1 リヴァイ

Dear....

俺達が重ねた日々は全てが燦然とした記憶であり、其れは脳髄にまで鮮やかな色を残す。美しいお前の言葉に俺は感情を高揚させてばかりだ。
エルヴィン...俺の愛しい旦那よ。
薬指で輝く指輪に口付けを落としながら...
さぁ、お前だけに言葉を贈ろうか。

偏愛、狂愛、...そして渇愛。
愛という柵に縛られお前という底無しの泥濘に落ちいく様は嘸、滑稽な物だろう。
兵士として屈強な精神を鍛えて来た筈だが、
お前の前では酷く脆い。
其の口許から紡がれる言葉に俺の心臓は高鳴りを見せ、一掴みでもされれば見事に潰されてしまいそうな程に...心も身体もお前に掌握されていると言っても過言では無ぇ。

お前しか見えない、
否、お前しか見たくない。
お前だけが居れば...其れで良い。
そう容易く思える程に、
其れほどにお前に溺れているんだ。


ー...兵士長とも在ろう者がこんな事言っていたらガキ共に笑われるな。
だが、俺は悔いの無い選択をする。
目に見える物だけを信じれば良い。
そうだろう?
ならば努めるべきは...お前の傍に居て、お前を愛し抜く事以外に無い。


エルヴィン。
お前と共に添い遂げよう。
命を賭してお前を守る。
例え世界を敵に回そうとも...
此の心臓はお前の物だ。


長らく続いた驟雨。
この雨に終止符を打ったのは、
紛れも無ぇ、お前だ。
暗闇の中、手探りで掴んだやっと出逢えた掛替えの無い光。
何物にも染まらない俺の...、
エルヴィン・スミスよ。


奇跡ともいえる出逢い、
これは偶然では無く必然だ。
心から愛する事を教えてくれたお前へ
溢れる言葉を此処に刻む。


愛している。
お前だけを愛し続ける事を此処に、
薬指の指輪に重ねて誓おう。


Feb. 14, 2014
9 リヴァイ
日付を越える間際、懐から懐中時計を取り出して其の時を待つ。
一秒一秒、針が動く度に脈打つ心臓は莫大な希望と期待とほんの僅かな不安を乗せて軽やかな音と共に感情を高揚させていく。

針が重なった瞬間、天を仰ぎお前を彷彿させる月を捜すが、何時の間にか目前にはもっと綺麗な黄金色が居て。
其の柔和な笑みに釣られる様に無愛想な双眸は微かに緩んで兵団から共に帰路を目指す。
そう、......俺達の家族が待つ場所へ。


"半年から一歩進んで迎えた七ヶ月。
必然の出逢いから八ヶ月。"


また一つ言葉を手記に残そう。
揃いの羽根ペンを動かして...
指輪に口付ける癖をお前を見詰めながら見せ付けて。
そしたら...お前はどう反応するか。
そんな悪戯心に闇夜に紛れた口角が小さく吊り上がる。
何処までも愉しませて貰おうか、
......なぁ、エルヴィン?


そう言えば、
最近は共に出掛ける事が多く成った。
賑やかな場所で人混みに紛れてもお前は矢張り目を引く。
其れは俺が心底惚れ込んで居るからかもしれねぇが.......、違う。

お前は魅力溢れた男。

生き方が綺麗な男だ。


律儀で...だが酷く甘く、時に冷酷で。未だ隠されて居るであろう顔を全て見たいと好奇心が跳ねる。
愛を見下して居た俺を糸も簡単に覆し、溺れさせ...今でも俺は深い泥濘に捕らわれた儘だ。
抜け出そう何て気は毛頭無ぇ。
もっと、深く、と強請るばかりだ。


愛する事を覚えた野良猫はそこら辺のヤツよりも達が悪いかもな?
狡猾な手段に出るのが癖みてぇなもんだ。
従順で飼い慣らされた俺も、
敵意剥き出しで刃向かう俺も、
お前は俺の愉しみ方を熟知しているだろう?そして俺も、同様に愉しんで居るワケだ。


エルヴィン、
愛すべき俺の唯一。
此の先も共に...歩み続けよう。
そしてお前が嫌だと言う程に愛する。...愛しているぞ。


繋いだ指先に力を籠め
今宵も隣のお前を想う。
10 リヴァイ
なぁ、エルヴィン。
また新たな節目を迎えたな。
俺と共に歩み始めて8ヶ月だ。


出逢った頃からもうこんなにも月日が流れたのか…、と驚きと共に嬉しさが込み上げる。

お前と初めて迎えた暑い季節、
東洋文化にあやかって浴衣で夏祭りにでも出掛けてぇな。そして酒を片手に花火とやらを眺めたい…きっとお前と共に見る其れは格別に綺麗なんだろう。だが、その前に…按摩をしねぇとな。……お前の引き攣る顔が安易に想像出来るが遠慮は無用だ、と再度告げておく。


