喧嘩別れしたフレン

だったっけか、災害時に呼び掛けた言葉は。お前の声で贈ってくれた歌のタイトルは「…君へ」
これでオレの薄っぺらな身分証明が出来たか?

…ったく、こんなに長い間忘れないでいてくれたのに、オレの気まぐれで鳴らす鐘を待ってくれるのが一晩だけなんてつれねぇこと言うなよ。

あの時から変わらず夜は安眠型のオレが、こうやって夜中に目覚めて活動してなかったら、久し振りの再会がなかったことになったなんて思うとぞっとする。…なんて、軽口はここまでにしとくか。


…フレン、ごめんな。そんな思わせ振りなことを言ったこと、他のやつの存在を匂わせたこと、オレらしくなさすぎて記憶が曖昧だ。…今思えば、お前には嘘がつきたくなくて、でもすっぱり別れるには未練が残りすぎてて苦し紛れに言ったんだと思う。

その言葉がお前の中にずっと居座って苦しめ続けていたのなら、本当に悪いことをした。

こんな世界だ。オレの方はあれから沢山の出会いもあったし、それだけの別れもあった。もう思い出すことも出来ない奴もいるし、お前みたいにずっと忘れられない奴もいる。

この姿をする度にお前のことは思い出すよ。…色々忘れているくせにな。今でもお前がくれた曲を聴くことがあるせいか、どんだけ好きだったか、どれだけ想われてたのか…それだけは心に強く残ってるみたいだ。

なぁ、フレン。こんな薄情なオレが、また寄り添っても幻滅しないか?長年思い続けてくれたお前の中にいるオレと、今のオレはちゃんと面影が重なるか?

もう間違えたくはない。珍しく慎重だなってカロル先生に笑われたっていいさ。

また会えたのなら、長年傷付けた分、甘やかしてやる。泣きたいなら胸くらい貸すさ、溜めてたもん全部吐き出しちまえ。
それで、今度はこんな大事にならないように普段から軽口叩きあって、喧嘩したら仲直りして…そんな当たり前な関係が築けたらと思う。

謝罪と感謝をここに。
今度はお前の鳴らす鐘、待っててもいいよな。
俺たちが出会った場所、なくなるんだな。びっくりしたついでに、お前の言葉にまた驚かされたよ。なぁにコソコソやってるんだ?お陰で気づくのが遅れちまったじゃねぇか。

…さてと、軽口もここまでにしとくか。お前の言葉を見る限り、自然消滅ってわけじゃなかったんだな。俺から止めた記憶もなければ、催促することもなかったからよ。……蓋を開けてみたら簡単なこと、事故だったわけだ。
また無駄に一年過ごしちまったか?

新しい道か…。一歩前へ、進めているのかどうか、自分でも分かんねぇな。少なくとも、お前がここに居座ってるなら、振り返って引き連れて行きたいくらいには過去に未練があるさ。

出会い、別れ、再会。限られた世界でまた巡り会えたのなら、これはもう腐れ縁なのかもな。一応、ラピードにここを見張らせておくから。気が向いたらまた顔を見せに来いよ。
君と僕は何度すれ違えばいいのかな。それでも、その度に君は応え手繰り寄せてくれるこの縁に素直に従って君の手を掴んでしまうくらいには、君を好いているのだと痛感する。

そうか、君と僕が出会ったあの場所は…なくなってしまうのか。とても寂しく思うよ。足を運ぶことは無くなってしまったが、君と出会った場所だからね…

さて、蓋を開ければ事故だなんて無駄に一年過ごしてしまったなんてね…すまない…君が、今だ僕の隣を歩んでくれるというなら、ここに君への手紙を書き締めラピードに預けておく。

待っていていいんだよね、ユーリ…
さてと。ラピードに手紙を持たせたが、一年振りの仕事なんでね。
あいつも顔が広いからどこか寄り道をしてるかもしれねぇし、あんまり遅いようならここにもう一度顔を出してくれ。

鐘を鳴らしてくれりゃ、今度は一年も待たすことはないからよ。
…ったく、こんなにまめなのは性分じゃねぇって自覚しているけど、最初くらいは働きますか。

お前がくれた手紙はちゃんとラピードが届けてくれた。からさっき返事を持たせてみたんだけどよ、どうにも変なもん咥えてすぐに戻ってきちまうんだわ。
お前んところに届く前にルブランとかが規制厳しくしてないか?大悪党なオレから変な頼りがこないように見張られてるのかもな。

ちょっと抜け道作れないか試してみてくれないか?無事に届いているのならそれでいいんだけどよ。