それと、あの人は支配的だ
私はおそらく支配的な関係性というものが嫌いでは無い
近しい間柄の二者間においてそういう関係性である事に心のどこかで安心感のようなものを感じるというか、いや、過しやすいような気がするというか

私が主導権を握る事もあるけれど、それはあまり長くは続かない
どうしていいか解らなくなっていってしまう
主従関係と言うと随分大袈裟な表現になるけれど、私は強い存在に自分を委ねたり尽くしたりする立場の方が性に合っている気がする
そうしてそのうちに相手に取り込まれていく事で一体感や愛情のようなものを感じ始めるのだろうと思う
これはあまり健全だとは言えないし共依存的なのも一応解っているつもり
でも私はそういう関係性にしか愛情を見出せないのかも、とも思う
『外側』の人からすればそれは『愛情』ではないとしても
お前はずっと俺の側にいればいいんだ
俺に一生愛されてればいい
ずっと俺の側にいろ

側にいたい、とか、側にいて欲しい、じゃなくて
側にいればいい、側にいろ、って
こんな言い方をするのは私が生きてきた中であの人だけだ
どうしてこんなふうに言えるのか不思議
私は人を好きになってもそんな言い方は出来ないし、しようとも思わないから

知り合った頃からそういう人だというのは解ってるけど
もうあの頃の私とあの人じゃ無い
あの人は面倒見が良くて頼りがいがあってある意味でものすごく男らしいけれど
時々、ふとした瞬間の態度やちょっとした言葉の言い方がとても冷たい
それまでの会話の流れや雰囲気とは全く違う態度でまるで吐き捨てるような言い方をしたりする
その内容はほとんどが些細な事で、別になじったりとかこき下ろしたりとか、そういうのじゃない
多分、攻撃してやろうっていうつもりではないと思う
その時に相手に対して気に入らない事があるとその不快感を強くあらわにする
あの人にとってそれは自然な事なのかもしれない
ただ、その瞬間だけは私は本当に慣れない
楽しく過ごしていても一瞬で自分の気持ちがさあっと引くのが解る
あの人はその『瞬間』の後はその前の態度に戻る
楽しく過ごしている時であれば楽しい感じでまた過ごすし、本当に瞬間的なものなんだ
それは私からすると瞬間的に豹変するといった感じで、それが、とても苦手で戸惑ってしまう
でも私が本当に好きなのはあの人じゃない
そういえば、お前と呼ばれる事にももう慣れたなあ
出会った当時はすごく嫌だった
だからやめてと何度も言ってた
でもほとんど気にならなくなった
もし今、他の誰かからお前と呼ばれたとしたらやっぱり嫌なのに
どうしてあの人だとまあいいやって思えるんだろう
滅茶苦茶にしたいというのは独占したいというような意味らしい
言葉って簡単なようでやっぱり難しいな

俺とお前は合うんだと言い切れるのってすごいと思う
お前は俺の側にいればいい、とか

私に問い掛けたり投げ掛ける事はほとんど無くて
言い切って断言するのが多い
それはある意味では心地よかったりもする
私にあまり悩む隙を与えずに強く引っ張ってくれるという事だから
でもあの頃に戻りたいかと考えるとそれはまたちょっと別で
なんて馬鹿げた事を言っているのだろうかと思う
そう思うけれど、それでもそれは紛れも無い本当の気持ちでもあって
だからやっぱり私は駄目なのだとも思うし
つくづく自分はどうしようもない人間だと落胆する
今酔っているのも自覚している
こんな事を書いているのはお酒のせいだと言って逃れたいけれど
寝ても醒めてもそうなのだから救いようが無い
それでも好きでいる事くらいは許される、かな、と思う
言い換えればそれは、思うだけなら許して欲しい、許されたい、と自分が思っているだけなのだけど

いったいどこまでなら許されるのだろう
どう線引きすればいいのだろう

もういっそ殺されたい
私の『すべて』を預けて委ねて奪われて終われるなんて
それ以上のしあわせがあるだろうか
本当に、本当に好きになった人とは結ばれない
結ばれるべきではないとすら思う
そもそも結ばれる事なんて有り得ないとも思う

特別な関係になる程の資格など私には無いし、
資格という言葉が適切かどうかは解らないけれど
でもとにかく私のような人間がそういう相手に対して特別なものを求めるだなんてとても図々しいと思うし
そもそもそういう相手は私とのそんな関係を望んですらいないだろうから実現する事はまず無い

住む世界が端から違うのだから、
同等の立場で接して求めるだなんて思い上がりもいいところだ
優しさに舞い上がってそれ以上を望むなど勘違いも甚だしい
きっと私でなくてもいいはずなのに、
それでも何故、敢えて私なのかが解らない

私は、私に対して好意を抱く人、私を好きになる人をおかしいと心のどこかで思っている
一般的に『普通』に分類されるような人は私のような人間を選ぶはずが無いと思っているから

私を好む人というのは、何かしら私と似た部分を持っている人だと思っている
それは『良いもの』ではないと思っている
だから警戒する
でもそれでも親密な関係になったりもする
けれどそれはやはり『良いもの』ではないと気付く
気付くというと語弊があるかもしれない
やはり良くないと再認識すると言えばいいだろうか

私を好きになる人はきっとまともでは無い
私と築く関係もきっとまともでは無い
それなのに何故そういう事をやめないのか
『女』を感じる、というのと
『滅茶苦茶にしたい』という事に関連性はあるのだろうか

私に対して女性的なものを強く感じるという意味の言葉だというのは何となく伝わってきた
でも、だから滅茶苦茶にしたい、というのはどういう事なのだろう

私を抱こうとした
私はそれを拒んだ
どちらもその時に言われたけれど
滅茶苦茶にしたいというのは、私の意思を無視して思うままに扱いたいという事なのだろうか
それは私の感情や人格というものを踏みにじって征服したいという事いうことなのか
もしもそうなのだとしたら
そこにあるのは私の身体だけで、それをただ扱うだけの行為になるわけで
それなら他の女性でも良いのではないか、と思ったりする
だって私の身体は客観視した場合にとくに優れているとも到底思えないから