12 無名さん
(あっという間に半分近く飲み切ったカフェオレに挿さったストローの先はぺしゃんこに潰れていて。というのも、ストローの先を噛んでしまうという彼女の癖のひとつの表れであり。普段であればこういった一人で過ごす時間は、徐に携帯電話を取り出しひたすら弄っているのだが、今回に限ってそれをしないのは徐々に暗くなっていく周りの様子を見つめていたくなったためであろう。カフェオレによって喉の渇きが潤されつつあることもあり、いつもより少し口元を綻ばせながら佇んでいたその矢先、突然目の前に現れた人影。元々人通りも少なく、自身に話しかけてくるような人物がここを通るだなんて考えもしていなかったため、相手を見上げるその表情は先程とは一転少し驚いたようなものになり。しかしそれがクラスメイトであると分かれば普段通りに戻り、矢継ぎ早に飛び出る質問に対し視線を軽く逸らしながらぽつぽつと応答を始め)…なんだ、早乙女くんか。そうだよ、買い物行って、休憩…してた。わかるよ。…クラスメイト、だもん。じゃあ逆に質問、早乙女くんは部活帰り?…野球部、だっけ。