17 無名さん
(懐かしい温もりを感じて、擽ったそうに微笑んだ。目を開けたらこの幸せが泡と消えてしまいそうな不安が胸をよぎるも、愛しいその顔をもう一度見たくて、『彼』の名前を掠れる声で呼びながら目を開けて……飛び込んできた現実、見知らぬ顔に、柔らかくあたたかな笑みを湛えていた白い顔が、だんだんと冷えて色を失っていく。そうだ、既に失ったものなのだ。四肢が粘るように重たいのは不摂生の所為だろう、のそりと上体を起こせば、背を丸めて先程の泡沫の夢に熱くなる目頭…瞼を閉じて深呼吸をふたつ。再び目を開ける頃には青い目は無機質な色を取り戻していた。伏しがちな長い睫毛越しにじとりとした視線を相手へと向け)
お世話になったみたいで…ありがとう。あなたは?