1 ミカサ・アッカーマン

回顧

錯覚、だったのだろうか。今となっては確認のしようもない。


呆れられたのだと思った。私が余り言葉を返せなかったから。それを詰らなかったのはあなたの気遣いだったのだろうと。

私にとって、エレンはたった一人の家族。何よりも優先すべき相手。それは、これからも変わらない。変わらない…筈。
…もしかすると、そうでなければならないと自分に言い聞かせていたのかもしれない。私には…それしかなかったから。もちろん…自分がそうしたいと望んだこと。

私は、エレンを守る。エレンを守ることが出来る私でいなければ。

だから、エレン以外の誰かの、エレンとは違う存在感を……私の中に残されて行くのが、…そう、怖かった……のかも、しれない。それは、私の知らない私だから。


私が尊重できる命には限りがある。
例えば、エレンとあなたが同時に巨人の手に落ちたとしたら…私は、迷わずエレンを助ける。迷っていればどちらも死ぬ。
――…だってあなたは、きっと自分で切り抜けてくれるんでしょう?

けれど……もしも全ての巨人がいなくなったら。
守るべき脅威がなくなったら。
そのときは……どう、なるのだろう。


どうあったとしても、今はもう知りようもない。
そう、これは……ただの、独り言。