8 無名さん
ごめんゴメン。…雛ちゃんは可愛いナって思ったダケ。ナルホド、ソレじゃ俺は床屋か。…じゃあ、こーしよーか。むかーし昔、ある国に…。
(謝意を告げながら続ける言葉は勿論本心、伸ばした手を避けることなく交互に此方を見る彼女と視線が重なったなら笑みを浮かべ、その手を己へと引き寄せる。拒否されなかったことに少しの安堵を覚えながら、相手の言葉に笑うも口の端をあげるだけに留める。その例えにどう続けるべきかと数瞬脳裏を巡れば、元の物語をアレンジし今日の事にすり返え話し始める。王様を可愛い王女様、床屋をしがないギター弾き。身分の差を理由にギター弾きからは逢いに行けず、またギター弾きから伝えるのも恐れ多く「もっと仲良くなりたい」と心の内を言えないこと。王女に求められるままに弾き語りの為、城を訪ねる日々が続いたある日。堪えきれなくなったギター弾きは井戸に向かって心中を叫ぶこと。元の話に則しながらも手を加えた童話風に話しながら、目前の少女に対してどう言えば伝わるかと思案するも、此処は後々の為にはっきり言ったほうが誤解されずに済むだろうとの結論に至り、友情、恋愛両方の意味を含めながら相手が己の興味を引いたことを柔らかな笑みと少しの甘い声音をもって素直に告げた。この手合いの照れや羞恥と無縁の為に相手にどう映ったかは分からないが、最初に言った通り返答は求めていない。話し終えたならギターをしまい始め)
…と、いうのは物語の中の話。俺は直接、可愛い王女様こと雛ちゃんにちゃんと言うヨ。今日を機に、良ければもっと仲良くなりたいナ。…勿論、恋人の可能性も含めて、ネ。さ、オワリ。俺も買い物、ついて行ってイイ?