22 無名さん
(昼食後に談話室で開始された自主的な勉強会は紆余曲折を経て当初予定していた刻限の訪れが過ぎた。想定していた以上に飲み込みの良かった相手の奮闘のお陰でペースが狂うどころか幾分進みも早く、凡その苦手項目の穴は埋めることが叶ったらしいことに些か驚きを禁じ得ずにいたのだが無論悪方向に捉えてのものではない。時計を見やれば示す針は16時半に差し掛かって間もなく。切り上げ時にも障りはないだろう、片付けを促した後は事前に申し合わせをした通りに着替えをする為各自室に戻り、1時間と少しの制限を掛けて再び談話室で待ち合わせることとなった。身支度を終えて着用した浴衣は濃紺地にかすれ十字を基調とした大小の入り子升柄が白、灰系統で散らされているもので浅葱色の桐生織帯を締めている。下駄は黒檀色、帯に掛けるタイプの信玄袋は無地の紺で片手には紬絣の扇子。男の身では着付けを考慮したとてせいぜい30分程で準備には事足り、暇を持て余すことになるのも致し方のない事。自販機室で購入した緑茶のペットボトルに口を付け室内の椅子に腰掛け待つことにして/↑)