1 ベルトルト・フーバー

ディアスキアの花を此処に

…決して悲しい訳じゃないのにな。いつもと変わらない君の字で、嬉しいことばかりが綴られた手紙が霞んで読めないんだ。本当は直ぐにでも筆を執りたいけど、このままだとインクが滲んでしまいそうだから……また明日、穏やかな気持ちで書こう。

…君への想いを綴っては消して、破いて、他愛も無い会話に書き替える。いつの間にか、僕の屑籠はぐしゃぐしゃに丸められた手紙だらけだ。この間君が眠りに来たときに気付かれなくて良かったと心から思う。
君はいつも、僕がどんなことを言おうと受け止めてくれるね。時には戸惑わせてしまうときもあるけど、そんな顔や仕草がまた堪らなく愛おしく思うんだ。…ってへらへらしてたら、またじっと顔を見られてしまうかな。
だけどそんな格好悪い顔も、君を抱いてるときの顔も、君に抱かれているときの顔も……膨らみ続ける欲で塗り固めた仮面に過ぎない。その下にあるのはもっと情けなくて弱々しくて女々しい酷い顔だ。僕は君が思っているよりもずっとずっと弱いから、差し出された手に直ぐ縋りついてしまう。そして僕はその手を片時も離すことが出来ないんだ。四六時中君のことを考えて、息をする様に君の名前を呼んで、君無しじゃ立てないくらい、どっぷり依存してしまう。迷惑な話だろ?

このまま、これ以上、君に溺れていくのが怖い。泥濘に嵌まる前に抜け出せたらって思うけど、もう手遅れだ。…どっぷり肩まで浸かってしまってる。ああ……どうしよう。
…普通に好きになれたらいいのに、僕は好きになり過ぎるから……君を縛りたくて閉じ込めたくて堪らないんだ。……ジャン。

もし気付いても、どうか気付いていない振りをしてくれ。
2 ベルトルト・フーバー
不器用な僕なりにたまには君を少し驚かせてみようと思って、埃塗れのこのノートを取り出してみた。

君と結ばれて今日で4ヶ月。君に恋をしてもうすぐ5ヶ月が経つ。
君を悲しませてしまった先月の今日を境に、僕の君への想いはまた強く深くなった。初めの頃に比べたら僕らはお互い忙しくもなったし、愛の言葉を囁く回数は少し減ったけど…それを寂しいとは思わない。それは偏に…君は僕を好きでいてくれてる、その自信と君への信頼があるからだよ。どれだけ任務の帰りが遅くなっても、家に帰れば君が美味しい手料理を作って待っていてくれる。どれだけ僕が変質的な発言をしても、少し困りながら馬鹿、って返してくれる。僕には君がいる、たったそれだけの事実が僕の支えなんだ。

今日も明日も、変わらず君が好きだよ。だから、どうかこれからも傍にいてくれ。僕だけのジャン。
3 ベルトルト・フーバー
 誕生日おめでとう、僕の最愛の恋人。

 君のことが死ぬ程好きだよ。
 君は僕のものだ。