1 リヴァイ

エレンへ

たかが一ヶ月。祝う程のものでもない。しかも別れた途端ここ黒歴史だろ。未だに躊躇って持ち直してを繰り返しているが…まあ折角の節目だ。お前に出会って恋人になれた奇跡に感謝を綴る。

今更だが、初めてお前に出会った時…クソ暑苦しい奴だな、と思った。何故ずっとビリビリしてるんだ大丈夫か、とも。他にも手を伸ばせば届く奴も居たが、気付きゃモクモク煙出してるお前に手を伸ばして、今ではしっかりその手を握ってる。不思議なもんだな。最近じゃこの手は放し難くなる一方で、遅れた思春期をやっているような気分になる。
お前は覚えてないかもしれないが、出会った当初、お前は「俺の時間は無限です」と俺に言ったんだ。覚えてるか。無限だから焦らず距離を縮めていきたい、と。お前の言葉はいつも大袈裟だ。お前、絶対に、ともよく言うだろう。お前がそうやって大袈裟な物言いをする度に俺は…お前の姿に7、8歳程のガキの姿が被る。小学生かよ、と。
だがよ、エレン。俺はお前のそういうところを好きになったんだろうな。無理だろ、馬鹿だろ、と思うようなことをお前が言う度に、お前を愛しく思うようになった。出会って直ぐお前に焦がれて、お前の口から出てくる言葉に魅力されて、片思いを苦しく思って、お前の告白すら素直に受け取る事が出来なかった。今考えると、お前は出逢った当初からずっとお前のままで、暑苦しい電撃野郎に変わりはない。馬鹿だったと思う。
俺はお前と違って、大袈裟な言葉を口にするのが苦手な男だ。お前も薄々分かってるだろう。何百億倍、だとか。ずっと、だとか。そういう言葉は照れ臭くて言えない。飾った口説き文句が吐けるような質でも無い。だが面と向かってじゃなけりゃ言えるんじゃねえかと今思ってる。言う。お前の格好良いリヴァイさんはここまでだ。
エレン、お前を愛してる。好きだ。クソ愛しい。お前が生きてるだけで嬉しい。お前を生み出した両親に感謝。天然ボケも程々にしろと言っちゃいるがクソボケたお前も好いてる。可愛いかよ。俺ん家住め。仕事辞めろ。支える。養う。だが仕事を頑張ってるお前も捨て難い。ネクタイ引っ張れねえのも不便だ。キスするとき面倒臭ぇだろ。会議室でエロい仕置きが出来ねえのも難点の一つだ。ああいう背徳感にクソ燃える俺の性癖が仕事を辞めさせるなと言っている。だが家に帰ってお帰りなさいと毎日言われたい気持ちも有る。そのまま三つの選択肢を迫られたい。お前は風呂選ぶんだろ。腹は読めてる。勿論俺の答えは聞かずとも分かるだろう。てめえで間違いない。おかわりもする。拒否権ねえよ。上司の命令に逆らうような馬鹿じゃないことを祈る。だが馬鹿なお前も愛してる。………………以上。お前のクールな恋人も情熱が溢れることくらい有る。覚えておけ。

人を信用しないようにしていると言ったお前が、俺の事は信用出来る、と。リヴァイさんは真面目な人だ、と前に言ってくれただろ。俺はその時…三十路の分際で若干照れてしまい冷静に返してしまったが…あの時の言葉、本当はとても嬉しく思っていた。多分俺のこういう裏側の気持ち、分からねえだろう。お前アホだから。だが俺は…その信用を裏切らないよう今後も努めていくだろうし、これからもお前の為に誠実でいよう。この約束だけは必ず。

たかが一ヶ月。大袈裟なものじゃない。
だがお前と結ばれてからのこの一ヶ月の日々を、俺はお前が想像している以上に大切にしている。そして、これからお前と過ごす日々も同じように大切に出来ると…そこそこ信じている。いまいち決まらないが許せ。
次ここへ来るのは年越し後。お前が目標にしている日だ。
それじゃ。新年の挨拶を交わす日まで、またな。年越しなんざ直ぐそこだ。

俺の嫁………嫁へ。お前の……旦那より。言わせんな。