90 無名さん
(転居からX日目。流石は田舎と言うべきか、引っ越しのトラックが来たと知るやご近所さんが入れ替わり立ち替わり入居者の顔を見にくる有り様で、ようやく人心地ついた今でも思い出すだに苦笑いを禁じ得ず。けれどもすっかり記憶の彼方に追いやってしまった村民の心得を教えてもらえるのは有り難い。例えばゴミの収集日とか。畳んで固く縛った段ボールをビジネスカジュアルな装いの小脇に抱え、リズミカルな足取りで階段を駆け下りて1階のエントランスに姿を現し。朝日の射す駐車場へ出ようとしたところでふと足を止め目を留めたのはそこに置かれた交流ノート。束の間ぱらぱらと頁を繰っては斜めに目を通していたが、その内に何やら物思わしげな顔つきになったかと思えばしきりに表紙や裏表紙を確認し始め/入室)へえ…えらく様変わりしたと思ったらこの村、こんなこともしてるのか。書かないと村八分?…なわけないか。…ないよな?