かに貴方の目へ触れて居るか否か、私には解りませんが。届いていると想定して書かせて頂きます。
貴方の姿が消え幾久しく、彼方へ立ち寄る事も無くなり大分月日が過ぎました。
待てど暮らせど、貴方は現れない。御上は新しい御守り役を雇うし…――私の回りは、変わって仕舞った。
でもね、才蔵。
ぼんやりと、庭を眺めた時
夜の帷が落ちた、暗がりの中で、
時々貴方を思い出したりするんですよ。
何故居なくなった、とか。そう云った事を問うつもりは有りません。――あ、いや…教えて貰えるのであれば訊きます、はい。
ただ、貴方が此れを見る事が有るなら。私に逢いに来、…て、下さい。声だけでも結構ですが。
兎に角、以上です。
…暫く待っていますからね。