25 無名さん
▼4[榊 玲音]
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可笑しな事を聞くんだな?――デート…っ、じゃない。……嫌、デート…だな。少なくとも私の中ではだが。
(この日の為にどれ程スケジュールを組んだ事か。出だしから彼には誤解ばかりさせている。――否、強ち事実ではあるのだが。男らしさで名が通り、職場ですら“怪力女”はたまた“男女”と好き放題言われている為、今更無駄な足掻きだと感じていた。しかし彼の反応は思いの外自身が予想していたそれとは異なり、羞恥を煽るのには充分で。今すぐにでもズボンに履き替えたいと言う欲求が込み上げるも、そんな気持ちを必死に堪え意地悪く口にしつつ、そっと差し出されたその手を取り握り締めた所で自身の体温の異常な高さを改めて知る事になるが、どうにか今日一日耐えて見せると笑顔の裏そんな無謀な事を考えていて。階段を降りるのですら何処と無く億劫だったが何とか町に繰り出し、思わず息を飲んでしまった。何故なら今日に限って人の数が尋常ではないのだ。町行く人達もまた貴重な休日なのだろう、其処は正に人混み。ここまで来て既に限界が来ていたのか、この人混みの中このまま流されてしまいそうだと彼の手を更に強くはぐれないよう繋ごうと試みた、次の瞬間にはパッと辺りがぼんやりと薄暗くなっていき、するりと滑り落ちた手から離れていく心地好かった体温。ここまでかと最後自嘲気味な笑みを溢すと、まるで人混みに飲まれていくような感覚に襲われる中、意識が完全に遠退く寸前、果たして彼に届いたかは分からないがか細い声で途切れ途切れ謝罪の言葉を囁き、体は後ろへと逸れていって)
――、すまな…い。

2014-04-22 22:10