1 リヴァイ

羊飼いの少年

お前の様に面と向かって言う事は出来ねぇから、俺はここに。

…ここを見るのかどうかは知らねぇが…。
まぁ、本当に書いてるのかは分からねぇが、日記を書くと言い出す程だ…、朝方の失態を呟いた事も気付いてた様だから、恐らくこの微妙なタイトルでも、お前は気付くだろう。
……、気付かれなかったら、その方がいい気もする。


何を綴っておくべきか考えたが、俺は言葉が控え目で、お前には解り辛いらしい。
だからここは、その解説をしておく事にした。


お前と出逢ってから、今日で一ヶ月も経ったというのは、感慨深い。

…出逢った場所は、俺には初めての場所だったから、どの位でこの関係を終了させるのが適当なのか、俺にはさっぱり分からなかった。
それで、当初はお前を拒絶出来ねぇ有様だった訳だ。

新しい年を迎えた時も、もしかしてお前が考えていたより長引いてるんじゃないかと思えて、あんな挨拶になった。
言い方が、余り温かく無かっただろうと自分で感じた位だ。


…だから、お前に、もう少し、と声を掛けて貰った時、…、…………、………………、嬉しかった。


総てを解説するには、紙が何枚有っても足りそうにねぇ。
読まれるかも分からない手紙は、このくらいにしとくのが妥当だろう。


お前はいつも、色々なものを俺に寄越す。
返し方がよく分からねぇものが殆どだ。

俺に、初めてを沢山教えて、沢山感じさせてくれるお前なら、その返し方も教えてくれるんだろう?

言葉には出せないかも知れねぇが、教えてくれる事を期待してる。


駄犬でも忠犬でもない
俺だけに懐く
賢いお前へ
10 リヴァイ
今日で一年と、二ヶ月。


お前に何かあった時は、
俺がお前を抱きしめる。

俺に何かあった時、
お前がそうしてくれる。

そう、約束出来て嬉しかった。
期限のない約束が嬉しいなんて、初めてだ。

いつか、は、苦手で仕方ない。
だが、お前との約束は、そうでもない。


その時が来たら、
必ず。
11 リヴァイ
今日は恋文の日らしい。


だから、記念日には一日早いが、今日綴っておく。


俺は、何時も、何度も、結構失敗する。
お前に余計な事を話しちまったり。…案外、喋り過ぎが多い。


ガキの頃から、他者には受け入れ難いらしい意見を口にする事が多々あった。
毎回否定されると、それは、俺が口にした意見だからなのか、それとも真実、人としてズレた意見だからなのか、よく判らなくなってた。

お前は、俺が言った事に、賛同してくれる事もあれば、反論したり、否定したり、注意を促してくる事さえある。

お前の反論や否定に納得しているかは、一先ずおいておく。
だが、少なくとも、お前が俺の言葉だから頷く訳でも首を振る訳でもないってのは、分かった。

…それに、とても安心する。


お前が俺にそんなものを求めてるかどうかは分からねぇが、少しでもそんなのを返してぇ。


………、恋文に、なってるか?
12 リヴァイ
ここを見ると、幸せを分けて貰える様で、よく他のやつの手紙も勝手に読んでいた。
今も…、読んでる。


与えて貰った愛情は、俺の中に蓄積されて、…いつか、知人や……誰が、他者へ向ける優しさになる。
いつか、そんな風な事をお前は言っていた。


俺が勝手に分けて貰えたと思った愛情も、俺の中に溜まるんだろうか。


容量が少ないせいか、他人の愛情を見るだけで、直ぐに溢れてこぼれ落ちるけれど。
それでも、それで少しは他人の事を思いやれるなら、溢れても、分けて貰おう。
13 リヴァイ
お前はあの書き込みに気が付いてくれたんだろう。
俺にも入れるように鍵を変えてくれたんだな…ありがとう。

…、……だが、お前が書いてくれていたものは消えていたから、……きっと、また、俺の心無い言葉がお前を傷付けてしまったんだろう。

また、お前の言葉が見られて幸せだった。
…ありがとう。