蛇の目傘と金平糖
──皐月も、末。
陽射しを避けては、冷を求めて木陰に腰を落とす毎日です。知らぬ間に、彼の場も色を変へて仕舞ひました。
貴方は、如何御過ごしでせう。
彼の森を訪れる度に、空洞を覗ひて仕舞ふわたしを、愚かな娘と嘲ふでせうか。
縁が解けた彼の日から、早半年。紬の事、貴方の事。こつそり胸に仕舞つてゐたけれど、今日になつて溢れ出た。逢ひたい、です。
わたしの名と、奇妙な巡り合わせ。貴方の名を残さずとも、記憶の一致には十分でせう。
解けた侭を望むなら、だうぞ流して。若し、わたしの我儘を聞き入れてくれるのなら。彼の空洞に、文が欲しひわ。
新緑の候、
瞼の裏に遠き日々を想ひ描いて。
──だうか、まう一度。
貴方と景色を重ねられたら。
藤
陽射しを避けては、冷を求めて木陰に腰を落とす毎日です。知らぬ間に、彼の場も色を変へて仕舞ひました。
貴方は、如何御過ごしでせう。
彼の森を訪れる度に、空洞を覗ひて仕舞ふわたしを、愚かな娘と嘲ふでせうか。
縁が解けた彼の日から、早半年。紬の事、貴方の事。こつそり胸に仕舞つてゐたけれど、今日になつて溢れ出た。逢ひたい、です。
わたしの名と、奇妙な巡り合わせ。貴方の名を残さずとも、記憶の一致には十分でせう。
解けた侭を望むなら、だうぞ流して。若し、わたしの我儘を聞き入れてくれるのなら。彼の空洞に、文が欲しひわ。
新緑の候、
瞼の裏に遠き日々を想ひ描いて。
──だうか、まう一度。
貴方と景色を重ねられたら。
藤