1 リヴァイ

羊飼いの少年

お前の様に面と向かって言う事は出来ねぇから、俺はここに。

…ここを見るのかどうかは知らねぇが…。
まぁ、本当に書いてるのかは分からねぇが、日記を書くと言い出す程だ…、朝方の失態を呟いた事も気付いてた様だから、恐らくこの微妙なタイトルでも、お前は気付くだろう。
……、気付かれなかったら、その方がいい気もする。


何を綴っておくべきか考えたが、俺は言葉が控え目で、お前には解り辛いらしい。
だからここは、その解説をしておく事にした。


お前と出逢ってから、今日で一ヶ月も経ったというのは、感慨深い。

…出逢った場所は、俺には初めての場所だったから、どの位でこの関係を終了させるのが適当なのか、俺にはさっぱり分からなかった。
それで、当初はお前を拒絶出来ねぇ有様だった訳だ。

新しい年を迎えた時も、もしかしてお前が考えていたより長引いてるんじゃないかと思えて、あんな挨拶になった。
言い方が、余り温かく無かっただろうと自分で感じた位だ。


…だから、お前に、もう少し、と声を掛けて貰った時、…、…………、………………、嬉しかった。


総てを解説するには、紙が何枚有っても足りそうにねぇ。
読まれるかも分からない手紙は、このくらいにしとくのが妥当だろう。


お前はいつも、色々なものを俺に寄越す。
返し方がよく分からねぇものが殆どだ。

俺に、初めてを沢山教えて、沢山感じさせてくれるお前なら、その返し方も教えてくれるんだろう?

言葉には出せないかも知れねぇが、教えてくれる事を期待してる。


駄犬でも忠犬でもない
俺だけに懐く
賢いお前へ
2 リヴァイ
今日で二ヶ月。


こうやって毎月書くのが恒例になっちまうと困るが、…まぁ、月に一度位、頑張ってみる。


最近は、お前の希望を叶える形で、結構喋ってるから、そんなに補足する事もねぇ…、と思っているが…。

そうだな…。
この手紙。
前回あっさり見付かったこれを、こんな晩く綴っているのには、それなりの理由がある。
…まぁ、気付いてるかも知れねぇが。

これは、お前からの鳩が初めて俺の部屋に訪れた時間だ。

あの時が、お前と繋がれた時だと思うから、この時間を選んで手紙を綴っている。

…………。


先月からの、この一ヶ月も色々あったが、…今日も、色々あって、他に何を綴るべきか、よくわからねぇ。

ここで、誰彼に見られながら綴れる事は限られる。

…それに、今日は、直接話したい気分だ。


直ぐに、会いに行く。


寝てねぇといいが……。
3 リヴァイ
三ヶ月。


今日は、互いの非番を合わせて、朝から共に過ごした。

…感謝の言葉は、直接伝えたし此処に書く事に迷う…。
……、そういえば、
『有難う』
と、言ったと思うが、本当に有り難い、と感じた。

三ヶ月、毎日言葉を交わしているのは、俺にしては有り難い事だ。

三ヶ月経てば、外面はとにかく、内面は気性の荒い俺だ、言葉を交わしたくない日もあって当然なのに…。
お前がほぼ毎朝、俺の希望を叶えて挨拶してくれるおかげで、言葉を交わさない日はなかった…と思う。


今日、こうして共に居られるのは、お前のおかげだ。


…有難う。
4 リヴァイ
今日で、六ヶ月。
…半年だ。


出会った頃には、正直考えもしなかった。
まさか、お前と半年も一緒に過ごせるなんて。


今、俺は幸せだ。
お前を幸せにするには、まだ時間が掛かりそうなのは、悪いと思ってる…。

…そういえば、お前は何やら色々と自信がないらしいな。…だが、俺はお前に幸せにしてもらってる。
だから、その部分は心配するな。


毎回、ここに綴った後に、言い忘れた事を思い出すから、今回もそうなるだろう。
その時は、また次の機会にする。


今日も一日、お前と居られて幸せだった。
明日からも一緒に居られれば幸せだ。
5 リヴァイ
昨日で、
七ヶ月。

一昨日も昨日も、俺がごちゃごちゃと言ったせいで、お前を傷付けた…。…すまない。

俺は、毎日、お前と言葉を交わせて幸せだが、いつも、お前に無理を強いている気がする。
七ヶ月も俺に付き合ってくれて、感謝している。


お前と過ごしていると、自分自身の知っている言葉の…語彙の貧相さにがっかりする。
お前の伝えてくれる気持ちに、俺自身の言葉で返したいのに、鸚鵡みたいに同じ言葉を返すだけだ。