忙しなく動くお前へ何か言葉を告げる としたら…無理はするな、と在り来たりな言葉になっちまう。
お前が傍に居る事、ただ其れだけで…俺の生きる糧となっている。
お前は俺に無理をさせていると思っているかもしれねぇが其れは杞憂にすぎない。
俺達は容易に壊れる程の信頼関係は持ち合わせてはいない。そうだろう?
誰もが羨む程の確固たる信頼、絆を俺達は築いていると自負しているぞ。
お前へ溢れた言葉は全て嘘偽り無い、真実だ。


エルヴィン…、
お前以上は此の世界には居ない。
だからこそ、俺はお前の傍に居続けたい。
お前と生き、共に果てるまで。
出逢い、惹かれたあの日から一瞬も色褪せた事の無い想いを此処に。


…お前を心から愛している。


此れからも変わらず傍に、
隣に居続けてくれ。
お前の紡ぐ言葉を何時迄も聞いていたい…
其の声を。

俺の隣はお前しか務まらない。
否、お前しか受け入れない。
だから、俺の隣はずっと…
お前だけの場所だ。


愛しているぞ、此の先も…。


溢れる想いを籠めて
薬指の指輪へ口付けを。
11 リヴァイ
早いもので、九ヶ月目。
お前と出会ったあの寒い日からそんなに月日が経ったのか…と手帳を開いては懐かしさに目を細める。


普段は何食わぬ顔で任務に励み、
ガキ共を指揮している俺だが…この記念すべき日を迎えた時は、つい此処に足跡を残しちまう。


言っておくが、俺は普段こんなにマメな人間じゃねぇ。
だが、何故だか分からねぇが…俺はお前と生きている証を何処かに残してぇらしい。…まぁ所詮、自己満足と言うやつだ。
だが、此の溢れそうな想いを堰き止める事は出来ねぇからな。
お前に毎夜紡ぐ言葉だけじゃ足りねぇ。此処に残すのは俺の横溢しそうな想いと感謝の意、だ。

こんな俺から愛だの恋だの…愛おしいなんざ口にするのは気味悪いだろうが
…漸くお前に続き俺も人間らしくなって来たようだ。
もう戻れねぇ所まで来ちまった。
其れはお前もだろう、エルヴィン。


お前の声が、俺に触れる指先が…
お前の言葉を借りるなら…
堪らなく、愛おしい。
愛おしさを越えて切なさを感じ悲しみを覚える程に、な。


此れからも俺の隣を頼む。
此処まで溺れさせた責任は確り取ってもらうからな?…エルヴィン。


愛しているぞ…
俺の全てをお前に。


お前だけを想い…、
今宵も薬指で輝く指輪に口付けを。
12 エルヴィン・スミス
酷く感謝を覚えて止まない──九ヶ月、そして私とお前が出逢い十ヶ月の節目をこうして迎えられた事に。


肌寒さ感じる朝に出逢った美しいお前とひたすらに逢瀬を重ね、手紙を交し合っては甘い時間を過ごし
互いを未だ理解し得ぬ状態の儘、言わば済し崩しに近い形で恋仲へと移行した後も。募るばかりの想いに駆られて身体を繋げ、愛を確かめ。

そんな時期を思い返して関係性は変わったか、と己に問えば
より対等になれたのではと思うが、果たしてお前はどうだろうか。

以前、対等で無かったのと断言は避けるが
お前は何かと私に遠慮ばかりしていて。無理をさせた事も多々在ったろうに文句ひとつ口にせず、其れどころか変わらぬ忠誠と信頼の目を向けてくれた。
そんなお前に応えるべく、私も見合う男になろうと努力は惜しまなかったし、其れを苦痛に感じた事など一度だって無かった。

こんな風に誰かを想い、愛し抜きたいと心から思える相手に出逢えるなんて。
一度ならず二度までも、お前を手離そうとした愚かな男の傍から離れずたっぷりの情愛で包んでくれる心優しき私の唯一。


そんなお前を愛することに何を躊躇う事が在っただろう。
お前のように素直に、一心に恋人を愛せる勇気が私に在れば少なくとも傷付けるには至らなかった。総ての元凶は、私の捩れた心癖に在ると言って良い。


『共に新たな世界を見よう』


あの後、お前が私に投げ掛けた言葉は未だ記憶に新しい。
変わらずに向けられる想いに応えるだけの覚悟と、決心はもう充分に付いた。


こんなにも混沌とした世界に、お前と言う存在を見付けて。繋いだ手を離さずに居れたら、


ああ、どんなに良いだろう?

愛しい相手と見詰め合い、愛を紡ぎ合える今此の時に浴し、甘んじ、此の儘跪いて居られたなら。


──なぁ、リヴァイ。
幸せだよ。とても、とても。


今頃は喧騒の中、兵士長の任務を全うしているで在ろう恋人へ向け密やかなる愛を。加えて此れを、就寝の合図とさせてくれ。