38 無名さん
羨ましくなんか…ないと思いてぇよバカ!


character
遊んでそう、否。喧嘩っ早そう、否。口が悪そう―…残念な事に是。外見通りである事より、外見とは正反対の、所謂見掛け倒しである事の方が多いハリボテ故に、"不良"や"チャラ男"のイメージを持ったままこの男と接していると幾つかの違和を覚えるやもしれない。目付きの悪さを理由に喧嘩を売られたなら、捨て台詞を吐いた後全力で逃走し不戦敗。唯一の親友は木彫りのマスコットで、嫌いな言葉は「二人組作って」。人見知りの激しさはここ数年で多少緩和したものの、コミュニケーション能力に関しては向上する前兆すら未だに無い、口の悪さは単なる虚勢のスクールカースト最底辺を這う男である。人の海の中心を隅っこで羨む癖に飛び込む勇気が足りず、時折伸ばされる手にも素直になれず突っぱね、一人反省しては決して小さくない背を丸めいじけているこの男の気性が面倒である事は言うまでもないが、褒め言葉に滅法弱く、お世辞にも過剰に反応し煽てられるまま舞い上がるので、照れや緊張を誤魔化す為の減らず口にさえ目を瞑れば扱いやすくもあるだろうか。とはいえ、上手く誤魔化せる程の話術も無ければ頭の出来も良くない為、うっかり本心を口にして格好が付かないことも少なくない。又、"ダチっぽいこと"に憧れており、その一環として他人の真似をしたがる傾向がある。


other
持ち前のヘタレっぷりや天邪鬼が原因で図らずも一匹狼を気取ることになってしまい、気が付けば高校生活も残す所あと僅か。このまま青い春と無縁の日々を過ごしていて良いのかと葛藤し、少しでも変わることが出来ればと淡い期待を胸に転入へと踏み切った。鹿乃山高校を志望したのは寮での集団生活に憧れていた故。今まで機会に恵まれなかった事もあり動物への接し方が分からず、興味と恐怖との間で揺れ動いた結果恐怖が勝り未館へ入寮。祖父は塗装工、父は大工、母はプロダクトデザイナーと幼い頃から"モノ作り"を身近に感じる環境で育てられ、祖父や母から美的センスを受け継ぐことは叶わなかったものの、父譲りの手先の器用さを活かした木工品制作を得意とし、今では転入早々木工同好会を一人で立ち上げる程入れ込んでいる。スクールバッグにぶら下げている木彫りのライオンのマスコットが人生初の木工作品であり、唯一の親友。簡単なおもちゃを作っては母校の幼稚園へ寄付する事が殆どだが、それは園児達の為でも慈善活動を心掛けている訳でもなく、ただ単に恩師である初老のシスターを喜ばせたい一心のみ。園内の雰囲気と自宅から通いやすい距離であるという理由でキリスト教系の幼稚園に通っていた幼少期、上手く人と付き合えず我儘放題好き放題に振る舞っていた名郷を根気よく諭し導いてくれた彼女の存在は大きな支えであり、高校生になった今でもおもちゃの寄付にかこつけて会いに行く懐きよう。親しい人物のいない寂しさから生じた雛の刷り込みの様なものかもしれないが、名郷は当時の想いを大切に初恋と呼んでおり、讃美歌を歌いたくないと駄々を捏ねた際に「じゃあ、ピアノ伴奏をしましょう」とシスターから教わった一曲だけは現在も弾くことが出来る。家庭菜園を趣味の一つとしているのも彼女の影響で、泣いても喚いても嫌いな野菜を口に詰め込まれ鍛えられた経験者として野菜嫌いには大変厳しい。が、料理の腕はからっきし。中学時代に行った染髪は寂しがりの構ってちゃんを拗らせた末の行動であり、同級生から声を掛けられる為の切っ掛け作りを目的としていたが、七五日どころか三日と持たずして「名郷、金髪になったってよ」の話題は消え失せ、ならばとピアスや制服の改造に手を出した結果も芳しくない上に学生としては多大なる出費をしてしまった為引くに引けず、容姿と内面が一致しないちぐはぐな男が出来上がった。目付きの悪い金髪とくれば多少なりとも威圧を与えそうなものであるが、所詮は張子の虎、かませ犬が似合いの小物感はいくら取り繕っても拭いきれず、近所の小学生にからかい倒される日々である。