1 エレン・イェーガー

大型犬の置手紙

唐突に終わった恋を此処に書き記すのは可笑しいのかもしれないけど…それでも俺は貴方との日々を悲しいと締め括りたくない。


一か月のすれ違いと数日の繋がりを経て、嘘が付けない不器用な貴方が出した答えは感謝のみが綴られた『解放』という名の白い鳩でした。
最初こそこんなにも簡単に終わってしまうのかと嘆きに嘆いたけれど……ふと、大型犬の名を紡ぐ貴方の呟きを見付けました。そして、この白い鳩は斬り付ける刃ではなく、頭を撫でて離れていった手だったんだと、分かりました。

兵長……兵長、…っ
本当に本当に大好きでした。
今まで擦れ違ってばかりだったけど、俺は貴方の傍にいて確かに幸せでした。

俺はいつか貴方が後悔するくらい良い男になって幸せな恋をしてみせます。
今はまだ辛くて出来ないけど……いつか此処で貴方の姿を見掛けた時、「元気なんだな」と遠くから笑えるようになってみせます。

だからどうか、貴方も幸せに――…
身体を壊さないで、ちゃんとベッドで寝て下さいね。


此処に貴方への愛と感謝を置いて。

……さようなら、兵長。
2 エレン・イェーガー
ここ、読んでくれたんですね。

貴方から改めて送られてきた最後のメール、嬉しくて、嬉しくて……直ぐにでも返事を返そうとしたけど、会いに行ったらどうしても、引き止めてしまう俺がいて。
でもそれが、正しくないのは分かってます。

だって俺は、ずっと貴方に抱いて欲しかった。
ずっと、ずっと……貴方に渇望してた。

貴方はそれに気付いてたからこそ、俺の望みを叶えられないと思ったからこそ、俺を手放したんだと…分かってるから。
会いに行けばきっと、折角貴方が俺を想って下した決断を無駄にしようとしてしまう。

ーー…兵長、今日は貴方の誕生日です。
貴方に渡したい贈り物がありました。
貴方に綴りたい言葉がありました。

でも何よりも、貴方が生まれた日を貴方の一番近くで迎えたかった。誰よりも早く祝いたかった。……それだけが心残りでした。
だからせめて、此処で言わせて下さい。


お誕生日おめでとうございます、兵長。


いつか、貴方を見掛けて笑えるようになった時…会いに行っても良いですか。
俺、ちゃんと勉強してやり方覚えますから。頭悪いけど、頑張りますから。

その時はよく出来たと、頭を撫でてくれますか?


……兵長、真っ直ぐに俺を愛してくれてありがとうございます。
俺は世界で一番幸せな大型犬です。