51 無名さん
世界が鮮血に染まる悪夢の夜を越え、再び迎えた午前0時。バラバラに遺棄された物部小夜子のカラダを収集する決意こそあったものの、教師に提案された“2人1組で行動”だけはやはりコミュ力最下位に値する自身にとっては苦行に等しく。季節的に早過ぎたマフラーで口元をおおい玄関端へその身を預けていたのだが、どう足掻いても偶数である状況、もはや目前にそびえ立つ“ペア作製”といった難関を乗り越えるしかないと悟った頃には、既に次から次へと皆散り出していた頃合いであった。それでも玄関内を見渡した際まだ同じ委員会で見知った人物を発見出来た幸運にやや興奮と期待を混じらせつつ彼の元へ歩みを進め、厚手の布越しから開口一番告げたのは「弟子にしてください」の一言。それを聞いた時の彼の心境がどうであったか等知るよしもないが、第1関門は無事突破。彼の提示した意見を呑んだ後2階へと先行く逞しい背を追い掛けた。しかし移動中も残忍な少女と遭遇しないとも限らない。安全を確保すべく背中合わせで行動する事を提案し、自身は進む方向とは逆方向に対して警戒態勢で薄暗闇を歩き続け長い長い永遠にも思えた道程は、やがて背中同士がくっついた辺りで終焉を迎えた。漸く目的地へ到着したのだと把握すれば引き戸に掛かる手に緊張の面持ちで唾を飲み込み、頷き返した瞬間ーー開け放たれた空間に点された明かりに照らされた景色はクラスこそ違えど見慣れた普段通りの教室であり、なんら変わらぬ光景に少しばかり張り詰めた気持ちも緩和されようか。けれど初めての探索に何処から手を付けていいのやらわからず、とりあえず教卓の回りを1周しながら会話の流れを円滑に進めるべく持参したタブレットに文字を打ち込んでから「座るより椅子で鳥居を作ってみたい。鳥居って神様を奉る場所に必ずあるものだから、もしかしたら鳥居の間から物部さんの体の一部が見つかるかも知れないし。とか、そんな幻想を僕は抱いているけど、現実はそう甘くはないよね…。あ、因みにその好きな子は3次元オンリーなの?そうだったら絶体絶命…。」と記した画面を差し出し)……信楽くん。これ…。