俺は、自分の思った事を伝えるのは不慣れらしい。
言っても無駄だと思えば、黙っていても変わらないと考えてきたから、当然と言えば当然か。

別に、エルヴィンみたいに小難しい言葉で流暢に表現したい訳じゃねぇが……、…通訳を介す訳にはいかねぇ事だから、………これでも、詳細に伝えてるつもりなんだが、つい、お前の反応を見てから更に注釈を付けるような真似をしちまう。

もう少し、色々な言葉で、お前に伝えられるようにしたい。


時間は掛かるだろう。
それまで、待っていてほしい。


大切なお前へ
最近眠気に勝てない男より
6 リヴァイ
今日で、八ヶ月。
…、一緒に居てくれて、感謝している。


最近、俺は我が儘だ。
言いたい事を言い、したい事しかしてねぇ。

そのせいか、此処に書く事がねぇ…。

そうだな……。
お前に対する希望でも書いてみるか。


お前は、俺に、思った事を言ってくれない、みたいな事をたまに言うが、俺からすれば、お前の方が何も言わなくて、…。
その、あれだ。
…本当は言いたい事があるんじゃねぇかと考える。

…たまには我が儘の一つも言え。


お前に対して、大きな不満なんぞねぇし、短いがこれだけにしておく。


別にガキ扱いしてる訳じゃねぇ。
………我が儘言ったくらいで、嫌いになったりしねぇから、……、まぁ、俺の希望の一つだと思って、そのうち叶えてくれればいい。
7 リヴァイ
今日で、九ヶ月。


この一ヶ月は、俺のせいで余り一緒に居られなかった。

…色々、不慣れで上手くいかない事が多かった。
一緒に居たいと互いに思っていても、上手くいかない事もあるんだな。

それでも、共に居てくれて、有難う。


課題が出来ても、二人で解決を目指せると嬉しい。
8 リヴァイ
 

今日で、十ヶ月になった。


俺は、お前と居ると、
どんどん駄目な大人になる。

お前に甘やかされて、
色々と、退化してる。

このままじゃいけないと決意しても、お前と一緒にいると、その決意はあっさり揺らぐ。


困った。
こんな情けねぇヤツじゃ、その内、お前に愛想を尽かされそうだ。

これからもお前と共に居る為に、少しはしっかりしねぇとな。


…これからも、宜しく頼む。
9 リヴァイ
一年間、有難う。
感謝の言葉と気持ちでいっぱいだ。

お前と出会えて
良かった。

俺と出会ってくれて
有難う。

これからも、お前の隣に居たい。
10 リヴァイ
今日で一年と、二ヶ月。


お前に何かあった時は、
俺がお前を抱きしめる。

俺に何かあった時、
お前がそうしてくれる。

そう、約束出来て嬉しかった。
期限のない約束が嬉しいなんて、初めてだ。

いつか、は、苦手で仕方ない。
だが、お前との約束は、そうでもない。


その時が来たら、
必ず。
11 リヴァイ
今日は恋文の日らしい。


だから、記念日には一日早いが、今日綴っておく。


俺は、何時も、何度も、結構失敗する。
お前に余計な事を話しちまったり。…案外、喋り過ぎが多い。


ガキの頃から、他者には受け入れ難いらしい意見を口にする事が多々あった。
毎回否定されると、それは、俺が口にした意見だからなのか、それとも真実、人としてズレた意見だからなのか、よく判らなくなってた。

お前は、俺が言った事に、賛同してくれる事もあれば、反論したり、否定したり、注意を促してくる事さえある。

お前の反論や否定に納得しているかは、一先ずおいておく。
だが、少なくとも、お前が俺の言葉だから頷く訳でも首を振る訳でもないってのは、分かった。

…それに、とても安心する。


お前が俺にそんなものを求めてるかどうかは分からねぇが、少しでもそんなのを返してぇ。


………、恋文に、なってるか?
12 リヴァイ
ここを見ると、幸せを分けて貰える様で、よく他のやつの手紙も勝手に読んでいた。
今も…、読んでる。


与えて貰った愛情は、俺の中に蓄積されて、…いつか、知人や……誰が、他者へ向ける優しさになる。
いつか、そんな風な事をお前は言っていた。


俺が勝手に分けて貰えたと思った愛情も、俺の中に溜まるんだろうか。


容量が少ないせいか、他人の愛情を見るだけで、直ぐに溢れてこぼれ落ちるけれど。
それでも、それで少しは他人の事を思いやれるなら、溢れても、分けて貰おう。
13 リヴァイ
お前はあの書き込みに気が付いてくれたんだろう。
俺にも入れるように鍵を変えてくれたんだな…ありがとう。

…、……だが、お前が書いてくれていたものは消えていたから、……きっと、また、俺の心無い言葉がお前を傷付けてしまったんだろう。

また、お前の言葉が見られて幸せだった。
…ありがとう。