Z-Z BOARD
過去ログ248
2017/2/2 18:51
▼無名さん 『大司聖の場合2』
□□□□□
「お忙しいところ、お邪魔してすみません、レスター卿」
声をかけられて、レスターはようやく来訪者に気がついたようだ。それだけ集中しているということなのだろう。
「これは、ピエール様――。わざわざお運びいただき恐縮です。ご用があるのでしたら、お呼びくださればこちらから伺いましたのに……」
レスターが手を止め、立ち上がって礼を施した。小部屋に待機する護衛の聖騎士を意識したのか、態度や口調こそ丁重だが、漆黒の瞳にはからかうような色があった。
聖騎士時代、十年以上レスターの部下であったピエールは、彼のこうした言葉遣いは馴染みがなく、どうにも落ち着かない。違和感に背筋がぞわぞわして仕方がない。
ピエールは小さく嘆息し、ふたりきりで話す算段をする。
「内々にお話したいことがあるのですが、人払いをしていただけますか?」
「かしこまりました」
レスターがピエールの言葉にうやうやしく一礼し、聖騎士に合図を送った。
聖騎士が退室するのを見届け、レスターがピエールにものやわらかな笑顔を向ける。
「どうした? きみのほうから訪ねてくるなんて、めずらしいね。何かあったのかい?」
いつもの気安い口調で話すレスターにほっとしつつ、ピエールは彼に紙袋をさしだし、用件を伝える。
「ええ。レスター卿。先日お約束した品をお届けにあがりました。仕事が一段落したらご検分ください。中身に関してはくれぐれも内密に願います」
「了解。何が入っているのか楽しみな反面、怖くもあるな」
レスターがピエールから紙袋を受け取り、キャビネットに入れて施錠した。少し考え、ピエールに鍵を手渡す。年齢不詳の顔に浮かんだいたずらっ子のような笑みを見ると、仕事がかたづいてからのお楽しみ、ということなのだろう。
「何かのゲームみたいですね。勝ちとるに値する賞品であるかどうかは――」
ピエールはそこで言葉を切り、レスターを見つめた。疲れているのだろうか――顔色がよくない。ピエールの緑玉の瞳が気遣わしげに細められる。
2/2(木)18:51
▼無名さん 読んでいただいてありがとうございます( *・ω・)ノ
大司聖もたまには真面目に仕事をするみたいですね(笑)
極秘の品はなんでしょうかね。ピエール様が持ち込むようなものといったら……
また夜にでも続きを。
2/2(木)16:55
▼ぱんだまん無名様
遅くなりました!
ふおー!!!!!真面目なレスターさんがおる!!!!!(失礼)
そして情景描写がとても素敵♪( ´▽`)極秘の物体が気になります。髭にイタズラの一品とか(笑)
2/2(木)12:11
▼無名さん 文字数の規制で、変なところで切れていますが……。
長編の書き方ですね。ストーリーの進みが遅い(´・ω・`)
2/1(水)21:02
▼無名さん 『大司聖の場合1』
□□□□□
古色蒼然とした教会の廻廊は、昼間でもうす暗い。
小さな明り窓が等間隔に設けられてはいたが、充分な光量が確保されておらず、隅の暗がりに何かが潜んでいそうな雰囲気が漂っている。
石畳の床は冷たく、足音が硬質に響く。
歴史的な建造物の多くがそうであるように、過ぎ去った歳月の重みがそこかしこから滲み出てくるようであった。
前方のアーチ型にくりぬかれた明り窓から射し込む陽の光に、ピエールはほっと息をつく。
ここを通るたびに、有象無象の過去の亡霊がひたひたと跡をつけてくるように思われ、ピエールはこの廻廊が好きにはなれなかった。
大きな紙袋を片手に廻廊を抜け、ピエールは大司聖の執務室を訪れた。中身は極秘の品で、直接大司聖に手渡す必要があったのだ。
扉の手前で立ち止まり、ノックしたが、返事がない。
今日は出掛ける予定はないと大司聖に聞いている。急ぎの用件ではないにしても、何となく気になり部屋を覗いてみることにした。
樫材の重厚な扉をあけると、窓ぎわの執務机に書類が山積みになっていた。部屋主の姿は見あたらない。一瞬、不在かと思ったが、積み重ねられた書類のあいだからレスターの黒い頭が垣間見えた。
室内には、鵞ペンの規則的な筆記音が聴こえる。どうやら、今日は真面目に仕事をしているらしい。めずらしいこともあるものだ。明日は槍が降るかもしれない。
すべて処理し終えるのにどのぐらい時間がかかるものやら、机上に築かれた書類の連峰はなかなかに壮観だ。
何をどうすればここまでためこむことができるのか――なかばあきれ、なかば感心する。サボり倒しはするが、要領よく仕事をこなすレスターにしては、めずらしい光景だった。
他人事ながら、この山をかたづけるのは大変そうだと同情しつつ、ピエールはレスターに声をかける。
2/1(水)20:59