38 無名さん
(灰色のパーカーを着て黒のダウンジャケットを着込み芥子色のマフラーに顔を埋めながら寒空の下校舎から出てくる。日頃の夜更かしの癖はそう突然に変わるわけでもなくすぐに目がさえてしまう、級友達の寝息が聞こえる部屋をそっと抜け出せば要らぬ音を立てぬようし、懐中電灯片手にまずは掃除用具入れからバケツを探し出しこそこそと水を溜めれば、今こうして校舎裏へと1人運び出している。校舎裏の外、アスファルトの部分にバケツを置けばごそごそとポケットから懐中電灯、マッチ、ろうそく、そして最後にコートの下から取り出したのはうさぎやらクマやらが可愛くあしらわれた花火セット一式。危険防止の為にしっかりと水も用意し運良く風もなくとても寒い事以外は問題は無かろうが、やはりこの暗がりの中1人で花火をするのは寂しいと今更ながら気づき眉が自然に下がるだろうか、それでも花火セットをしゃがんで見ながら小声でそのパッケージの説明を読み始めるが寒さからなのか微かに声が震えており/↑)…きけんにちゅういして、おとなのひとといっしょにやってね。てもちはなびはにじいろにかがやくよ、せんこうはなびは、あ……線香花火も入ってるのか。