32 無名さん
…いい加減にしろ。迷惑だと何回言えば分かる。その耳は飾りなのか?もう二度と話しかけて来るな。顔も見たくない。(そういえば"今日"はこれがあったことをすっかり忘れていたと舌打ちが零れた。二度目の夜が明け、また昨日と同じ今日が始まった。新たに刻まれた左胸の痕に痛みを感じながらも登校し、内容も合間に挟まれる教師の雑談もすっかり覚えてしまった授業を受ける。その間に考えるのはカ/ラダ/探しのこと。他のペアがいくつかの情報を集めてくれたがまだ不明な点も多く、それらを少しでも解明していかなくてはと机の下でいつの間にか携帯にインストールされていたアプリを眺めているうちに午前中の授業が全て終わり、昼休みになった。命懸けで戦う自分達のことなど露知らずに凡庸な日常を謳歌する学生達を見ているとまるで世界の外側に放り出されたようだと感じながら図書室に向かう。目的の教室の前まで来ると一人の女子生徒に声をかけられた。これもループが始まる前の"今日"のひとコマだった。演劇部のこの女子生徒は子役時代の自分のファンだったらしく、入学以降顔を合わせれば執拗に勧誘をして来る。その熱の入れように呆れつつも芝居から既に離れた自分にとってはそれは鬱陶しい以外の何者でもなく、その上今はそんなものに目を向ける状況ではない。ぎろりと睨み付けながらいつもより強い口調で吐き捨てると涙目で去って行く背中にもう用はないと何事もなかったように扉を開ける。室内にあの目立つ姿はない。しかしまばらに図書室で過ごす生徒達がちらちらとテラスを気にしている様子に何となく検討がつき、その視線の先に歩を進める。予想通り傲岸不遜を体現したような暴君の姿を見つけるとそちらに近付き、先程の自分のことは棚に上げた発言をして/↑)…機嫌が悪そうだな。他の生徒が怯えているぞ。