89 これでどう?
(厳しい夏の暑さも和らぎ始めて日差しは柔らかなものとなり、吹き抜ける爽やかな風に秋の気配を覚えるようになってきたのはここ数日の事。今日の夕方から入れていたアルバイトの開始時刻までは暫しの余裕があり、通常通りに授業を終えた後は校内の食堂にて友人達と他愛ない雑談に興じていたがやがて刻限が迫ってくると彼らに別れを告げて昇降口へと向かい。緩めたネクタイに指を引っ掛けながら緩慢な歩調で廊下を歩いていき、目的地へ辿り着くと共に視界に飛び込むのは見知った同級生の姿。先客がいる事は予想外だったのか幾度かまばたきをしてから思わず声を掛けるが、何かに気を取られているらしいその様子に疑問符を浮かべて視線を追った先には地面を濡らしつつある雨粒が、合点がいったように頷いて呟くと相手へ目線を戻し軽い口調で問い掛けて/↑)…あれ、まゆらちゃんじゃん。こんなところで何…あー、なるほど、なるほどなるほど。さては俺への恋心を抑えきれんくて待ち伏せしてたな?