百鬼夜行の総大将様。

この題名で見てくださったという事は…貴方は私の探している妖様でしょうか。もしお心当たりのある妖様がいらっしゃいましたら、以下の文に目を通していただけると嬉しゅうございます。まずは二、三鍵を挙げておきますね。


──鍵─────────

一、妖に乗り夜空を散歩
二、手紙での再募集
三、相も変わらず忙しい

────────────


…こんなところでしょうか。私の探している妖様でしたら、一と二だけでも十分に分かっていただけるかと思います。

何も告げずにお姿を消したものですから…探してはいけないのだろうと今まで我慢しておりました。でも、妖様がお言葉を残してくださった日より想いは募る一方で…勝手と解りつつもこうして張紙をさせていただく事にしました。何時かまたと、偶然に賭けてみるのも一興だったのですが…何だかじっとはしていられなくて。

妖様がお忙しい事は重々承知しております。ですから、仮に妖様がこの張紙を見たとしてもお言葉を残してほしい等とは申しません。これは…私の自己満足なんです。こうしておけば、何時かまた逢えるかもしれないという淡い期待を持ち続ける事ができますから……なんて、可笑しいでしょうか。もちろん、妖様さえ宜しければお手紙を送ってくださると嬉しいですっ!


…あ。えっと…なんだか長くなってしまいましたね、ごめんなさい。それでは…何時かまた、妖様とお逢いできる日がくる事を願っております。できる事ならばこの張紙が貴方様の目に留まりますように──…。
やれやれ…。ここまで一途に想われて動かねぇ奴ァ…任侠者以前に男ですらねえよな?
ったく、出入りほっぽりだして思わず駆け付けちまったじゃねぇか。


記憶はおぼろげじゃがまずはワシからも鍵を。

一、あんたの募集にワシが応募
二、やり取り最後の場面は屋敷を出た所。

これくらいか。――‥なぁ珱姫、鍵を見りゃわかるがワシはもうどんな言葉を紡ぎあったかすら覚えておらん。更に言うならこの世界から長い間離れちまってたから、以前のワシのように振る舞えかどうかも分からん有り様じゃ。
そして返事も相変わらず斑だろうし、おまけにろるとやらも怪しいもんだ…。もともと完は得意なほうじゃなかったんだが、あまりにあんたが魅力的――‥いやそれはおいとこう。

ともかく、こんな悪条件満載だがそれでも…そんなワシでもいいのか?

もしいいというのなら手紙をくれ。無理だと思ったなら…削除してくれりゃいいさ。

ワシも…ワシとて、あんたを忘れた日はなかった。色々な思い出が薄れ行く記憶の中でも、愛らしい仕草と美しい表情だけは…未だに焼き付いて離れんのだ。
遅くなってしまいましたが先日お手紙を送らせていただきましたので、念のためこちらにその旨を記しておきますね。もし届いていないようでしたら一言仰ってください。

──それでは…お待ちしております。