85 無名さん
(定刻の17時、一分一秒寸分の狂いも無く時計が時刻を示したと同時に私室を出るのは最早習慣ではなく性という他にない。戦闘服と呼ぶ半袖は紺をベースに黒や黄緑、白等の直線が上下左右に走る典型的なネルシャツ、黒のデニム、スニーカーを履き揃え愛用リュックを背負う姿は夏祭りに繰り出すというより電化製品店へ向かう装いに近いだろう。だが着慣れない浴衣を纏うより自然体でいられる安堵感はネルシャツからしか得られぬ物だと当人が一番自覚している。待ち合わせと言うにも至らぬ隣人との待ち合わせ、まだその姿は見当たらなかった為横の扉へゆっくりと一瞥を配る。そうこうしている間にも左腕に巻いたデジタル腕時計の秒数が着々と進んでいくので戸を数度ノック、間を空けてから真顔のまま開いた口から出た言葉は彼を呼び出すに相応しいか/↑)すみませーん、裁判所の者です。差し押さえに参りました。黒田さんのお部屋で間違いありませんか。

かのやで一番うまいロル