1 ファーラン・チャーチ

隠した手紙

お前がこれを読んでるってことは、無事にこの場所を見付けてくれたみたいだな。一年前の今日、自棄になっていたお前と、荒みきっていた俺は、お前が掲示してた一枚の張り紙を切っ掛けにして出逢った。だから今度は俺が、お前宛の手紙を貼り出してみようかと思ったんだ。一年に一度くらいなら、可愛い可愛い恋人の惚気や自慢を他の奴らに聞かせたって良いだろ?とはいえ、もしお前の方に不都合や拒否感なんかがあれば、その時はすぐに言ってくれ。これは取り下げて、お前に直接渡し直すよ。

もう何度も話して来たことじゃあるが、一年前にはお前とこんな風に幸せで満たされた日々を送れるような関係になれるとは、思ってもみなかった。お前の張り紙に鳩を飛ばしたのも、丁度良い暇潰しや興味本位ってのが大半だったからな。けど、話しているうちに自分でも驚くほどに惹かれていったのを、今でもよく覚えてる。お前が作ってくれたログを読む度に、まるで昨日のことのように思い出せるしな。それはきっと、お前が俺に、捨てたら後悔させてやろうってくらいの良い男っぷりを見せ付けてくれただけじゃなく、天性のものも含む程の相性の良さがあってのものなんだろうなって、いくつもの共通点を見つける度にしみじみと思う。冗談でも大袈裟でも無く、きっと運命の相手ってのはこういうことを言うんだろうってくらい、お前以上に相性のいい奴とは今迄どういう形であっても出逢ったことがないだけに、今が心地良くて仕方ない。
それなのに、俺は度々お前の気持ちを汲み切れてやれないことを、少し歯痒くも思ってる。最近だと、お前を気遣うあまり、仕事のことに口を出しちまったりとかな。ただでさえ辛い中、恋人にまであれこれ言われたら、鬱陶しくもなるよな。そうして、まだ失敗なんかも多いが、これからもっともっとお前のことを知って、少しずつでもそうしたことを無くして行きたいと思ってる。いずれは阿吽の呼吸で分かり合えるような、こそあど言葉で意思疎通が出来ちまうような、そんな関係もお前となら築いていける気がするんだ。だからこれからも、どうか俺の側に居てくれ。

俺の愛しい猫の嫁さんへ、愛を込めて。
2 ファーラン・チャーチ
今はまだ、お前に直接伝えたところで受け止める余裕もないだろうから、また、ここにそっと綴っておくとする。誕生日おめでとう、リヴァイ。落ち着いたら改めて手紙やプレゼントを渡すから、ちゃんと受け取ってくれよな。
3 ファーラン・チャーチ
ここに初めて手紙を隠してから丁度一年、お前と出逢ってからは、今日で丸二年になった。改めて、いつも傍にいてくれてありがとな、リヴァイ。

この一年の間に、お互い色々なことがあったな。主にお前の方が、慌しく環境の変化に呑まれて、本当に大変な目に遭って来たのを間近に見てたし、今もまだ、詳しい事情なんかは分かんねぇけど、言葉を交わす余裕すら無くしちまう程に辛い状況にある。一年前とは随分と、接する時間とかも変わっちまった。それでも、心の距離は前よりもっと近付いてる気がするのは、きっと俺だけじゃないよな。この前、俺がお前の影響で変わった部分を話して聞かされた時も、しみじみそう思った。まあ、その時の俺は相変わらずお前の気持ちを汲めずに悲しませるようなことを言っちまって、まだまだ成長し切れてねぇ部分もあるなって反省もした訳だが。そんな俺に呆れることもなく、ずっと傍に居てくれることに、本当に感謝してる。
お前は俺からしてもらってばかりで、なにも返せてねぇとか、俺に我慢をさせてばっかだって気にすることもあるが、そんなことねぇよって、何度でも否定させてもらうからな。俺がこうしてお前の傍にいるのは、慈善でもなんでもなく、今までもこれからも、俺自身がそれを望んでるからだ。辛い時でもお前の存在があるから頑張れる、楽しいことがあればお前に伝えたくなって、より一層楽しめる。お前がただ傍に居てくれるってだけでも、抱え切れねぇくらいにたくさんのものを貰ってるんだ。それに、形の無い思いだけじゃなく、実際にお前から与えてもらったものも多い。この前、お前が教えてくれた黒豆ほうじ茶だってそうだ。疲れた時、あのお茶を淹れて一服すると、お前とのやり取りを思い出しながら寛ぐことが出来て、癒されるんだ。そうやって、俺もお前のお陰で助けられてる。だから、自分だけが、なんて思わず、自信を持ってくれよ。お前は俺の嫁さんだ、ってな。

お互いに落ち着いたら、また一緒に旅行に行けるのを楽しみにしてる。それまで、もちろんその先も、引き続きよろしくな。愛してる、俺の大切なリヴァイ。