伶さんへ

ある日、ふと昔の記憶が香ったの。
あなたといた昭和58年6月の事…。

元気でいますか。大事はないですか。
意地悪で、優しかった、不器用な伶さん。
私の事はもう忘れちゃったかしら。それとも、思い出したくもないかしら。ひどいこと、言ったものね。あなたを傷つけちゃったものね。

それでも、こうして置き手紙をしたかったのは私の心がそれを望んだからです。
あれからもう何年も経ってしまったけれど、オヤシロさまが本当にいるならば、もしかしたらあなたともう一度会う事ができるかしら。

鍵は、この手紙そのものだと思います。

オヤシロさま、オヤシロさま。
どうかお願いします。あの人が気付いてくれますように。